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内戦下のシリア 血気盛んな戦闘員や避難民らが囲む食事とは

中東を丸かじり
シリア北部アザスで、道路にこぼれた小麦粉を集める子供たち

新たな避難民90万人 

民衆たちが国家指導者の計略や私利私欲に振り回されるのが戦争の常である。シリアのアサド大統領はシリア全土の掌握を狙い、ロシアはアサド政権を完全勝利に導くことで外交的な実績とするとともに、シリアの利権を確固としたものにしたい。

トルコはそれを許さず、北西部イドリブ県に残った反体制派を軍隊を投入して支援する。すでに360万人以上の難民を抱え、これ以上の難民の受け入れは限界に達しつつある。2月にはシリア国内でトルコ兵50人以上が死亡。トルコ軍は、アサド政権軍に直接的な報復を加え、国家対国家の衝突が激化した。トルコ国民の間では、シリア内戦に介入するエルドアン大統領への批判も強まっている。

特に激しい戦闘が起きているのが北西部イドリブ県だ。ここはシリアの反体制派最後の拠点になっており、昨年12月からアサド政権が奪還を狙って攻勢を強化、周辺も含めて90万人以上が避難民になったという。そんな中でも人々は日々、胃袋を満たさねばならない。戦闘で自宅を追われて避難民となったテントの住人も、爆弾が降り注ぐ町の人々も、食事を取る。職を失い、食材の確保もままならない場合は、安価な豆料理が主体となる。

避難民が食べていたインゲン豆の料理

ただ、戦時下では常識では理解できないことも起きる。シリアとトルコの国境では2013年、内戦下のシリアに国際援助機関が大型トラックで食糧を運び込む中、シリアで育てて処理した鶏肉をビニール袋に何羽分も詰め込み、トルコ側に売りに行く男性に出会ったことがある。北部の都市アレッポなどで食糧難が深刻化していた時だ。シリア難民の急増によりトルコでは物価が上昇、シリアから持ち込めば、利益が見込めるというわけだ。

農業や牧畜も、飲食店は営業

内戦が始まって以降、シリアには何度か訪れたが、最も戦闘が激しかったのが2013年にシリア北部に入った時だった。そんな中、農業地帯であるシリア北部では、ロケット弾やミサイルが飛び交う中でも農業や牧畜が行われていた。市場は閑散としているものの、ごくわずかに店が営業しており、チーズや野菜、肉といったシリア料理の基本的な材料は手に入る。スイーツを扱う専門店も開いていた。飲食店内では、前線を一時的に離脱した戦闘員の男たちが軍服姿でエネルギーを補っていた。ただ、営業している飲食店の数は限られ、テイクアウトする人が目立った。

戦時下でも営業していた焼肉店=シリア北部アザズ

電気が通っていたのは1日に数時間で、テイクアウトした食事も暗闇の中で食べなければならない時もあった。充電した携帯のライトを照らすが、食事を目で楽しむことはほんとどできない。時に銃撃や砲撃の音も響く。それでも、食事を取れるだけでも幸せに感じたものだ。

庶民の料理ファッタの味は

シリアの知人に代表的な料理は何か聞いたところ、庶民の味として人気が高い料理にファッタがあるという。この知人は、首都ダマスカスに住んでおり、内戦が終結したらまたファッタを食べようと再訪を誓い合った。だが、まだ実現していない。ダマスカスの情勢は比較的安定しているものの、シリア全体を見渡せば、激しい戦闘も一部で続いており、情勢が落ち着いているとは言い難い。

シリアの名物料理ファッタ

ファッタは、シリア北部でも内戦の渦中にある血気盛んな男たちの胃袋を支えていた。使う食材はどれも中東で盛んに使われるものばかり。ファッタは、シリアでも栽培されているヒヨコ豆がメインとなる。前日から水に浸したヒヨコ豆を煮込み、ゴマペーストのタヒーナやヨーグルト、ニンニク、オリーブオイルを加えたシチュー状の濃厚な液体を、揚げたパンにかけるボリューム感に満ちた料理だ。ヒヨコ豆やニンニク、オリーブオイルとどれも地元で獲れた食材のうまみが強く出ており、香り豊かな味わいが印象的だった。本場のファッタを味わいたいが、内戦の完全終結にはまだ時間がかかりそうだ。