外国人労働者の日本受け入れ この数年で非常に慎重に スタンフォード大調査
外国人労働者の受け入れについて、日本人は現在非常に慎重であり、特にこの数年の間にその傾向が強まった。外国人の中では中国出身者は好まれない傾向があり、受け入れられやすいのは、医療か研究・科学などの分野に従事し、日本語ができて学歴の高い、欧米かベトナム出身の移民――。米スタンフォード大学社会学部教授で同大アジア太平洋研究センター所長の筒井清輝教授と、豪モナシュ大学のチャールズ・クラブツリー准教授が中心になって、日本の社会や経済、政治などさまざまなテーマで行うネット上の世論調査、ジャパン・バロメーター。回答者数は日本最大級だが、今回は「移民」や「外国人」をテーマに行った。
調査は、2026年2月8日に投開票された衆院選の前後における世論の変化を見る目的もあり、2026年2月の6~8日と13~16日にかけて行われた。回答者数はそれぞれ4000人あまりだった。ただ、選挙の前後で結果はほぼ同じだった。
調査では、日本人が「外国人労働者の受け入れ」に、どの程度賛成か反対なのかについて探った。同項目をはじめ、「気候変動・地球温暖化」「少子化」「高齢化」「現役世代の社会保障」「国の予算削減」「経済格差」「AI戦略」など16の政策について、「同意する」「どちらかといえば同意する」「どちらかといえば同意しない」「同意しない」で答えてもらった。
1回目の調査で「外国人労働者の受け入れ」について大別して「同意する」(前2者)と答えたのは46.9%、「同意しない」(後2者)が53.1%で、反対の割合が一番高かった。2回目でも「同意する」が46.6%、「同意しない」が53.4%で同様の結果だった。
「外国人労働者の受け入れ」を含めた政策の優先順位については、2022年と2023年にも調査をしている。このときの政策は14項目で、回答カテゴリーが多少違うが、比較可能な内容だ。2022、2023年は、賛成と反対に大別すると反対が35.5%、36.6%。つまり、22年と26年では約18ポイントも反対が増えた。他の項目では、反対の率が減少か変わらないものがほとんどで、増えても数ポイントだったのに比べると、顕著な変化が見られる。
また、どのような属性の移民が好まれるかについても調べた。そのために、「移民審査官の立場になって判断」してもらった。性別、学歴、出身国、日本語能力、(移民の)申請理由、職業、これまでの勤務経験の長さ、就労計画、日本への渡航歴の九つの属性について聞いた。
調査手法としては、これら九つの属性をランダムに組み合わせて「候補者像」を二つ作り、二者択一形式でどちらかを選ばせる。選択肢を変更して同じ設問を計6回繰り返し、すべての調査対象者から得られたそれらの回答を集計、分析する。こうすることで、統計学的により回答者の「本音」に迫ることができる。
学歴は「正規の学校教育なし」から「日本の大学院学位取得に相当」まで7種類、出身国は米国、インド、トルコ、ドイツ、ブラジル、ベトナム、中国、韓国の8カ国。日本語能力は習熟度で「面接では通訳を介して話していた」から「面接では流暢(りゅうちょう)に日本語を話していた」まで4種類。申請理由は「すでに日本にいる家族と暮らすため」「政治的・宗教的迫害から逃れるため」「日本でより良い仕事を求めるため」の3種類。職業はIT技術者、コンビニ店員、介護士、保育士、医師、研究科学者、金融コンサルタントなど11種類。勤務経験は「経験なし」から「5年以上」まで4種類。就労計画は「現時点では仕事を探す予定はない」「日本到着後に仕事を探す予定である」「日本での雇用主との契約はないが、就職面接は受けた」「日本での雇用主との契約がある」の4種類。日本への渡航歴は「合法的な許可なく一度日本に入国した」「日本で家族と6カ月間過ごした」「日本を訪れたことはない」「観光ビザで一度日本に入国した」「観光ビザで何度も日本を訪れた」の5種類。
分析の結果、上記のそれぞれの項目で最も支持されるのは、「女性」「大学院卒」「ドイツ」「面接では流暢に日本語を話していた」「すでに日本にいる家族と暮らすため」「医師」「5年以上の勤務経験」「日本での雇用主との契約がある」「日本で家族と6カ月間過ごした」だった。
出身国で受け入れられやすいのはドイツの次に米国、そしてインド、ベトナム、トルコ、ブラジル、韓国、中国の順だった。
さらに、前提条件をつけることによって移民の受け入れられやすさが変わるかどうかも調べた。日本経済と日本社会の文化、日本の統治と治安の三つに焦点をあて、それぞれ「移民の増加は日本経済に利益をもたらす」「負担をもたらす」、「日本社会の文化を豊かにする」「損なう」、「日本の統治と治安に安定をもたらす」「混乱をもたらす」という文章を読んだ後に、日本が移民の受け入れを拡大することについて、「賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」「反対」から選んでもらった。この結果、経済に利益をもたらすという前提条件を読んだ時に移民受け入れへの賛成がもっとも有意に上昇した。逆に、移民が増えると統治と治安に混乱をもたらすという文章を読んだ時に、反対がもっとも有意に上昇した。
今回の結果について、筒井教授は「外国人労働者の受け入れが日本人にとって大きな関心事になった。以前は一般的な日本人にとってそこまで重要な問題ではなかったと思われるが、2025年の参院選やその後の知事選をきっかけに外国人労働者の受け入れに対する関心が急速に高くなっている。参政党などの政治的な世論喚起の影響と見ていいだろう。日本の外国人比率は、増加傾向にはあるものの欧米諸国に比べてまだ低く、それほど移民が入っていない国でも、政治的なキャンペーンでこれほど世論が変化したのは驚きだった」。
また、中国出身者が好まれないことについては、「競争相手になって自分たちの地位を脅かす存在になるマイノリティー集団を好まない傾向は、かなり普遍的に見られる。例えば米国で、公民権運動以降黒人が白人の居住地域や学校に入ってくるようになると、白人が自分たちの空間が脅かされ、競争相手になると感じて反発した。日本人にとって、アジア系の外国人でも、ベトナム人は介護など、人手不足の分野の仕事を担ってくれる存在で、競争相手というよりもむしろ補完的な役割を果たしていると見なされている。中国人に対する認識とは対照的だ」。
さらに、日本人が受け入れやすい外国人は「学歴、職歴、日本語能力が高度で、日本社会に貢献する能力を持ち、そのための準備もしている人材。米国の調査でも同様の傾向が見られ、能力が重視されている」という。
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