【1分でわかる】クレカも使えない? 経済制裁下にあるイランで暮らす人々のリアル
この記事は、、朝日新聞GLOBE+で2022年7月4日に配信された記事を再構成してお届けします。本編はこちらから
1. クレジットカードや国際送金が使えず、金融の不便さが生活に直結
2. 制裁や補助金打ち切りで物価が急騰し、薬などの生活必需品も不足
3. 国内産業が成長する皮肉な面もあるが、貧しい人々への打撃が大きく格差が深刻
1, クレカも送金も使えない不便な日常
イランでは、ビザやマスターといった世界的に普及しているクレジットカードが一切使えません。日本の銀行口座からの送金も不可能です。これは、アメリカがイランの銀行を制裁対象にしており、違反した金融機関には巨額の制裁金が科される恐れがあるためです。過去には日本の銀行が多額の制裁金を払った例もあり、外国の金融機関はイランとの取引に極めて過敏になっています。イランへの赴任が決まったと伝えただけで、銀行口座を一方的に閉鎖されてしまった人もいるほど、金融の面で欧米から孤立しています。
2, 薬も買えない? 「制裁の網」の恐ろしさ
アメリカによる経済制裁の影響で、イランは深刻な不況に陥りました。政府の補助金打ち切りも重なり、パンや卵などの生活必需品がわずかな間に3倍に値上がりするなど、物価が高騰しています。さらに深刻なのが薬不足です。医薬品は本来制裁の対象外ですが、違反を恐れる外国企業が取引を控えるため、薬局を何軒も回らないと必要な薬が手に入りません。資金不足も影響し、制裁が人々の健康や生活を直撃しています。
3, 「自活」を目指す国と苦しむ市民のリアル
長年の制裁に対し、イランは国内産業を活性化させる「自活」の方針を掲げています。実際に、競合する外国企業が撤退するという「恩恵」を受け、国内の化粧品会社が業績を伸ばした例もあります。一方で、制裁の打撃を最も受けているのは困窮している人々です。生活への不満から抗議デモも起きていますが、お菓子や牛乳すら買い控えるのが常態化しており、貧しい人がさらに貧しくなる厳しい現実が広がっています。
イラン経済は、国際政治に大きく振り回されてきました。2015年に結ばれた「核合意」により、一度はアメリカなどの制裁が緩和され、イランは好景気を迎えました。しかし2018年、アメリカの第1次トランプ政権が一方的に合意から離脱し、制裁を再開させたことで状況は一変。国際的な送金ネットワーク(SWIFT)からも排除され、一瞬にして再び過酷な不況へと突き落とされたという歴史的背景があります。国家間の政治的な対立が、結果的に一般市民の食卓や健康という一番弱い部分に重くのしかかっていることを痛感しました。