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南海トラフ地震に備える パチンコホールを避難所に 広い駐車場や景品の即席麺も活用

World Now 更新日: 公開日:
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)に合わせて約1週間、閉鎖された海水浴場=2024年8月10日、和歌山県白浜町、勝部真一撮影

南海トラフ地震は、今後30年以内に発生する確率が高まっている。各地で備えが進むが、パチンコ・パチスロホールを避難所に活用する動きもある。

静岡県から宮崎県にかけてのプレート境界を震源域とする南海トラフ地震。今後30年以内に発生する確率が1月、これまでの「70~80%」から「80%程度」に引き上げられた。

昨年8月、宮崎県の日向灘を震源とする地震を受け、気象庁が臨時情報(巨大地震注意)を出した。巨大地震で最大34メートルの津波が想定される高知県黒潮町が「高齢者等避難」を出すなど、同県内では計20市町村で避難所が開設された。

南海トラフ地震で最大44万人が避難所で暮らすことが想定される和歌山県も、24時間態勢で災害対策本部に職員を配置するなどの対応を取った。同県白浜町内の海水浴場4カ所が一時閉鎖された。

トイレカーとキッチンコンテナを配備

和歌山県は、能登半島地震直後の昨年1月5日から5月末まで、延べ7500人以上の職員を石川県に派遣した。支援にあたった避難所では「衛生的なトイレや、温かく栄養面に配慮した食事などが不十分だった」といった課題を持ち帰った。

昨年11月には県地域防災計画を修正。トイレカーの整備促進や、キッチンコンテナを使った食事の提供体制構築などを新たに盛り込んだ。「きれいなトイレと温かい食事があれば、災害関連死も相当防げるのでは」と知事の岸本周平さんは説明する。

県はトイレカーとキッチンコンテナを1台ずつ、年度内に配備する。また、国からの交付金で13市町村が導入を検討している。

和歌山件の岸本周平知事=2024年12月23日、和歌山県庁、天野みすず撮影

避難場所や物資拠点の整備 民間と連携

さらに民間との連携も進めている。その一つが、災害時にパチンコ・パチスロホールを避難所に活用することだ。多くのパチンコホールは大きな道路沿いにあり、駐車場も広く、景品にはカップラーメンなどの食料品もある。

県は2005年、南海トラフ地震への備えとして、約50のパチンコ・パチスロホールでつくる県遊技業協同組合と災害支援協定を結んだ。住民の避難場所や救援物資の保管場所にする。

公益社団法人「シビックフォース」と連携を進める考えだ。代表理事の根木佳織さん(48)は、企業や自治体、NPOなどの調整機能を担う組織として2009年に同法人を立ち上げた。

根木佳織さん=2025年1月20日、東京都中央区、天野みすず撮影

東日本大震災の後、パチンコホールが早期に営業再開したことに感銘を受け、災害時に活用できないかと考え、2022年から業界団体と協議を始めた。

能登半島地震では、物資が避難所にしか届かず、在宅避難者や車中避難者に行き渡らなかったという課題もあった。「パチンコホールを物資支援拠点にできれば、避難所以外の人にも行き渡るのでは」と期待を寄せる。