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スタートアップワールドカップ2023、京都予選はスマートホームのHOMMAが優勝

スタートアップワールドカップ 更新日: 公開日:
スタートアップワールドカップ2023京都予選で優勝し、喜ぶHOMMA Group代表の本間毅さん
スタートアップワールドカップ2023京都予選で優勝し、喜ぶHOMMA Group代表の本間毅さん=2023年7月6日、京都大、関根和弘撮影

スタートアップ(新興企業)の世界最大級のコンテスト、「スタートアップワールドカップ2023」の国内予選が7月6日、京都大学(京都市)で開かれた。事前審査を通過した12社の中から審査の結果、アメリカ・シリコンバレーに本社を置くスマートホームメーカー「HOMMA Group」が優勝。今年12月にサンフランシスコで開かれる世界決勝大会に進出する。ここで優勝すれば、100万ドル(約1億4000万円)の投資を受けることができる。

スタートアップワールドカップは今年で5回目。予選は世界約50カ国・地域であり、日本では京都に続いて東京でも9月に開かれる。2017年の第1回世界大会では日本代表で、保育施設を先進技術で支援する会社「ユニファ」(東京都千代田区)が優勝企業に選ばれた。

主催するのは、主にテック系のスタートアップへの投資事業などを展開するベンチャーキャピタル「ペガサス・テック・ベンチャーズ」(本社=アメリカ・カリフォルニア州、アニス・ウッザマンCEO)。コンテストによって、有望なスタートアップを「発掘」し、そうした企業との提携を望む大手企業につなぐことも狙っている。

京都予選は、京都大のシンボルである「百周年時計台記念館」で開かれた。135社超の応募企業から選ばれた12社の代表が登壇し、30秒の企業紹介映像のあと、事業の革新性やビジネスの将来性などを3分半でプレゼン。審査員との質疑応答をへて採点された。

優勝したHOMMA Group代表の本間毅さん(48)は、自社の商品について、建築段階からスマートホーム機能が住宅に備え付けられ、人の動きをセンサーで感知し、空調やセキュリティー、照明などがすべて自動で動くことをアピールした。

アマゾンやGoogleの音声認識AIとの違いを強調した上で、「全てのデバイスがビルトインされ、引っ越したその日からすぐに使えます。全てが自動運転し、一切操作をする必要がない最先端のスマートホームです。しかも10%以上、電力が節約できている、まさに未来の住宅です」

本間さんは鳥取県出身だが、父方の祖父まで京都で大工をやっていた。アメリカ在住ながらも今回、京都予選に出場した背景には、そんな事情があったという。

審査員らによると、事業の先進性や将来性などを評価した。本間さんは「日本の企業が海外で活躍しないといけない。本当に胸がいっぱいです」と喜びを語った。

京都予選で優勝した喜びを語る本間毅さん
京都予選で優勝した喜びを語る本間毅さん=7月6日、京都大、関根和弘撮影

他の出場したスタートアップと主なプレゼン内容は次の通り。

スプレッド(稲田信二社長)

農業の課題である人、水、環境、管理を全てテクノロジーにおきかえ、歩留まり97%の生産性を実現しています。今後は、それらのビッグデータをAIにおきかえ、遠隔の工場管理システム、また自動化装置ということで今後グローバルな植物工場のプラットフォームを構築したいと考えています。自社ブランドのベジタスは累計で1億パックを突破しました。国内展開で目標2030年に国内レタス生産1日100トン、売り上げ400億を目指しています。

スプレッドの稲田信二社長
スプレッドの稲田信二社長=7月6日、京都大、関根和弘撮影

エニキャリ(小嵜秀信社長)

東京、横浜、名古屋、大阪で自社開発したシステムを使い、アルバイトの自転車配達員で荷物をお届けするサービスを展開しています。CO₂を排出しないカーボンニュートラルの実現に向けて活躍しております。配達員に対し、アプリで自動指示を行う。これによって、普通のアルバイトの配達員がセミプロ並みに配達できる。開発管理したシステムを他社にも使ってもらい、日本の物流問題の解決につなげることもフォーカスをしています。

エニキャリの小嵜秀信社長
エニキャリの小嵜秀信社長=7月6日、京都大、関根和弘撮影

Eudaimonix(谷亮太朗CEO)

人工肛門についてご存じでしょうか。事故やがんなどの病気でおしりから便が出せなくなった患者が新たに作る便の出口で、1日に1、2回、急に出てくるのですが、多くの患者が(便が)いつ出るかわからず、たまりすぎると漏れることについて、日常的に不安を抱いています。何とかしたいと思い、製品を開発しました。好きなときに便を出して、腸を空っぽにする製品を開発しています。ボタンを押してすぐに便を出し、袋の中に出た便をトイレに捨てて、患者は6時間、便が出ない時間を確保できます。

Eudaimonixの谷亮太朗CEO
Eudaimonixの谷亮太朗CEO=7月6日、京都大、関根和弘撮影

WAmazing(加藤史子CEO)

