1. HOME
  2. 【1分でわかる】「罰ゲーム化」する管理職? 若い世代がリーダーを避ける本当の理由

【1分でわかる】「罰ゲーム化」する管理職? 若い世代がリーダーを避ける本当の理由

1分でわかる○○ 更新日: 公開日:
illustration:kanehisa Kazuya

「将来は出世してバリバリ働きたい!」……そう思える人が、今の日本にはどれくらいいるでしょうか? 最近、管理職になることを「罰ゲーム」のように感じる人が増えています。20,30代の意識調査では、管理職になりたい人の割合は世界最低レベル。現場で輝いていた先輩が、昇進した途端に疲れ果ててしまうのはなぜなのか。「罰ゲーム化する管理職」(集英社インターナショナル刊)の著者で、パーソル総合研究所主席研究員・執行役員・シンクタンク本部長(当時)の小林祐児氏に読み解いてもらいました。

この記事は、朝日新聞GLOBEの特集「中間管理職 え、わたしが?!」の構成記事として、2025年5月16日に配信されたものを再構成してお届けします。本編はこちらから

ざっくり要点

1. 管理職になりたい日本人は約2割で、世界18カ国・地域の中で最下位
2. 働き方改革のしわ寄せや、多様な部下への対応が大きな負担になっている
3. 現場の専門スキルから離れることで、転職市場での価値低下を恐れる傾向
4. 1人の上司が見る部下の数は「7人」が限界。それを超えると機能しない

もっと知りたい

1. 「働き方改革」の皮肉なしわ寄せ

働き方改革が進んでいる職場ほど、管理職の負担が増えるという皮肉な現象が起きています。企業がコンプライアンスを重視し、一般社員を定時に帰そうとする結果、終わらなかった業務の「しわ寄せ」がすべて管理職に集中してしまうからです。日本には「飛んできたボールは誰かが拾う」という文化があり、夜間のトラブル対応などを管理職が1人で背負い込むケースが後を絶ちません。

2. 専門性の喪失とキャリアへの不安

 若手が管理職を避ける大きな理由は、自分の「専門性」が失われる恐怖です。例えば優秀なエンジニアが管理職になると、コードを書く時間がなくなり、会議や評価面談に追われるようになります。その結果、現場のスキルが衰えてしまい、いざ転職しようとした時に「部長ならできます」としか言えないような、市場価値の低い状態になってしまうことを危惧しているのです。

3. 「育てられない」という深刻な悩み

 後任が育たないことも、管理職を苦しめる要因です。今の若手には「失敗を避けたい」という傾向が強く、一方で上司側はハラスメントを恐れて厳しい指導ができなくなっています。本来なら「修羅場」を経験させて育てるべきなのに、過保護な「鳥の親子」のような関係になり、部下が巣立てない状況が生まれています。この育成の難しさが、さらなる人手不足と多忙を招く悪循環を生んでいます。

4. 日本独特の「入れ子構造」と限界 

日本の組織は、課長が部下を見ているのに部長も全員を管理しようとする「入れ子構造」になりがちです。1人の管理職が丁寧に向き合える部下の数は「7人」が限界とされていますが、中には数十人の部下を1人で見るという「無理ゲー」な現場も存在します。このような非効率なマネジメント体制が、新しい価値を生み出すための「創造的な仕事」に挑戦する余裕を奪っているのです。

記者のひとこと

管理職の負担を減らすヒントは「部下側の教育」にあるかもしれません。小林氏は、これを「キャッチボール」に例えています。管理職が大谷翔平選手のような豪速球(優れたフィードバック)を投げられるようになっても、受ける側の部下が素人ではキャッチボールは成立しません。上司だけにリーダーシップ教育をするのではなく、部下側にも「フォロワーシップ」の研修を行うことで、お互いのコミュニケーションギャップを埋める必要があるのです。

小林祐児氏(パーソル総合研究所提供)