人道支援者や救援物資を運ぶ専用機があった 国連の世界食糧計画(WFP)がサービス提供

紛争地や難民キャンプなど民間機が就航しない場所に、人道支援活動に取り組む人や緊急物資を運ぶ。そんな役割を担っているのが、国連の世界食糧計画(WFP)が運航する航空便である国連人道支援航空サービス(UNHAS)だ。
国連職員のほか、NGOも所定の手続きを経て利用登録が認められれば、「国連ブッキングハブ」というシステムを通じてフライトを予約できる。国連カラーの水色をあしらったサイトで、アフリカ大陸の地図の中からケニアを選択すると、グラフィックが動いてケニアの地図が表示される。国内で就航する3路線が線で表され、飛行機のアイコンがゆっくりと動く。
予約時に路線ごとのフライトスケジュールや値段も確認でき、民間の航空会社の予約サイトと変わらない。英仏の2カ国語に対応し、スマートフォンやタブレット向けのアプリも用意されている。
UNHASがこのサイトで予約してくれたフライトに搭乗した。南スーダンとの国境に近いカクマ難民キャンプとナイロビを結ぶ便だ。
まだ日も昇らない朝5時すぎ、ナイロビのジョモ・ケニヤッタ国際空港にはUNHASへの搭乗を待つ人たちが集まり始めた。民間航空会社に並び、WFPのロゴとUNHASの文字が掲げられたカウンターがある。パスポートとEチケットを提示すると、チェックイン完了。「ボーディングパス」と記されたプラスチック製の板を渡された。
機材は白地にWFPの文字が水色で書かれた双発プロペラ機。乗客は国連関係者のほか、国内外のNGOスタッフで、ほぼ満員の35人が搭乗していた。民間機と違うのは、シートポケットにUNHASの活動報告が入っており、客室の壁面にUNHASのケニアでの活動を支援する国の旗が掲げられていることくらいだ。
1時間半ほどのフライトで直線距離で約600キロ離れたカクマ難民キャンプに到着する。赤土の滑走路に砂ぼこりを巻き上げて着陸すると、乗客は活動場所に散らばっていった。
同じ便に乗っていたジョセフ・ラスルさんは、カクマ難民キャンプで国際救済委員会(IRC)のシニア・フィールド・コーディネーターを務める。休暇を終えて、これから約2カ月間の任務に戻るところだった。「職員の移動の9割はUNHASに頼っているほか、緊急で必要な医療品の輸送にも利用している」と意義を強調する。
UNHASは主に人員輸送を担うが、貨物輸送を担うこともある。IRCの現地事務所で働くヘルス・マネジャーのケファ・オティエノさんは「先週、運営する病院で出産時の大量出血に対応するために、輸血用の血液を輸送してもらった。そのほか、精密検査が必要な患者の検体をナイロビの研究機関に運ぶこともある」と話す。
WFPでは、治安面や費用対効果から支援が困難だった遠隔地に、小型無人貨物機で食料や医療品を輸送したり空中投下したりする取り組みも進めている。2025年2月にはマダガスカルで本格的な運用を開始した。
求める人がいるところに、より効率的に、より安定的に人や物資を届ける。最新技術を駆使して、オペレーションや運送手段を磨き上げる努力が積み重ねられていた。