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日本以上!?タイで空前のタピオカ大流行 甘すぎて健康に影響も?

ミパドが行く! 更新日: 公開日:
「バンコクの渋谷」と呼ばれるサイアムスクエアで、タピオカミルクティーを手にする日本人観光客の女性。この店のタピオカミルクティーが念願だったとのこと=八木沢克昌撮影

日本で大ブームのタピオカミルクティーが熱帯の国タイでも空前の大ブームに沸いている。バンコクでは路地裏から駅、ショッピングモールといたるところに店が並ぶ。筆者はビール大好き人間で、甘いものは大の苦手な上、糖質制限中の身。だが、この熱狂を無視はできぬ。最高級店から庶民風の店まで訪ね歩いた。

まずは「バンコクの渋谷」へ

「バンコクの渋谷」と呼ばれ、若者で賑わうサイアムスクエアーを訪れた。タピオカミルクティーの発祥地の台湾だけでなく韓国、日本などの外国ブランドに加え、地元タイの店が凌ぎを削る激戦区だ。まずは、ひときわ長い行列が出来ている韓国系「Fire Tiger」のタピオカミルクティー専門店を目指した。

タピオカミルクティーは、タイ語で「チャー・ノム・カイムック」と呼ばれている。店の外には10代から20代の女性たちを中心に20人が行列を作っていた。人気店だけあって地元タイだけでなくマレ―シアや日本、韓国などからの観光客も目立つ。一番人気のタピオカミルクティーの普通サイズの価格は、140バーツ(約392円)と平均的な店の3倍以上もする最高級店だ。

行列に加って料金を払い、番号が印刷されたレシ―トを受取り待つこと10分。タピオカミルクティーを受取った。早速に味見をすると上品な甘さで独特のモチモチ感もあり、最後まで飲むというよりはストローで食べたという感覚だ。

周囲の人たちは、味見よりもまずスマホを取り出して誇らしげに笑顔でポーズ。SNSにアップするのだろう、何度もアングルを変えて自撮りをしてからストローに口をつける。一眼レフのカメラを手にしていると、マレーシアと日本から来たという女性のグル―プにスマホでの写真の撮影を頼まれた。

バンコクで最高級のタピオカミルクティーの感想は、甘いモノ苦手の私には美味しいという感覚はあったが、それでも一杯が限度だと思った。

タピオカミルクティーを片手にスマホで自撮りをするタイ人女性。サイアムスクエアで=八木沢克昌撮影

3メートルに1軒の大ブーム 

タイでタピオカミルクティーがブームになったのは、2000年代の初頭が最初だと思う。2015年頃からブームは再来し、現在の大ブームとなったのは、昨年から今年にかけての事だ。ネットや「インスタ映え」の影響で10代、20代の女性を中心に広がったらしい。

全国展開する大手スーパーに行ってみると、1階には様々な店と並んでほぼ3メートル毎にタピオカミルクティー店があった。驚くべきは、私が28年暮らして仕事をしているクロントイ・スラムの大通りにもタピオカミルクティー専門店のスタンドが並んでいたことだ。日本のタピオカブームをしのぐ人気ではないかと思う。

タイは熱帯の国で、冷たい飲み物が1年中欠かせないお国柄。飲み物を扱う店で、今やタピオカミルクティーがない店を探す方が難しい。

安いものは15バーツから20バーツ。(約42円から56円)とタイ風うどんやラーメンの半額。BTS(高架鉄道)や地下鉄の駅に必ず見かけるような店では30~40(約84~112円)バーツ前後で、学生や庶民に人気だ。

各店とも、タピオカミルクティーに加え、抹茶味など様々なメニューを開発して凌ぎを削る。大ブームの日本食にあやかり、カタカナで「タピオカミルクティー」と表示した看板やメニューを出して、イメージ戦略を図る所もある。

クロントイ市場で売れれていたタピオカミルクティー。最安値は10バーツから20バーツ(28円~56円)=八木沢克昌撮影

そもそもタピオカとは

タピオカは、タイ語で「マンサムパラン」と呼ばれるキャッサバの根茎からとったデンブンで作られる。タピオカそのものは、タイの伝統的なスイーツであり、新しいものではない。屋台をはじめスーパーでも売られている庶民の味だ。白いのが本来の姿で、黒いのは着色されたものだ。キャッサバは、タイではお菓子の材料や料理のとろみとして利用されている。

キャッサバは、タイ東北部などの雨が少なく土地が痩せて乾燥した土地で栽培されてきた。原産地は南米だが、タイは世界で有数の生産量を誇る。近年でも世界第3位の生産量で、世界の10%の生産量を占める(2017年、国連食糧農業機関調べ)。私が最初にタイに来た1980年頃は、家畜の飼料として海外に輸出されていたが、その後、飼料に加えて加工デンプン、スターチ、バイオ燃料で活用され、タイの生産量の8割が輸出にまわっている。

タピオカミルクティーがタイで大ブームとなった背景には、「インスタ映え」などに加えて、何といっても伝統的なスイーツだったことと、原料のキャッサバの世界的な生産地で材料が安価で身近で簡単に手に入ることがある。

バンコク最大のクロントイ市場では、キャッサバの根茎が1キロ120バーツ(約336円)で売られていた。デンプンは1袋400グラム、20バーツ(約56円)だった。

バンコクの庶民の台所クロントイ市場で売られていたキャッサバ芋=八木沢克昌撮影

「糖分過剰」で健康への影響も

タイの民間の財団「消費者のための財団」が7月11日、タピオカミルクティーに関する調査結果を発表した。タイ国内で展開しているタピオカミルクティーのチェーン店25店舗の標準タイプ一杯当たりのカロリーと糖分等を調査。WHO(世界保健機構)が推奨する一日当たりの砂糖の摂取量25グラム(茶さじ約6杯)を、23店が上回ったと発表した。最大は74グラム(茶さじ18杯分)とWHOの推奨量の3倍にも上った。カロリーにして769カロリー。平均は、砂糖が41グラム、カロリーが407カロリーと全体として高く糖分の過剰が報告されて健康問題に影響すると発表して多くのタイ国内のテレビや新聞などのメディアが報道した。

タイは「甘い物大国」で、タイ風のウドンやらラーメンにも砂糖を入れて食べる。日本の緑茶にも砂糖を入れて飲料として販売されている「甘い国柄」だ。

同時に若い女性たちは、タイでもヘルシー思考でダイエットにも敏感。そのため、この発表以前から使用素材の質や、ヘルシーな黒砂糖を売りにするメーカーも出てきていたほか、甘さ控えめを売りにする店も現れている。

ナイロン袋に入っているのは、キャッサバ芋で作られたタイのスイーツ=クロントイ市場、八木沢克昌撮影

タイのタピオカミルクティーの行方は

タイのタピオカミルクティーの空前の大ブームは、今後、どうなるのだろう。日本での大ブームが続く限りは大ブームであり続けるのだろうか。糖分過剰と健康への影響の指摘で下火になりそうな気もするが、タイ人の気質を代表する魔法のことば「マイペンライ」(タイ語で気にしない、問題ない)でスルーされるのだろうか……。それにしてもタイで何故に、タピオカミルクティーがここまでの人気となったのか、いま一つわからないのは、私だけだろうか。