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特派員生活の最後は南アフリカから臨時便で36時間 気軽な移動ほど遠く

アフリカを旅する
8月30日、オランダから日本に向かうKLMオランダ航空の飛行機。エコノミークラスはがらがらで、ゆったりと座ることができた=石原孝撮影

私ごとで恐縮ですが、8月31日に日本の成田空港に到着し、3年余りの南アフリカ・ヨハネスブルク駐在生活を終えました。新型コロナウイルスの流行で取材が思うようにできない中での帰国となり、残念な気持ちはありますが、これから帰国を考えている方に少しでも参考になればと思い、臨時便の様子や帰国時の成田空港での検査の状況などを紹介したいと思います(帰国した8月31日時点です)。

南アフリカは31日現在で新型コロナの累計感染者数が62万人を超え、世界で6番目に多くなっています。7月24日には1日当たりの新規感染判明者が1万3944人になり、医療崩壊の懸念もありましたが、最近は千人台になる日もあるなど、ピークは過ぎ去ったとみられています。

ただ、南アフリカを発着する国際線の定期運航は3月末から停止したまま。日本に戻るためには、カタールやエミレーツ、ルフトハンザ、エールフランスなど、限られた航空会社が時折運航する臨時便を利用し、経由地まで向かうしかありませんでした。

8月29日、南アフリカ・ヨハネスブルクの国際空港内にある店の多くは閉店していた=石原孝撮影

乗り継ぎ待ち時間が20時間ほどあったり、利用するためには陰性証明書の提示が必要だったりするケースもあり、妻と幼い子ども2人がいる私が選んだのは、乗り継ぎ待ち時間が最も短い4時間15分で済むKLMオランダ航空でした。

大人1人分の片道のエコノミー料金は、約42万ランド(約26万円)。通常時の日本までの往復便よりも10万円前後高くなっていました。必要書類も多く、まずは南アフリカ当局向けに名前や連絡先などの情報をネット上で申請。現地の日本大使館にも連絡して許可証を取得します。熱やせきなどの症状がないことを示す書類も印刷して、必要事項を記入しました。

出国当日も簡単にはいきません。臨時便の出発時刻は8月29日午後1110分(現地時間)でしたが、空港に直接向かうことはできず、まずは航空会社が指定する集合場所へ。KLMオランダ航空の場合は、プレトリアにあるオランダ大使館に午後6時~6時半に集合。到着すると、受け付けを待つ他の乗客で100メートル近い列ができていて、中には大型テレビのような家電製品を持っている人も。日本人の帰国者に対応するために、日本大使館の職員も待ってくれていました。

8月29日、南アフリカのプレトリアにあるオランダ大使館前にできた臨時便利用者の列=石原孝撮影

受け付けを済ませて大型バスに乗り込むと、警察のパトカーに先導されて空港に向かいます。バスの中で待機する時間も多く、空港に着いたのは午後8時50分。やっとバスから降りられると思ったら、「手荷物を地面に置いて」との指示を受けます。

8月29日、南アフリカ・ヨハネスブルクの国際空港にバスで到着した後、道路に手荷物を置くよう指示された=石原孝撮影

普段の出国時に見たことはありませんでしたが、訓練を受けた犬が預け荷物や手荷物の臭いをかぎ、不審な荷物をはじき出していました。その後はいつものようにチェックインカウンターで荷物を預け、入国審査へ。免税店やお土産屋はどこも閉店し、唯一営業していた飲食店も満席。搭乗ゲートに午後9時45分に着いてベンチに座っていると、すぐに搭乗が始まりました。

後方の席を選んだ私の隣は運良く空いていましたが、エコノミークラスは7~8割程度、埋まっているように感じました。感染防止策としてマスクを二重にし、フェースシールドもしていましたが、なかなかの「密」の状態。客室乗務員が配っていた消毒液を念入りに指になじませ、会話は控えました。約11時間のフライトでオランダの国際空港に到着すると、景色は一変。マスクをしている人がほとんどでしたが、多くの免税店や飲食店が営業し、なんだかホッとします。

