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広がる「パンダ推し活」でも対中感情は低迷 世界各地のパンダを訪ねた元特派員の思い

World Now 更新日: 公開日:
世界中のパンダを訪ね歩いている吉岡桂子記者=2023年12月、フィランド・アフタリ動物園
世界中のパンダを訪ね歩いている吉岡桂子記者=2023年12月、フィランド・アフタリ動物園

13年かけて、世界21の国・地域のパンダを訪ね歩いた記者が感じたことは──。

中韓のパンダブームの背景には似ているところがある。コロナで鬱々としていたときに、かわいい動画が配信されて、一気に身近なペットのような存在になった。家族や友だちみたいな関係でもある。

50年あまり「パンダ熱」が続く日本のファンにとっても、共感できる面はあるのではないか。元祖パンダ「萌(も)え」の日本でも、シャンシャンの登場は一つの画期と言える。パンダ全般に対する関心よりも固有名詞で呼ぶ存在として、より身近なものとなり、ネットを通じて同じファン同士でつながる。

日本生まれのシャンシャンは現在、中国のパンダ保護研究センターで暮らしている=2024年11月24日、雅安碧峰峡基地、吉岡桂子撮影
日本生まれのシャンシャンは現在、中国のパンダ保護研究センターで暮らしている=2024年11月24日、雅安碧峰峡基地、吉岡桂子撮影

会いたくなれば、動物園に行く。ファンにとって、パンダは会いに行けるアイドル。子供が生まれたり、結婚したり、外国へ行ったり、故郷へ戻ったり。物語にも事欠かない。ホワホワに会いに中国各地から駆けつける。

シャンシャンやフーパオを国境を越えて追っかける。お気に入りのパンダが食事に現れるのをじっと待つ姿は、まさにスターの「出待ち」のようだった。「推し活」は、日中韓でほぼ同時に広がる現象だ。

中国ジャイアントパンダ保護研究センター雅安碧峰峡基地に暮らす日本生まれのシャンシャンの展示施設前。日本からのファンが大勢いた=中国・四川省、吉岡桂子撮影
中国ジャイアントパンダ保護研究センター雅安碧峰峡基地に暮らす日本生まれのシャンシャンの展示施設前。日本からのファンが大勢いた=2024年11月24日、中国・四川省、吉岡桂子撮影

ただ、こんな調査がある。米ピュー・リサーチ・センターによると、韓国の対中感情は再びパンダが来た2016年以降、好転の兆しはない。中国を好ましく思わない人の比率を見ると、2023年は77%と10年前より27ポイントも悪化した。韓国の世論調査によると「嫌いな国」の筆頭は中国(2023年)。3人に1人が嫌いで、ここ数年で対日感情よりも悪くなった。

日本はどうか。内閣府の調査によれば、日本でも2010年以降、8割前後の人々が中国に親しみを感じていない。

韓国のファングループ代表のナ・ギョンミンさんは言う。「パンダは動物としてとてもかわいい。家族のように愛している。それと中国という国は別。むしろ、愛する動物を外交戦略に使うなんて、あざとい印象も受けます」

中国が「国宝」と呼ぶパンダは、中国の社会や中国と世界との関係を考えるアイコンになりうる。私は北京特派員だった2011年、上野動物園へ出発する直前のリーリー、シンシンを取材したことをきっかけに、13年かけてカタールからメキシコまで21カ国・地域にパンダを訪ね歩いた。

外交を担い、政治と一体のようでありながら、そうとも言い切れない。白黒つけられない、売れっ子グローバルアイドル。彼らが見た世界とは──。後編では、外交特使としてのパンダを追う。