汚れていても再生 欧州式プラごみリサイクルの実力 カギ握るのは「徹底選別」
日々の生活から出る汚れたプラスチックごみを、欧州ではどうやって分別し、リサイクルしているのか。日本とは比べものにならないほどの規模を誇り、最先端の技術で徹底的なプラごみの分別をしている工場があると聞き、オランダへ飛んだ。
首都アムステルダムから電車と車を乗り継いで1時間余り。アルクマール市の郊外、横なぐりの風が吹きすさぶ北海近くの真っ平らな土地に、廃棄物処理会社「ソルティバ」の工場はあった。
許可を得て、広さ約1500平方メートルの工場に入った。数十はあるだろうか、ベルトコンベヤーが縦横無尽に張りめぐらされ、プラスチックだけでなく、缶もびんも、あらゆる家庭の「ごみ」が目まぐるしい速度で運ばれている。
日本でもごみの選別工場を見たことがあるが、数本のベルトコンベヤーがあるだけだった。スケールがまったく違う。子どものころ、アニメや漫画で見た近未来の工場をふと思い出す。キラキラ輝く機械の部品が等間隔で並び、集められた先で製品を組み立てる様子だ。
今、目の前にあるベルトコンベヤーのラインは全く逆。ごみの形状もばらばらで雑然としていて、役割は、集めるのではなく、ばらすことにある。社名も英語でいう「ソーティング(仕分け)」に由来している。工場ができたのは約9年前。「ここではどんなごみが来ても分別できる」。案内してくれたプロジェクトコーディネーターのヨハン・ファンデルコルクさん(62)は胸を張った。
日本と同様、オランダ国内でも家庭ごみはびんや缶、紙などを分別して出す地域が多いが、「混在するのは当たり前」という考え方で、食べ残しなども引き受ける。全く分別されていない生ごみが一緒にやってくることもあるらしい。
「汚くてもかまわない」。汚れよりも大事なことは量を集めることだという。それを聞いてなるほどと思ったのが、ペットボトルの構造の違いだ。日本ではボトルと素材の異なるキャップやフィルムをはがすよう消費者に求める。混じりけがないから、一手間省けて再生しやすいという考え方だ。ところが、欧州は基本的にキャップがボトルから外れない。一緒に回収する方が再生できるプラスチックの全体量が稼げるからだ。
さらに日本では、最近でこそプラスチックでできたハンガーなどの製品も分別回収する自治体が増えてきたが、ペットボトルとそれ以外の容器包装類のみを資源として回収するところも多い。その他は燃やすごみや粗大ごみとして処分される。工場などから産業廃棄物として出るものも含めプラスチック廃棄物全体の6~7割が、燃やして熱を発電や暖房などに使う「サーマルリサイクル」となる。
しかし欧州では、灰にしてしまうと繰り返し使えないのでリサイクルと認められない。汚れていてもいいからかき集めて、徹底した分別や破砕、洗浄をすることで再生可能になるのだから、燃やすのは意味がないという。原料として再びプラスチックに戻す循環によって、一からつくるのに使う原油を減らす「サーキュラーエコノミー(経済循環)」の取り組みが本格化している。
では、そのカギとなる分別はどんな手法なのか。
まず、大小の穴のあいたドラムの中にごみを入れて回転させることで、大きさごとに分ける。次に、振動でふるいにかける装置に通すと、重い物は下に落ち、軽いものは弾みで飛ばされる。
極めつきは高性能の赤外線照射装置だ。反射光の波長でプラスチック、紙などを瞬時に分ける。人の目や手を使ったかつての分別では不正確で分けきれなかった物も、ほとんど紛れることがないという。こうした徹底した分別により、リサイクルされないごみは少なくなり、資源化できない生ごみなどが隣の清掃工場で焼かれる。
アムステルダムなど約50キロ圏内から来るごみの工場での処理量は1時間に40トン。年間だと10万トンレベルに達し、同種の工場としては欧州では中規模だという。九州ほどの国土に約1800万人が暮らすオランダは、欧州でも人口密度が高い。ごみを埋めるにも減量する必要性があり、かつては日本と並ぶ「焼却大国」だったが、十数年前から、資源として再生できるものはなるべく焼かない方針に切り替わったという。
オランダに限らず欧州の先進国も、かつては日本と同様に、価値の低いプラごみを途上国に輸出していた。だが、ごみは有害物質が混ざるリスクもあり、中国などごみを受け入れない方針を示す国が増えてきたため、域内で処分せざるを得ない事情も背景にある。
プラごみ再生の過程として、ソルティバでの作業はほんの序章にすぎない。
缶などと分離された廃プラは、アルクマールから車で約2時間、大きな湖をはさんで向かい側のヘーレンフェーン市にある別の会社のリサイクル工場に運ばれ、素材ごとに細分化される。
工場設備の導入や設計を手がけたドイツのプラント企業、スタドラー社のセールスマネジャー、ジェロン・キベールさん(64)は「一つの廃プラが入り口から出荷を待つ出口に至るまで20分ほどで済むので処理量も多い」と、こともなげに言う。出口では素材ごとに1辺が1メートルほどの「ベール」という立方体に圧縮され、次の選別工場に回されていく。そうやっていくつもの段階を踏んでいく中で、インクの色の除去などを徹底すれば、物や素材にもよるが、原油などからつくる新品の「バージン樹脂」とさほど変わらない純度の高い樹脂(ペレットという粒状のもの)が完成する。
これだけの工程を経るので、ペレットからプラスチック製品をつくるのは、バージン樹脂からよりもコストがかかる。それでも、「メーカーは、いい樹脂であれば製品の品質も保証でき、社会貢献にもなるので再生プラスチックを喜んで使おうという気になる」とキベールさんは説明する。
とはいえ、「ボランティア」ではなく「商品」として再生樹脂を流通させるためには、コストをできるだけ下げる必要がある。国境を越えて1000キロ先から廃プラを調達する工場もあり、それだけ多くの「資源」を確保するスケールメリットが、コストに見合うだけの事業の成立を可能にしているというわけだ。
分別の技術はさらに進化している。ノルウェー発祥の世界的な選別機メーカー「トムラ」の担当者バレリオ・サマさん(42)は「今はAI(人工知能)を採り入れ、形などから何の用途で使われていたかを覚え込ませる技術も進んでいる」と説明する。例えば、食品に直接接触する容器包装に使う再生プラは、安全面を考慮して食品用以外の廃プラからはつくらないのが欧州の原則で、AIはそれらを除外するのにも役立つという。