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韓国のパンダ人気に火を付けた名物飼育員 日常を動画配信、過ごした日々は映画や本に

World Now 更新日: 公開日:
韓国・ソウル郊外のテーマパーク「エバーランド」の飼育員、カン・チョルウォンさん
韓国・ソウル郊外のテーマパーク「エバーランド」の飼育員、カン・チョルウォンさん=2024年11月13日、韓国京畿道龍仁市、吉岡桂子撮影

「パンダじいじ」は中国だけでなく、韓国にもいる。韓国で初めて生まれたパンダの赤ちゃんとの日常を動画で配信したところ、人気が広がった。

「パンダじいじ」は韓国にもいる。ソウル郊外のサムスン系テーマパーク「エバーランド」の飼育員、カン・チョルウォンさんだ。2020年7月、韓国で初めて生まれたパンダの赤ちゃんフーパオ(福宝)との日常を動画で配信したところ、パンダ人気が広がった。

中国のスター誕生物語と似ている。コロナ禍+動画配信+飼育員との物語──。「木登りに奮闘する姿に励まされた」。ファンが書き込むコメントもそっくりだ。カンは言う。「自宅にこもって憂鬱(ゆううつ)な気持ちになっているとき、パンダの動画は気軽に楽しめて、なごめる。かわいい動物としてアップするだけではなく、私は『じいじ』として、ほかの飼育員も家族のような役割で接することで、ファンもその一員のような気持ちになってもらいたかった」

エバーランドのパンダ担当飼育員、カン・チョルウォンさん
エバーランドのパンダ担当飼育員、カン・チョルウォンさん=2024年11月13日、韓国・京畿道龍仁市、吉岡桂子撮影

ユーチューブのフォロワーは100万人を超え、アップして数分で50万以上のビューをたたき出すこともあった。フーパオとの日々を描いた映画「さよなら、じいじ」が制作され、著書「パンダじいじと宝ファミリー」は中国語に翻訳されて成都の熊猫書店にも並ぶ。

カンさんは2度目のパンダ担当だ。最初は1994年。中国との国交樹立を記念して、韓国に初めてやって来たつがいだった。だが、アジア通貨危機が襲う。国内は外貨不足に陥り、「パンダにカネをかけている場合じゃない」との批判が巻き起こった。わずか4年で期限前に返した。「別れるとき、似たパンダをいつか連れて来ると誓った」とカンさん。そんな物語もまた、ファンの心に響く。

それから18年が過ぎた2016年3月。韓国にパンダが復活した。フーパオの両親だ。私が初めて訪ねたのは、2年が過ぎたころ。行列はなかった。

ところが、再訪した2024年3月と11月、平日でも1時間近く待った。3歳を過ぎたフーパオが4月に成都へ旅立つ直前は、最長7時間近く待つ列ができたそうだ。成熟期が近づくと、どこで生まれたパンダも、所有権を持つ中国から「召還」される。それが、契約だ。

韓国生まれのフーパオ
韓国生まれのフーパオ=エバーランド・リゾート提供

パンダファンのグループ「フーパオギャラリー」の代表、ナ・ギョンミン(25)さんにソウルで会った。お金を出し合い、フーパオの誕生日を祝う広告をソウルの地下鉄駅に出した。人生、いや「パンダ生」を応援したい。そんな気持ちからだ。

成都で暮らす様子をネットで見て心配している。「元気がないようだ」「健康状況をきちんと公開してほしい」。中国大使館前で何度かデモをした。中国の李強首相の訪韓時を狙ったり、フーパオの好物ニンジンを模した着ぐるみのコスプレで臨んだり。「フーパオを守ろう」「しっかりケアしてほしい」。ニューヨークのタイムズスクエアの電光掲示板でも訴える動きが続く。

韓国で初めて生まれた赤ちゃんパンダ、フーパオが契約に従って中国に帰国した後、体調を心配してデモをした韓国のパンダファンのグループ「パンダギャラリー」のメンバー
韓国で初めて生まれた赤ちゃんパンダ、フーパオが契約に従って中国に帰国した後、体調を心配してデモをした韓国のパンダファンのグループ「パンダギャラリー」のメンバー=2024年5月、ソウル、ナ・ギョンミンさん提供

その返答かどうか明らかではないが、フーパオを管理する中国ジャイアントパンダ保護研究センター臥竜神樹坪基地は24年12月、こう発表した。「獣医師と飼育員が検査したところ、外見、精神、食欲も異常なし。今後もしっかり検査・観察を続けます」

ファンの手ごわい視線は国境を越えていく。