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災害に備える鍵は「調整役」 政府とNPO、企業をつなげ全国一律の支援体制を平時から

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2021年に再び大町町を襲った洪水で活動するNPOのスタッフたち=佐賀災害支援プラットフォーム提供
2021年に再び大町町を襲った洪水で活動するNPOのスタッフたち=佐賀災害支援プラットフォーム提供

災害に備えるには、セクターを越えて政府がNPOや企業とふだんから協力体制を築いておくことが不可欠だ。全国一律で実施できるほうが効率的かつ改善もしやすい。

備えあれば憂いなし。災害の備えは、事前にやってこそ意味がある。

佐賀県の大町町は2019年8月、記録的な豪雨に襲われた。被災地には2900人以上のボランティアやNPOが来て、掃除や物資配布、炊き出し、町職員と2人1組での各戸訪問など多くの活動をした。

2019年の大町町の豪雨災害で活動する人たち=佐賀災害支援プラットフォーム提供
2019年の大町町の豪雨災害で活動する人たち=佐賀災害支援プラットフォーム提供

佐賀県職員から同町の副町長となり災害復興にあたった三角治・県危機管理・報道局副局長は「本当にありがたかった」と振り返る。一方で、「最初はNPOやボランティアの支援に慣れておらず、詐欺ではと不安になったことも。しかし、信頼関係ができるにつれ仕事をお願いし、役割分担もスムーズになった」という。

この教訓から、災害に備え「NPOやボランティアとは普段から信頼関係をつくるのが大事」(三角さん)と、地元で被災地支援にあたるNPOの連合体である佐賀災害支援プラットフォーム(SPF)と、ボランティアの窓口である社会福祉協議会(社協)と三者で会合を始めた。1年に1度、県内の市町長と防災について協議をしていたが、その場にSPFも呼ぶことにした。

町は2021年に再び豪雨に襲われた。災害対策本部には最初からSPFが入り、全国から来るボランティアやNPOの窓口となった。コロナ禍には、検査で陰性の人にSPFのシールを貼ってもらった。住民にはシールを貼った人は検査済みと伝えた。「普段から顔の見える関係の地元の団体が調整役になるのはありがたい」(三角さん)

SPFの共同代表は、社会的企業や市民活動を後押しする佐賀未来創造基金理事長の山田健一郎さんだ。山田さんは「縁ができた自治体の中には協定を結んだところもある。災対本部にも最初から入るので双方の情報を共有できる。県庁の各部とも深いやりとりが可能になった」と語る。昨年から県とSPF、社協に企業も加わった。

三角治・佐賀県危機管理・報道局副局長(左)と山田健一郎・佐賀未来創造基金理事長
三角治・佐賀県危機管理・報道局副局長(左)と山田健一郎・佐賀未来創造基金理事長

政府もNPOも企業もそれぞれ強みがある。災害に単独で備えるよりも連携したほうが効果は何倍、何十倍にもなる。

鍵を握るのは橋渡しをする調整役だ。佐賀では地元のNPOが調整して、政府と企業、NPOが連携して災害に備える。県外からの支援にも地元のNPOが窓口となる。イタリアやA-PADと同じ構図だ。イタリアは市民保護局が全国の調整役、A-PADの場合は国境を越えた地域の安全保障にまで広がる。安全保障の基本は国民の命を守ること。防災も同じだろう。

災害が発生した際、イタリアのように全国一律で効率的な支援を受けるためには、中央の政府が統括すべきではないか。佐賀のように最初の災害の教訓を次に生かせた自治体は少数だ。被災する自治体は「初めて」のことが多く、「次回」が来る可能性は高くない。しかも職員は自らが被災者だ。イタリアのように国が主導し全国一律で支援を実施する運用制度があるほうが、反省を次回のための改善に生かしやすい。

そう、避難所に必要なのは「改善」や「進化」であり、不自由を辛抱する「我慢」ではない。石破茂首相は「防災庁」の設置を提唱し、TKBなどイタリアモデルにも言及している。災害への効果的、効率的な備えはこれからの日本に不可欠だ。