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ラオスのビアラオがこれほど愛される理由 3日間飲み続けて探った

ミパドが行く!
ビアラオのダーク、ホワイト、ラガーとラオス料理の定番 パパイヤサラダとラ―プとソーセージ

ラオス流のビールの飲み方と「ラオラオ」

私が最初にビアラオと出会ったのは1985年。電力不足で日が暮れると街中が真っ暗になる首都ビエンチャンで、「水よりもビールが安全」と言われて飲んだビン入りのビアラオだった。この時のことは前回の記事で詳報した。

2003年から2006年までラオスに駐在した時には、もち米で作るラオス伝統の蒸留酒「ラオラオ」とビアラオがセットで振る舞われていた。ラオスでは祝いや大きな催事では必ずといっていいほど宴会が開かれる。正月、結婚、誕生、送別、歓迎などでは、祈祷師による祈りの儀式後にまず出て来るのが「ラオラオ」。日本でいえば「お神酒」のような存在だ。儀式が済むとビアラオの出番。当時の農村では冷凍設備も乏しく、30度を超える気温の中で温まった、ぬるいどころか熱いくらいのビアラオを飲んだこともある。

メコン川とビアラオ ルアンパバーン市内

「ラオラオ」は、600年前に沖縄に伝わり、泡盛のルーツとなったという説もある。製法も独特の匂いも味も泡盛に似ている。アルコール度数は40度前後だ。

年末年始にルアンパバーンを訪れた際、ラオス人の知人と郊外にあるバーンサンハイという村を訪ねた。この村はラオスの「ウイスキー村」として観光コースにもなっているが、村の名前も「酒造りの村」という意味で、昔からラオラオ造りで有名な場所だ。

伝統的なラオラオづくり ルアンパバーンの郊外の酒造りの村

知人にちよっと昼食を一緒にと自宅に招かれた。最初は近所の友人と3人。車座になったそれが5人、6人と徐々に増える。そして、約10分おきに「ニョクチョーク」(ラオス語で乾杯の意味)と全員でビアラオのグラスを合わせるのを繰り返した。これがラオスのビ―ルを飲むスタイルだ。今は冷蔵庫で冷えたビアラオが次々と出て来るが、それでも氷を入れて飲むのが普通。無くなれば誰かがお金を出して近所の雑貨屋に買いに行く。

酔いが回ってくると、どこからか「ラオラオ」の小さなグラスが回り出す。「サナー・ダー」(献杯致します)の口上で、ビアラオとは違う。何しろここはルアンパバーンを代表する伝統の「ラオラオ」造りの村。近所の「ラオラオ」を造る男性に本当かどうかは別として600年前の陶器の壺として村から発掘されたという皿まで見せて貰った。

ルアンパバーンの郊外の酒造りの村に並ぶ 「ラオラオ」と村か発掘されたという600年前の壺と持つ村人

2010年の世界保健機構(WHO)の調査では、ラオスの国民一人当たりのビールの消費量は、2位と3位のベトナムとタイを抑えて1位。蒸留酒の消費量でもタイに次いで2位。その他の最新の機関の調査でも常にラオスは東南アジアのビールと蒸留酒の上位に位置づけられている。ラオラオ造りの村で飲んでいると、ビアラオがここまで愛され、旨いビールに育ったことは、「ラオラオ」の600年とも言われる歴史と伝統と飲酒文化があってこそだという気がしてきた。

ビアラオ7種類目の「IPA」限定醸造で発売

ルアンパバーンの中心部にある街最大のD&Tスーパーを訪れた。店の入口近くにはビアラオのダンボ―ル箱が積まれ、その後ろでビアラオ「IPA」の小瓶が販売されていた。ビンのラベルには「限定醸造」と印刷されている。昨年11月、「ビアラオ・ラガー」や「ビアラオ・ダーク」「ビアラオゴールド」などの6種類のラインアップに次いで投入された7番目の商品だ。IPAとは「インディア・ペールエール」の略称。ホップの風味が強くパンチのある苦味と明るい琥珀色が特徴だ。

夕陽のメコン川の畔で飲むビアラオ

正月の夕方。ルアンパバーンの中心を流れるメコン川の畔にある小さなレストランを訪れた。テーブルは10席程。タマリンドの大樹と椰子の緑の木陰の下に、川風が肌に心地良い風が吹く。ブーゲンビリアの濃い紫とラオスの国花、チャンパー(プルメリア)の純白が彩りを添える。

5時を過ぎると夕陽がメコン川に傾き、空とメコン川の色が変わり始める。刻一刻と空とメコンの色がバレットを広げたように変わる。定番のビアラオ・ラガーとビアラオ・ダークを注文。ビアラオには合うのは、ラオス料理の定番のタムマックフーン(ハパイヤサラダ)と、結婚式や正月などのお祝い料理に欠かせないラープ(サラダ風)。野菜やハーブが豊富でヘルシーな一品だ。ルアンパバーン名物のソーセージもいい。

同上 ラオス料理ま定番のラープ(サラダ風)

ラオスのトロピカルな気候と明るい太陽と暖かさ。厳しく暗い冬のある欧米や韓国、中国、日本人にとっては、何よりの魅力だ。そして、アジアの大河、メコン川の畔というロマン。「癒しの国」の悠久の川の流れと時間の中で、人や車を乗せて行き交う大小様々な船を見ながら源流の中国や流域のラオスに加えてタイ、カンボジア、ベトナムに思いを巡らせる。メコンに夕陽が沈む一瞬は、空と水面が荘厳の色に染まり、ビアラオがより一層旨いと感じる至福の時間だ。

メコン川に沈む夕日 ルアンパバーン市内

「ラオスにはいったい何があるんですか?」という問いかけに対し、前回は「ラオスには、東南アジアで一番旨いビアラオがあるんです」「ラオスにはラオス流の幸せの尺度があるんです」と答えたが、今回はそれに加えて「ラオスには伝統あるラオラオがあります」「ビアラオとメコンに沈む東南アジアで一番美しい夕日があるんです」。そう答えたい。

それにしても経済的にはアジアの最貧国の一つであるラオスに、東南アジアで一番旨いビールがあるというのは、何とも不思議な話だ。経済指標や統計の数字では測れない幸せ。それがラオスの魅力なのかと思った。