2030年、政府目標がもし達成されれば、ナンバーワン外貨獲得産業は観光インバウンドになるんです。最も大きいのは買い物ですが、消費税、免税の手続きが、対面、はんこ、紙、行列などのアナログ100%、DX、EC技術はゼロという状態だったんです。WAmazingは、日本で初めて国税庁に認められた機械で免税手続きできる自動販売機を開発しました。北海道から那覇まで、日本の主要空港に設置済みです。

WAmazingの加藤史子CEO
WAmazingの加藤史子CEO=7月6日、京都大、関根和弘撮影

ABCash Technologies(児玉隆洋社長)

金融教育で日本の金融リテラシーを上げていきたいと思っています。サービスはオンラインで金融教育を受けられ、マンツーマンでお金のことをレクチャーしてもらって相談できるというサービスです。パーソナライズ化を採用しています。これを実現するために、100人の金融教育のプロ、そして3万人以上の受講データベースによるカリキュラムを提供できます。

ABCash Technologiesの児玉隆洋社長
ABCash Technologiesの児玉隆洋社長=7月6日、京都大、関根和弘撮影

クラス(久保裕丈社長)

インテリアを初めとした耐久消費財をもっと身軽に使うことができるサービスです。利用できるのは個人の自宅だけではなくて企業も可能です。サービスの利用は製品ごとに設定された月額のみ。お客様が不要になったものというのは責任をもって回収、そしてリファービッシュ(再整備)をして、また次のお客様の手元に回す。これによって耐久財の廃棄を回避することが可能です。

クラスの久保裕丈社長
クラスの久保裕丈社長=7月6日、京都大、関根和弘撮影

ログラス(布川友也CEO)

経営者が数値を分析するまでにかかるのは10日間。会計データは経営者が見たいデータになっていません。そこで私たちは経営管理クラウドを作りました。部署ごとにデータを出して欲しいと依頼をワンクリックかけるだけで、全世界の事業部長、支店長にログラスのフォーマットと通知が飛んでいきます。事業部長は、ワンクリックするだけでExcelやGoogleスプレッドシートとAPI連携できます。データが自動で手元に瞬時に集まり、AIを使ったダッシュボード機能で、経営者は本当に見たいプロジェクト別分析も瞬時に出力できます。

ログラスの布川友也CEO
ログラスの布川友也CEO=7月6日、京都大、関根和弘撮影

デジタルグリッド(豊田祐介社長)

僕はとにかく再生可能エネルギーを増やしたいんです。太陽光が増えてきた一方で、大手電力会社は電気代を値上げすると言いました。再生可能エネルギーが使われなくて無駄になってしまっている時間帯があります。そういった無駄が起こらないように、電力会社からではなくて、直接再生可能エネルギーの電気を買えるような仕組みを作りまして、プラットフォームを運営している会社です。

デジタルグリッドの豊田祐介社長
デジタルグリッドの豊田祐介社長=7月6日、京都大、関根和弘撮影

ビビッドガーデン(秋元里奈社長)

私は神奈川県にある小さい農家に生まれました。実家の畑にはすごく綺麗な野菜があって、自慢だったんですが、私の実家は廃業をしまして、自慢だった畑は今、耕作放棄地になってしまっています。こういう経験をしているのは私だけではありません。農業だけでは食べていけないと年間数十万人の農家がやめています。その課題を解決するためにスタートしたのが、「食べチョク」です。生産者と消費者が直接つながって、生産者さんは自分で価格を決めて、こだわりに見合った収益を得ることができます。国内ナンバーワンの規模の産直ECサイトとなっています。

ビビッドガーデンの秋元里奈社長
ビビッドガーデンの秋元里奈社長=7月6日、京都大、関根和弘撮影

Varinos(桜庭喜行CEO)

我々が今、解決したい社会課題は不妊です。日本は不妊治療大国です。年間45万件行われていて、世界で2番目に多く、アメリカの2倍です。問題は成功率がそれほど高くないというとこです。そこで我々、「子宮内フローラ検査」を開発して提供しています。これは我々が世界で初めて実用化に成功しました。これは子宮の中の菌の環境をDNA、ゲノムの情報を使って調べる検査になっています。

Varinosの桜庭喜行CEO
Varinosの桜庭喜行CEO=7月6日、京都大、関根和弘撮影

スマートショッピング(林英俊代表取締役)

我々のサービスは、IoT重量計で在庫の残量を自動で把握します。どこからでも見ることができ、アラートも受け取れます。実際には製造を中心に900社で使っていただいています。製造の現場、物が多くて本当に複雑です。しかも、ちょっとのミスが数千万円のインパクトにすぐつながる。ごめんではすみません、棚卸は終わらず、ラインを長く止めてしまう。部品の配膳でミスが起こる。我々は今の注力領域だけでも7000億円、グローバルに展開すると10兆円の市場で戦っています。

スマートショッピングの林英俊代表取締役
スマートショッピングの林英俊代表取締役=7月6日、京都大、関根和弘撮影