中国を中心に流行している新型コロナウイルス。アフリカ各国では12日時点で感染者は確認されていないが、感染を疑われるケースは続々と出てきている。ただ、医療体制が整っていない国も多く、検査結果が出るだけでも時間がかかっているのが実情だ。そんな状況を変えようと、アフリカに渡った日本人もいる。
「最大の懸念は、新型肺炎が我々のような脆弱な保健医療制度の地域に来ることだ」
ケニアのケニヤッタ大統領は2月上旬、訪問先の米国で演説し、自国や周辺国での感染拡大に危機感を募らせた。アフリカ各国の空港では検疫態勢を強化。ケニア航空とルワンダ航空は1月31日に中国・広州との直行便の運航を一時停止すると発表するなど、対策に追われている。
世界保健機関(WHO)も、感染防止に向けた優先順位が高い国として、中国人の行き来が多いアフリカのアルジェリア、アンゴラ、コートジボワール、コンゴ民主共和国、エチオピア、ガーナ、ケニア、モーリシャス、ナイジェリア、南アフリカ、タンザニア、ウガンダ、ザンビアの13カ国をあげ、警戒を強めている。
だが、医師が不足し、検査設備が整っていない国は少なくない。ケニアやエチオピアなどの政府は当初、感染が疑われた旅行者の献体を南アフリカに送付せざるをえなかった。検査結果の判明が遅くなれば、隔離施設の確保や隔離期間の長さが課題になってくる。
そんな中、安価で迅速な検査を広げようと、ケニアで起業し、活動しているのが嶋田庸一さん(33)だ。外資系のコンサルティング会社で製薬・医療機器関連の業務を担った経験を生かし、2018年2月に「Connect Afya」を設立した。
ケニアでは国外の機関に感染病の検査・分析を依頼するケースが少なくないが、ベンチャーキャピタルなどから出資を受けて、昨年4月に首都ナイロビに検査機関を開設。血液からDNAの抽出・検出を行う機械を導入し、現在は現地の医療機関から依頼されたHIVやインフルエンザなどの検査・研究を担う。
国外の機関に依頼するより3~4割ほど安く、より短期間で検査結果を出せるようにしたという。黒字化はまだだが、検査数は昨年4月の2件から11月には数百件に増加。隣国タンザニアからも依頼が入るようになった。
アフリカ大陸の人口は現在の約13億人から2050年にはほぼ倍増すると見込まれている。「人口が急増しているのに、ほとんどの国では医療体制の整備が追いついていない。すべての人に健康を届けるというのを理念にしながら、将来的には、新型肺炎のような新たな病気が流行した時に、即座に検査ができるようにしていきたい」と話す。