日本行きの便の乗客は50人ほど。日本人以外にも船乗りとみられる屈強な一団も乗っていましたが、エコノミークラスはがらがら。少しだけゆったりとした気持ちで、31日の午前8時15分ごろに成田空港に到着しました。

南アフリカなどは「入国拒否対象地域」(159カ国・地域が対象、日本国籍者は対象外)に指定されているため、帰国者は何人かに分けて呼ばれ、新型コロナの検査へ。梅干しとレモンの写真が貼られ、「酸っぱいものを想像してください」と書かれたスペースに立ち、唾液を容器に入れていきます。乳幼児など、唾液がうまく出せない場合は鼻に綿棒を入れる方式を採るそうです。検査結果が判明するまでの時間は混雑状況にもよるようですが、私が到着した際には「1~2時間程度」との説明を受けました。

その後、14日間の自主隔離場所などを確認され、期間中は外出を控えるように指示を受けました。「スーパーやコンビニでの買い物は、マスクを着用して短時間にしてください」とも言われました。

検査結果が出るまで、乗客は距離を空けて置かれたパイプ椅子に座って待機。飲料水やおかき、菓子パンも用意してくれていました。3年ぶりに食べた日本のおかきを堪能していると、検査結果が出た人から次々に番号で呼ばれていきました。

私は最後列で結果を待っていたのですが、午前10時20分ごろに無事に陰性結果が出ました。よく見ると、防護服などを着た医療関係者とみられる人が最後まで残っていた乗客と会話をしていました。「ひょっとしたら……」。そう思いましたが、感染するリスクを考え、確認はしませんでした。

8月31日、成田空港での唾液検査で「陰性」を示す紙=石原孝撮影

その後は、入国審査を経て預け荷物を受け取り。現時点では全ての国・地域から入国した人は公共交通機関を使えないため、歩いて隔離先となる最寄りのホテルに向かいました。15分ほどなら歩けるだろうと軽く考えていましたが、重い荷物を抱えていたため、すぐに後悔。じめっとした蒸し暑さで、体中から噴き出す汗。この日の最高気温は32度ほどで、日本が猛暑続きだったことを考えれば「まだまし」と言われそうですが、冬場の南アフリカから来た身としては、えらくこたえました。ホテルに着いたのは、南アフリカの自宅を出てから36時間後。シャワーを浴びた後にベッドに横になると、安堵と疲労で3時間近く眠り続けてしまいました。

厚生労働省は、入国時の検査について成田・羽田・関西空港で 9 月にも 1 万人超の検査能力を確保する方針を示しており、海外との往来は少しずつ増えていくとみられています。

ただ、成田空港の待機スペースは狭く感じられたので、より大きな場所の確保などは今後の課題かもしれません。また、たまたまだったのかもしれませんが、私が荷物を抱えて空港の出口に着いた時は、職員の方はほとんどいませんでした。入国者が多くなれば、間違って電車やバスを利用してしまう人も出てくるかもしれません。

成田空港に到着する際に記入を求められた書類。14日間の隔離場所などを記入した=石原孝撮影

南アフリカに残る日本人駐在員や一時的に日本に退避した人にとって気になるのは、いつ国際線の運航が再開されるかでしょう。現時点では、9月15日まで指定されている国家的災害事態の期間までにどこまで感染率を下げられるかが焦点になりそうです。 

ただ、ケニアやルワンダなど、空港再開時に新型コロナの「陰性証明書」を求めるアフリカの国もあり、以前のように気軽に訪れるのは当面の間、難しいと思います。

「最後の市場」とも言われてきたアフリカ大陸。新型コロナと厳しいロックダウン(都市封鎖)によって大きく打撃を受けた社会の立て直しをどう進めていくのか。特派員生活は終わりましたが、今後も見続けていければと思います。

*入国拒否対象国などの詳細はリンクを参照。