【1分でわかる】トランプ氏が連発する「大統領令」の正体とは?
この記事は、朝日新聞(デジタル版)で2025年2月1日に配信された記事を再構成してお届けします。本編はこちらから
1. 大統領令は、法律をどう執行するか行政組織に命じるもの
2. 近年は根拠となる法律を示さないケースが増え、権力乱用のリスクが高まっている
3. 議会や裁判所が歯止めをかける仕組みだが…
1, 大統領令の種類と曖昧になるルール
大統領には憲法上、法律が誠実に執行されているかを監督する義務があり、行政組織に命令を出せます。これが広義の「大統領令」です。重要なのは法的根拠を示す必要があるはずの「行政命令」と示す必要がない「大統領覚書」の二つ。かつてオバマ大統領は権力乱用の批判を避けるため覚書を多用しました。しかし近年は、トランプ氏の1期目やバイデン政権を含め、行政命令でも根拠法を明示しないケースが増加。市民自ら根拠を調べなければならず、梅川教授は「権力乱用の要素を含んでいる」と指摘しています。
2, 三権分立で「暴走」は防げるのか
大統領の権力乱用には、議会と裁判所が歯止めをかけます。議会は予算を認めないなどの対抗策をとれますが、現状は与野党の議席数が拮抗しており簡単ではありません。トランプ氏が出した、米国生まれの子どもに米国籍を与える「出生地主義」を制限しようとする大統領令に対し、連邦地裁が違憲として一時差し止めを命じました。しかし、最終判断を下す連邦最高裁は保守派が多数を占めており、もし合憲と判断されれば過激な現状変更にお墨付きが与えられる懸念があります。
3, 2期目の「執念」とアメリカのゆくえ
第2次トランプ政権の大統領令について、梅川教授は1期目よりも周到に準備されていると分析し、「政権発足直後の一連の行政命令には、執念に近いものも感じます」と語っています。出生地主義の制限などに見られるように、トランプ氏はより多様な人を含めようとしてきたこれまでの流れに逆行し、米国の政治社会の姿を変えようとしています。支持者が喝采を送り、大統領令を出すことが彼の政治的名声を高める結果になれば、さらに積極的に使われる可能性があります。
アメリカの「大統領令」と聞くと、大統領の鶴の一声ですべてが決まる絶大な権力のように思えるかもしれません。しかし、梅川教授によると「米国の大統領令は、他の大統領制国家のそれと比べてことさら強いものではありません」とのことです。本来は「弱い」権限を、大統領たちが自身の公約実現や支持者へのアピールのために、ぎりぎりまで「強く運用している」というのが実態のようです。