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便利さと監視と 表裏一体で技術革新が進む中国、その実態をみる

World Now
中国・深圳の無人コンビニ photo: Masumitsu Yuichiro
中国・深圳の無人コンビニ photo: Masumitsu Yuichiro

スマートフォンの世界出荷台数で、中国メーカーは韓国サムスン電子や米アップルに迫る勢いだ。中国国内では、スマホが市民生活に行き渡っている。他方、個人情報を中国政府が「監視」することには、他国から厳しい視線が向けられている。

「いまや子どもと高齢者以外のほぼ100%が、スマホで電子決済します。私も約1年前から財布を持っていませんでした」。日本の金融企業に勤め、最近まで上海に駐在した男性(48)は、スマホが急速に生活必需品になったと話す。

中国では携帯電話は顔写真入りの身分証を提示しなければ入手できない。逆に、実名認証が確実に取れている分、携帯を通して様々なサービスが簡単に受けられる。屋台やコンビニでの支払いは言うに及ばず、政府システムと民間のものがつながっているため、納税や公共料金の支払いも携帯でできる。

これが進んで、預金額や納税額、交友関係などを基に個人の信用力を点数化するサービスも社会に浸透し始めた。例えば、中国ネット通販最大手、阿里巴巴(アリババ)グループの「芝麻信用」のスコアが高いと、融資を受ける際や就職で有利だ。その一方で、政府の公開データベースには「失信被執行人」、いわゆる「踏み倒し」をした者のリストがある。リストに載ると、公務員になれない、飛行機に乗れないといった「制裁」に加え、信用スコアも下がって「不利益」が待つ。

中国のIT事情に詳しいフリーライターの高口康太は「品行方正に生きないと少しずつ不便になるというかたちで、人びとに約束を守らせ、信用社会をつくることが中国政府の目標のようだ」と言う。「プライバシーを差し出すことで得られる便益が目に見えるので、一般の人びとから強い反発はない。政府に抵抗しても無駄、というあきらめもある」

こうしたシステムは、実は米国のクレジットカードの信用スコアがモデルだ。異なるのは、中国では政府がメールの検閲などネット管理・統制をしている点だ。

今年1月、アリババグループのアントフィナンシャルが、国際送金サービス大手の米マネーグラムインターナショナルの買収を断念した。米国の対米外国投資委員会が認めなかったためだ。ニューヨーク・タイムズ紙は、アリババと中国政府の密接な関係から、買収が成立していたら米軍関係者の資金情報も中国政府に流れたかもしれないと、「安全保障上の問題」を指摘した。