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バルト三国ってどんな国? それぞれ言語を大切に ラトビア図書館で本のリレー

World Now 更新日: 公開日:
ラトビアで今の図書館が開館するとき、寄付された本を手渡しして図書館に移した「光の鎖」
ラトビアで今の図書館が開館するとき、寄付された本を手渡しして図書館に移した「光の鎖」(ラトビア国立図書館提供)

「バルト三国」はそれぞれ独自の言語をもち、他国の占領や支配下にあっても自国の言語を大切に守ってきた。そんな現場をラトビアの図書館に見た。

バルト三国はそれぞれ独自の言語をもつ。エストニア語はウラル語族で、湾をはさんだ隣国のフィンランド語と近い。ラトビア語とリトアニア語はインド・ヨーロッパ語族だ。それぞれ基本的にラテン文字を用い、ロシア語で用いられるキリル文字は使わない。ソ連時代はロシア語を使っていたが、自国の言語を大切に守ってきた。

「光の城」と呼ばれるラトビア国立図書館
「光の城」と呼ばれるラトビア国立図書館(ラトビア国立図書館提供)

ラトビアの伝統的な合唱曲に「光の城」がある。ラトビアの海に沈んだ城が、国の独立と共に海から姿を現す――。2014年に完成したラトビアの国立図書館は、川沿いに立ち、この歌詞をほうふつとさせることから、「光の城」と呼ばれている。

ラトビア語の本が1525年に初めて印刷されてから、今年はちょうど500年。6月初めに図書館を訪れると、特別展が開かれていた。「その本は焼失してしまって現存していないが、日記に記録があり、存在したとされている」と図書館の広報担当者、アンナ・ムフカさんは説明する。

長く占領されていた歴史を持つラトビアの人々にとって文字や本は特別な意味を持つ。「ソ連時代には本は検閲されていたし、図書館も施錠され自由に閲覧できない本が多くあった。そんななかで、詩は特に重要でした。詩人は行の背後に思いを込め、人々はそれを読み取ったのです」

今の図書館が開館するとき、人々から本の寄付を募った。その本は旧館に集められて、本を愛する人たちの手から手に渡りこの図書館に移された。「光の鎖」と言われた。「3000人必要だと見込んでいたが、当日は3万人が集まった。1月の土曜日で、マイナス15度と寒かったけど、青空が広がり、集まった人は皆うれしそうで、すばらしい日でした」

ラトビア国立図書館の内部(ラトビア国立図書館提供)

ムフカさんは言う。「読書は単に『読む』だけにとどまらず、文章の背後にある思想を理解し、批判的な思考力を育む。フェイクニュースが問題となる今だからこそ、読書の価値を再認識してほしいのです」。「リスタート・フォー・リーディング(読書再開)」というキャンペーンをしているのだという。