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廃プラのリサイクル、へその緒を治療に生かす…多様な起業、スタートアップW杯京都

スタートアップワールドカップ 更新日: 公開日:
スタートアップワールドカップ京都予選の出場者と審査員ら
スタートアップワールドカップ京都予選の出場者と審査員ら=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

スタートアップ(新興企業)が自社の強みや有望性などをプレゼンして競い合う世界的なピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ」の京都予選が5月17日、京都大で開かれた。予選を勝ち抜き、アメリカで開かれる決勝大会への切符を手に入れたのは「ヘラルボニー」(盛岡市)だったが、ほかの11社も熱のこもったプレゼンを披露した。

京都予選は書類審査を通過した全12社が出場。優勝したヘラルボニーは、知的障害がある人たちが制作したアート作品のライセンス管理などを手がけており、社会課題解決とビジネスとの両立が評価されたとみられ、すべての審査員が同社に最高点をつけた。

2位は廃棄プラスチックから再生プラスチックペレットを造る「esa」(東京)、3位はへその緒を治療に生かす事業を展開する「ヒューマンライフコード」(東京)だった。各社の主なプレゼン内容は以下の通り(発表順)。

Idein株式会社(中村晃一CEO)

様々なAIデバイスソリューションを手軽に開発し、大規模運用を支えるプラットフォームサービス「Actcast」を提供しています。大手コンビニエンスストアの1800店舗以上でAIカメラを導入、大手キャリアのスマホショップの全店舗でAIマイクが導入されるなど、様々な現場のデジタルトランスフォーメーションのプロジェクトを開発するインフラとして使われています。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするIdein株式会社の中村晃一CEO
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするIdein株式会社の中村晃一CEO=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

ティフォン株式会社(深沢研CEO)

XR(クロスリアリティー)の技術を用いた新しいエンターテインメントの創出に取り組んでいます。2017年に「ティフォニウム」というVR体験施設をオープンし、8.5メートル×4.5メートルの現実空間で、VRゴーグルをかぶって歩き回りながら体験します。実際は何もない部屋ですが、廃虚の洋館を散策しているようなホラー体験ができます。ウルトラマンの怪獣が登場するライド型アトラクション「かいじゅうのすみかVR」も開発しました。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするティフォン株式会社の深沢研CEO
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするティフォン株式会社の深沢研CEO=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

株式会社パンフォーユー(矢野健太・代表取締役)

パン市場は拡大しているのにパン屋さんは人手不足などから減っています。そういった課題を解決します。独自開発した保存袋を活用した冷凍技術により、パン屋さんが持っている設備でかなりおいしくパンを冷凍でき、簡単に出荷もできるサービスを提供しています。冷凍はフードロスにも貢献しています。高品質なパンを少量、多品種生産できるのが特徴で、個人、法人の両方に届けることができるプラットフォーマーは弊社だけです。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社パンフォーユーの矢野健太・代表取締役
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社パンフォーユーの矢野健太・代表取締役=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

株式会社esa(イーサ、黒川周子・代表取締役)

企業の製造工程から出た産業廃棄プラスチックから再生プラスチックのペレットを製造する「マテリアルリサイクル」を独自技術で実現しています。お客様から譲ってもらった廃棄プラスチックをリサイクルし、別のお客様に原料として提供しています。双方のお客様のCO2削減に貢献できます。日本のプラスチックリサイクルは世界と比べ後れを取っています。日本では廃棄プラスチックの70%以上は燃焼に回されます。プラスチックは石油由来なので、熱燃料となるからですが、諸外国ではリサイクルとは認められていません。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社esaの黒川周子・代表取締役
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社esaの黒川周子・代表取締役=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

AIQ株式会社(渡辺求・社長)

個性を持った「AIクローン」を作ります。例えば、店頭スタッフの個性を再現したデジタルスタッフを開発しました。店舗スタッフのSNS投稿データや、EC販売データなどをもとに学習し、アパレルブランドと協力して256体を設置し、実証実験しました。その結果、お客様に様々な提案を提供できました。2週間で3千人以上のユーザーが利用し、99%のユーザーがAI接客に好意的でした。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするAIQ株式会社の渡辺求・社長
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするAIQ株式会社の渡辺求・社長=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

