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グリーンランド、ベネズエラ、AIも 変容する世界の課題討議 ダボス会議が開幕 

ダボス・リポート2026 更新日: 公開日:
ダボス会議の会場
ダボス会議の会場=2026年1月19日、スイス・ダボス、宮地ゆう撮影

世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(通称、ダボス会議)が現地時間19日、スイス東部の町ダボスで始まった。今年は、主要7カ国(G7)首脳のうち、日本の高市早苗首相を除く6人が参加の予定で、トランプ米大統領やウクライナのゼレンスキー大統領も参加する見込みだ。アメリカによるデンマーク自治領グリーンランド領有への圧力やベネズエラへの攻撃、ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザの停戦合意をめぐる協議の行方など、世界が急速に変容するなか、どのような話が交わされるのか。

ダボス会議開幕前日の18日、スイス・チューリッヒ空港からシャトルバスに乗り、東部のダボスへと向かった。市街地を通り過ぎ、トンネルをいくつか抜けると、一気に風景が変わり、そびえ立つ雪山が次々と現れる。2時間あまりでダボスの町に入った。

ダボスの町の入り口
ダボスの町へと入る道路=2026年1月18日、スイス・ダボス、宮地ゆう撮影

ダボスは標高約1500メートルの山あいにある。道路脇に除雪された雪が積まれているが、地元の人は「今年は雪が少ない」と話す。私が到着したとき、まだ各国要人は町に入っていなかったが、道の所々に銃を構えた迷彩服姿の兵士らが立ち、警備員があちこちで参加者のバッジを確認している。その横を、時折スキー板を抱えた家族連れが歩いていく。

130カ国から各国要人ら3000人参加

今年はトランプ大統領が来ることもあり、例年にないペースで参加者が膨らんだ。約65人の国家元首と政府首脳、企業のCEO・会長が約850人など、約130カ国から約3000人が参加する。これほどの大規模な会合は国連総会くらいだろうか。

ダボス会議の期間中は、警備が厳しく、町は大渋滞になるため、会場周辺の会社や店は休みになるところが多い。ホテルや民泊の値段も高騰するため、家を貸し出して町を離れる人も少なくない。

会場近くの建設会社で働くフロリアン・ホフマンさん(28)も毎年、ダボス会議の期間中は職場が休みになると言う。「家を貸し出して、(カリブ海の島国)バハマに旅行に出た同僚もいますよ」。ホフマンさんも自分のアパートを貸し出し、両親の家に住んで、日中はWEFのドライバーとして働いている。

会場では着々と準備が進む。プレスセンターにも少しずつ記者が入り始めていた。

ダボスの会場
ダボスの会場=2026年1月19日、スイス・ダボス、宮地ゆう撮影

私自身は、この会合に参加するのが2回目になる。ダボスでは、会場とホテルを結ぶシャトルバスや会場のラウンジなどで、たまたま隣に座った見知らぬ人とおしゃべりをするのが楽しみの一つだ。思いがけない人と出会うことも多い。

この日は、会場を出る帰りのシャトルバスの中で、米イエール大学教授で理論天体物理学者のプリヤンバダ・ナタラジャンさんと乗り合わせた。

彼女はインド出身で、ブラックホールと宇宙にある謎の物質ダークマター(暗黒物質)の研究者。ダボスでは三つのセッションに登壇すると話す。「基礎科学なしに、自然科学の進歩はない」と力説し、トランプ政権がいかに大学教育や研究基盤を壊しているかと嘆いた。

19日。ダボス会議初日だが、公式プログラムは夜のコンサートやレセプションからだ。

同じホテルに泊まっていた香港紙サウスチャイナ・モーニングポストの編集長、タミー・タムさんと一緒に朝食をとる。香港で生まれ育ち、長くジャーナリズムに携わり、大学で教えてもいるという。香港や深圳の変化などを聞かせてくれた。

