【1分でわかる】世界で問題化する職場ハラスメント 実は日本独自だった「パワハラ」
この記事は、朝日新聞(デジタル版)の連載「今さら聞けない」で、2024年8月12日に配信された記事を再構成してお届けします。本編はこちらから
1. 国際労働機関(ILO)がハラスメントを禁じる条約を採択
2. 海外は「同僚間」で問題化、日本は「上司から部下」の特徴
3. 日本の「パワハラ」は指導文化や採用方法などが背景に
4. 日本の 防止法には罰則なし。国際的には対応に差
1, 国際的な動き
職場でのハラスメントが世界的な問題として認識されるようになったのはこの20年ほどのことです。2019年には、ILOが職場での暴力やハラスメントを禁止する条約を採択し、2021年に発効しました。ただ、国によって問題となってきた背景は異なっています。
2, 用語の違い
日本では「パワハラ」という言葉が一般化しましたが、フランスでは「モラルハラスメント」、英国では「bullying」、ドイツでは「mobbing」と呼ばれます。英語、ドイツ語はいずれも「いじめ」を意味していて、同僚間での問題を指すことが多いとされます。「上司から部下」への指導に伴う「パワハラ」は日本独特の概念だといいます。
3, 日本はなぜ特徴的
日本でパワハラが問題化するのは、欧米のような「ジョブ型雇用」ではなく、新卒を企業内で育成する慣行があるため、上司に部下を指導することを求める文化が強く根付いていると指摘されています。日本では指導の中で、「どこまでやったらハラスメントになるか」と悩む人がいます。一方で、「いじめ」を前提と考える海外では「程度」の問題ではなく、本来職場であってはいけないものなのです。
4, 罰則は必要か
日本では2020年にパワハラ防止法が施行され、企業に防止策を義務付けていますが、罰則規定はありません。一方、フランスでは刑法で処罰対象となり、違反すれば拘禁や罰金が科されます。ただ、世界的に見ても、罰則規定は一般的ではなく、対応は国ごとに異なります。
職場でのハラスメント、特に日本では「パワハラ」が社会問題化していますが、雇用慣行の違いなどから、海外と単純に比較することはなかなか難しいものがあります。国際的な基準を参考にしつつ、日本独自の問題に即した防止策をどう進めるかが今後の課題ではないでしょうか。