【1分でわかる】「顧みられない熱帯病」が大西洋を越えた! スペインの感染対策と日本の貢献
この記事は、with Planetで、2025年5月16日に配信された記事を再構成してお届けします。本編はこちらから
1. WHO指定の「顧みられない熱帯病」で、サシガメという昆虫が媒介する
2. 人々の移動や気候変動などにより、米国やスペインなどでも感染者が拡大
3. サシガメがいない地域でも、母子感染や輸血によって病気が広がるリスクがある
4. 早期発見・治療がカギ。日本の企業や研究機関も世界で協力している
1, 顧みられない熱帯病「シャーガス病」の恐ろしさ
シャーガス病はWHOが「顧みられない熱帯病(NTDs)」に指定する寄生虫の病気です。「サシガメ」という夜行性の昆虫が媒介し、就寝中に血を吸われ、かきむしった傷口からフンが入り込んで感染します。初期は症状が軽く、診断が困難でインフルエンザと間違われることもあります。しかし慢性期に入ると、感染者の約30~40%の心臓や消化管に異常が出ます。若年層でも重い心不全を起こしたり、食べ物をのみ込めなくなったりと、生活の質を著しく下げる恐ろしい病気です。
2, なぜスペインで感染が拡大したのか
感染者の9割以上は中南米に集中していますが、米国に次いでスペインでも感染者が多くなっています。これは2000年代初頭の人口移動に伴うものです。当時、バルセロナでボリビア出身の移住者の中にシャーガス病患者が見つかりました。また中南米からの移住者で重症の心臓病患者が相次ぎ、中には心臓病が珍しいはずの30代の患者も見つかり対策が始まりました。ボリビア、パラグアイ、アルゼンチンにまたがる「エル・チャコ」地域は感染率が30〜40%に達するホットスポットで、そこからの移民を通じて病気が海を渡ったのです。
3, 虫がいなくても広がる「母子感染」の脅威
スペインには媒介となるサシガメがいないため、虫からの直接の感染は起きません。しかし、感染した母親から生まれる子どもへの母子感染(確率は平均5%)や、輸血・血液製剤による感染リスクがあります。初期は無症状のため、子どもの感染に気づくのが難しいのが課題です。そのためスペインでは、感染地域出身の女性全員に検査を実施しています。子どもが感染していても、1歳になる前に早期治療を受ければ完全に寄生虫を排除し、治癒させることができるからです。
4, 日本の技術が支える世界の診断と治療
日本の企業や研究機関がシャーガス病の感染対策に貢献しているそうです。例えば、新生児の感染を調べるには高額な設備が必要でしたが、日本の企業が特別な研究施設がなくても調べられる検査方法を開発しました。研究所のアロンソさんは「どの地域でも使える診断技術を確立することは、治療へのアクセスを向上させるという意味で非常に重要だ」と語っています。長崎大学やJICAも協力しています。
医療の進化だけでなく、「住環境の改善」もこの病気を防ぐための重要な対策の一つです。感染源となるサシガメは、木材や土壁の割れ目などに潜み、夜になるとベッドに入ってきます。そのため、南米の感染地域では、家屋の壁をコンクリートにして虫が隠れる隙間をなくすといった対策が進められています。人々の生活環境そのものを変えることも、根深い感染症と戦うための手段になるという事実は興味深いですね。