ヒューマンライフコード株式会社(原田雅充・社長)

産後に捨てられているへその緒(さい帯、英語でcord〈コード)を活用し、治療薬がない患者を救いたいと思います。へその緒から取れる細胞の再生力はとても高いのが特徴です。例えば、発症後2カ月で4人のうち3人が亡くなる造血幹細胞移植後の非感染性肺合併症の治療でへその緒を活用したところ、大幅に生存率を改善する臨床試験に成功しました。ほかの難病の臨床にも応用していきます。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするヒューマンライフコード株式会社の原田雅充・社長
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするヒューマンライフコード株式会社の原田雅充・社長=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

株式会社シェアリングエネルギー(上村一行・代表取締役)

分散電源の創出により、エネルギーシステムを変革します。海外から資源を輸入し、大きな発電所を作って一方通行で届けていく現在のシステムはすばらしいのですが、今後をみすえると電力の脱炭素化や自然災害からの復旧力などの点で課題があります。それらを解決するため、「シェアでんき」というサービスを展開しています。ユーザーは初期費用が無料で、屋根の上に太陽光発電設備を設置できます。発電した電気はとても安く利用できます。契約期間が終わると設備を無償で譲り受けることができます。使い切れずにあまった電気は売ることができます。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社シェアリングエネルギーの上村一行・代表取締役
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社シェアリングエネルギーの上村一行・代表取締役=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

株式会社トラーナ(志田典道・代表取締役)

お子さんの成長に合わせた知育玩具のサブスクサービス「トイサブ!」をやっています。子どもがタブレットを使う時間が増えていて、親子の時間がどんどん減少しています。それを打開するためにこのサービスを始めました。成長に合わせた知育玩具を弊社が6点選び、月額3980円で届けます。100万件のデータから、お子さんに最適の玩具を選びます。玩具は2カ月に1回、交換します。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社トラーナの志田典道・代表取締役
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社トラーナの志田典道・代表取締役=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

ミツフジ株式会社(三寺歩・社長)

昨年熱中症で救急搬送された人は日本国内で9万1467人いました。また、この50年間で、170人以上の子どもたちが学校で熱中症により亡くなっています。熱中症は見た目でわかりにくい病気ですが、体内の深部体温の上昇変化が分かれば未然に防ぐことができます。そのためのアルゴリズムを産業医科大学と共同で研究してきました。脈波を測るだけで深部体温の上昇の変化が分かるアルゴリズムで、それを搭載したデバイスが累計170万台販売されました。さらに本日、このアルゴリズムを搭載した1900円のウェアラブル製品も新たに発売しました。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするミツフジ株式会社の三寺歩・社長
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンするミツフジ株式会社の三寺歩・社長=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

株式会社SIRC(髙橋真理子CEO)

2050年のカーボンニュートラルに向けて、企業は工場や会社全体のCO2排出量の削減を進めています。工場や現場側はアクションプランの策定を求められますが、電力使用量の総量がわかっても内訳がわからなければ、削減の優先順位をつけられません。そうした課題を当社の特許技術が解決します。従来の電力量計と同じことができるのに、取り付けが簡単な装置を開発しました。取り付け時間も短縮され、その際の停電はなく、工事も不要です。各機械が動いている状態でこの装置を分電盤や製造装置などに取り付けることができ、どこでなぜ電力を使っているのか「見える化」されます。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社SIRCの髙橋真理子CEO
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社SIRCの髙橋真理子CEO=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影

株式会社マップフォー(橘川雄樹・代表取締役)

3次元地図のトータルソリューションを提供するディープテックです。これが実現できれば、現実に目視していたことをデータ上で確認できるようになりますし、自動運転、ロボットなど新しいサービスにも利用することができます。データを取得するハードウェア、取得したデータから3次元地図を作製するソフトウェアの双方を開発しました。我々自身もそれらを使い、地図を提供するサービスを行っています。

スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社マップフォーの橘川雄樹・代表取締役
スタートアップワールドカップ京都予選でプレゼンする株式会社マップフォーの橘川雄樹・代表取締役=2024年5月17日、京都大、関根和弘撮影