朝、会場に向かうシャトルの中で、米ブルームバーグの記者ステーシー・バネック・スミスさんと出会った。初めてダボスを訪れたといい、「こんなにたくさんセッションがあると、何からカバーすればいいのかわからない」。私も全く同じだと言い、何となく互いに安心した。

昼ごろ会場のラウンジで原稿を書いていると、隣に座っていた男性と世間話になった。何の仕事をしているのか尋ねると、「AI(人工知能)をやっていてね」。米マサチューセッツ工科大学でAIと物理学を教えるマックス・テグマーク教授だった。

彼の著作は日本語でもいくつか翻訳が出ている。「AIを使うだけでなく、人との関わりや規制のあり方を考えている」とテグマーク氏。ダボス会議で登壇を頼まれて来たという。後日会う約束をして分かれた。

米国不在で揺らぐグローバルヘルス

午後、WEFのヘルスとヘルスケア部門長シャム・ビシェンさんと会った。アメリカが次々と国際機関から手を引く中で、いかにしてグローバルヘルスへの資金をつなぎとめるかは、大きな課題になっている。これは、次のパンデミックをいかに抑えるかにもつながっている。

WEFのシャム・ビシェンさん
WEFのシャム・ビシェンさん=2026年1月19日、スイス・ダボス、宮地ゆう撮影

「アメリカは多国間の援助から2国間での援助へとシフトしており、途上国は自前の資金が求められるようになった」。今後、アメリカの代わりをそのままどこかの国や機関が担うことは考えにくい。中国の援助やフィランソロピー(社会貢献)の資金など複数の資金源が代替の役割を果たすだろう、と話した。

会場を出て、徒歩20分ほどのホテルへ。人材コンサルティング大手マーサーのパット・トムリンソン社長兼最高経営責任者(CEO)と会った。

パット・トムリンソン社長兼CEO
パット・トムリンソン社長兼CEO=2026年1月19日、スイス・ダボス、宮地ゆう撮影

トムリンソンCEOは息を切らせてホテルの部屋に飛び込んできた。「いまニューヨークから着いたところなんだ」。自分の部屋にも寄らず、取材の場に来てくれたという。ダボスでは分刻みでミーティングを入れている人が少なくない。

人材コンサルティングからみてAIはどう仕事を変えるのか。トムリンソンCEOは「職場でどのようにAIを使えばいいのかという従業員の懸念は大きく、最近の調査では、6割以上が昇給よりもAIの研修を受けたいと答えたほどだ」と言う。

今後、大きく変化する業界の一例に、ソフトウェア開発を挙げる。AIの進展で、プログラマーは自分で手を動かすことはなくなっていくだろうという。「プログラミング技術よりAIが作ったソフトを批判的に見る批判的思考が重要になる」。どの業界でも、AIを使いながら同じ仕事に、違ったアプローチをすることが求められるようになるという。自分の仕事に必要な専門性や技術などを見極め、どの部分をAIに任せるのか判断しないといけなくなる。

巧妙化するサイバー攻撃

この日最後に会ったのは、サイバーセキュリティー「チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ」のジョナサン・ザンガー最高技術責任者(CTO)だった。

ジョナサン・ザンガーCTO
ジョナサン・ザンガーCTO=2026年1月19日、スイス・ダボス、宮地ゆう撮影

生成AIの発展で、サイバー攻撃は守ることにも役立つ一方で、攻撃側も精緻になっているという。世界的なサイバー攻撃全体を見ると、中国からのものが最も多く、次にロシア、北朝鮮と続くという。最近さまざまなオンラインサイトなどで使われるAIチャットボットを悪用して、チャットボットと会話しながらデータを盗む手法も増えており、サイバーセキュリティーは知識のアップデートをし続けることが重要だ、とザンガーCTOは指摘する。

とはいえ、リソースや知識が少ない企業や自治体などはどうすればいいのか。「大手企業はある程度の対策はしている。迷ったら大手のサービスを選ぶというのが一つ」と具体的なアドバイスだった。