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お茶で体を 冷やす、温める。 中国古来の知恵です

荻野恭子の 食と暮らし世界ぐるり旅。
右上より時計回りに、クコの実、陳皮、緑茶、白木耳、レーズン、菊、棗、竜眼=竹内章雄撮影

◉お茶がブームですが……

このところ日本でも、世界中の様々なお茶を扱うお店が増えて、ちょっとしたブームの感があります。でも、フレーバーやラテ、アイスのアレンジティーなどが多く、嗜好品としての提案が主でしょうか。加えて、台湾や中国といったお茶のメッカとも言える国ぐにでも、冷たい飲み物やペットボトルなどを普通に見かけるようになりました。

でも、中国では、国内のあらゆる場所で(新幹線の中でさえも!)熱湯がもらえることもあって、耐熱のボトルに茶葉を入れ、そこに湯を注いで持ち歩くのが今も日常的な風景です。お茶文化の国なのだなあと感じます。

お茶とは実は、飲み方によって体の状態を調節できる素晴らしいものです。でも、そういった部分については、知られていないことも多い。また、近年失われつつある部分も多いのかもしれません。今回は、中国全土を巡って私が見てきた、「賢くお茶を飲む中国の人々」について、雑感も含めてお話したいと思います。

◉お茶を飲み分ける家庭に育った私

私は、実家が食べ物商売をしていましたので、店でも自宅でも、お茶は普段からたくさんの種類を使い分けていました。ほうじ茶、緑茶、煎茶など、食事の前後には何茶、という感じで選んで出していましたし、祖母も煎茶を嗜んでいました。そんな環境でしたので、子供の頃からお茶は好きでしたし、色々な飲み方をするという考え方自体、私にとって、当たり前のことでした。

かつて、陳健民先生(恵比寿中国料理学院)のところに師事していた私は、伺った料理を現地で味わってみたいと、研究のために毎月のように中国を訪れていました。私の専門は家庭料理ですが、中国で家庭料理はといえば、旬の野菜を簡単に油で炒めるものが主です。基本の調味は塩。これに、特色のある素材などで、地方ごとの個性を出しています。各地の飯店や家庭でご馳走になるほか、レストランの厨房も見て回っていましたね。旅の途中、家庭でもお店でも、上手に飲んでいるなあと感心したのが、彼らのお茶の取り入れ方。一瞬にして引き込まれてしまいました。

◉古来から続く考え方が、今も根っこに

中国の食べ物は古来、自然の摂理、すなわち旬で考えられていて、体や気のめぐりをよくすることを目的にしています。季節を5つに分け、動植物の1年の流れを、季節ごとの人間の体の状態に重ねてとらえています。日本でも時節を七十二候に分けて季節の食を考えますが、通じるものがあるなあと感じます。自然に寄り添って生きることが大切なのです。

さて、春は芽吹きの季節で、体を中温に保つもの(例えば葉物、山菜、海藻、柑橘、蓬茶など)を取ると良いとされています。夏は育成の季節で体を冷やすもの(例えば瓜類、果物、乳製品など)。日本でいうところの暑気払いとも同じ考え方ですね。土用は梅雨の時期。ジメジメと蒸し暑く、体の疲れが出やすいので、それを取ることに重きが置かれ、例えばカボチャ、トウモロコシ、ジャガイモ、麦などといった甘いものが良いとされています。秋は実りの季節。体を中温に保つ働きを促すネギ、大根、レンコン、キノコなどが例に挙げられます。冬は枯れる季節で寒い。だから体を温めるもの(例えば根菜や小豆・黒豆、肉類、青背魚や貝類・海藻)をとります。ただし、体調によっては夏に体を温めたり、冬に体を冷すこともあります。

近年、世界的な食生活の変化によって崩れている部分もあるかもしれませんが、古来から続く文化として、暮らしのベースになっているものではありますね。わが国でも「おばあちゃんの知恵」的な文化がどんどん失われつつありますが、「寒くなったら生姜で温める」とか「夏は麦茶で涼しく」とかありますでしょう。そういった知恵と同じように考えてゆけば合点がいきます。

ですので、お茶ひとつとっても、季節や体調によって飲まれているので、緑茶、発酵茶、花茶、果実茶、ハーブ茶などを日ごろから、体調に合わせて上手に摂り入れているのです。  

◉どこに行っても白湯が出てくる

「体を冷やさないように」という考え方が浸透していることは、ちょっとご飯を食べに行くだけでも実感します。出てくる飲み物が白湯なのです。水ではなくて白湯。ヨーロッパも水を買って飲みますし、日本も水でしょう?

最初はびっくりしましたね。茶葉を忘れたのかと思って「あらら、すいません?!」って聞いてみると、向こうは「はあ?」っていう対応なわけです(笑)。よく考えてみたら、食事の前に強いお茶なんて飲まないわよね。だから「お茶じゃなくて白湯ですよ」と普通に言われて。お茶は食後に注文するものなんですね。また、中国では、家庭でも、自分の地域で作られたお茶以外に、様々な種類や地域のお茶を飲むのが日常的なのだそうです。

◉季節でお茶を飲みわける

食べ物同様、お茶も季節バージョンで選ぶことが多いようです。平たくいえば、夏は暑いから体を冷まし、冬は体を温めるにはどう飲むか。これをベースに、体の症状などに合わせて様々なものを加えてお茶として飲んでいます。

大きく分けると、発酵していない緑茶は体を冷やすお茶。紅茶を始めとるする発酵茶は体を温めるお茶。それ以外に、菊、ジャスミン、金木犀、棗、くこなど、体の不調に合わせてプラスする、実ものや花のお茶なんかもあります。

雲南省 漢方薬の市場。

先ほども少し話に出ましたが、春は芽吹きの時期なので、新茶や蓬(ヨモギ)などのお茶を飲みます。新茶の時期から、厳しい暑さが続く夏には緑茶ね。体の中から熱を取り去ってくれる緑茶の作用は、少し前の日本のおばあちゃんの知恵としても、私たちも教わってきたものです。

土用には麦茶、ジャスミン茶、薄荷茶。体の疲れをとります。秋にかけては花と実の季節です。菊茶やなつめ茶や、そういった花とか実のものを飲むのね。また、風邪をひきやすい時期でもあるので、緑茶(不発酵茶)と紅茶(発酵茶)の中間にあたる、半発酵茶である烏龍茶も好まれます。冬の時期になると体は弱ってきていますし、抵抗できない。そういう時期には体を温める紅茶を飲むのね。つまり発酵茶です。  

ですから、お茶と言っても、一概に茶の木の茶葉だけではなくて、いろいろなものを飲んでいるのね。でも、夏にクーラーで冷えたから温まりたいと思ったら紅茶を飲めば良いし、そういった調整ができるととても有効です。お茶には、体内の毒素をとるとか体を温めるとか、みんな意味があります。ただ飲んでいたら、季節も用途も生かされずにそれだけになってしまいますが、時期と体調を考えて飲むことで、元気に過ごすことができるのですね。

→次回は、各地の人々のお茶の飲み方や効用などを紹介します。(10月4日更新予定)