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「三国志の聖地」を訪ね、四川料理を心ゆくまで堪能 中国人にも人気の街、成都

At the Scene 現場を旅する 更新日: 公開日:
「三国志の聖地」と呼ばれる「成都武侯祠(ぶこうし)」。劉備、諸葛亮、関羽、張飛ら蜀の英雄たちをまつった堂が並ぶ

三国志好きなら、一度は訪ねてみたいのが「成都武侯祠(ぶこうし)博物館」(①)だ。劉備、諸葛亮、関羽、張飛ら蜀の英雄たちをまつった堂が並び、「三国志の聖地」と呼ばれる。多くの人でにぎわっているが、堂の周りではみな歴史に思いをはせるのか、自然と口をつぐみ、静謐(せいひつ)な空気が漂っている。

博物館元副館長で、三国志研究の第一人者、譚良嘯(タン・リアンシアオ)さん(76)のお気に入りの場所は、土産物売り場の奥にある、竹林に囲まれた茶館。「ここは穴場で、いつも人がいないんです」。諸葛亮らを近くに感じながら、ゆっくりと本を読む時間が好きで、退職後の今も、よく通うのだという。

博物館に隣接する細長い通り錦里(②)は、成都名物の軽食店が連なり、熱気にあふれている。錦里の近くには、成都の見どころを巡るシャトルバス乗り場もあり、効率よく観光したい人におすすめだ。

街を歩いていると、唐代の詩人・杜甫の詩が書かれた看板を目にすることが多い。各地を流浪した杜甫は、759年から約4年を成都で過ごし、詩作に励んだ。そのときの住居を再現したのが杜甫草堂(③)。今に伝わる1400以上の詩のうち、240首以上がこの草堂でつくられたという。

昨年7月、成都に政治的緊張が走った。米中対立が高まる中、米国が知的財産の保護を名目に在ヒューストン中国総領事館を閉鎖。中国政府は「正当な報復」として、領事館路(④)の在成都米国総領事館を閉鎖させたのだ。成都の総領事館はチベット自治区を管轄し、その情報収集も重要任務だったとされ、中国西域の拠点都市・成都の存在感が改めて示された一件だった。

閉鎖された在成都米国総領事館。正門横の総領事館の看板は中国当局によってシートで覆われ、その上にパネルをかぶせる作業が行われていた=2020年7月

そして、成都の夜は長い。市内のあちこちにバーの並ぶ路地があるが、ひときわ人が多いのは玉林路(⑤)のバー街だ。人気歌手・趙雷のヒット曲「成都」の中で、別れた恋人と2人で歩いた玉林路を思う気持ちが切々と歌われている。この曲で若者たちの間で成都人気に火がついたとも言われる。ギターの弾き語りで紡がれる切ないメロディーは、情緒ある街並みにぴったり。曲を口ずさみながら、恋人たちがそぞろ歩きしていた。

「天府の国」の魅力を感じさせてくれる街、それが成都だ。

■街にあふれるパンダたち

成都の空港のお土産物売り場。主役はなんといってもパンダ

成都は「ジャイアントパンダのふるさと」。世界的に貴重な野生パンダの生息地と、世界最大規模の人工飼育施設「成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地」(⑥)を抱え、そう呼ばれている。街にはパンダのキャラクターがあふれている。タクシーのボンネットにはパンダが描かれ、道路脇にはパンダの案内板が立っている。

■オペラの秘技 変化する顔

古い歴史を持つ成都に伝わる「川劇(四川オペラ)」。ぜひ「変臉(へんれん)」の秘技を見てほしい。演者の顔の「くま取り」が、しぐさに応じて黄緑色から赤、濃緑と瞬間的に変わる。名人は25秒間に14種類の「顔」を演じるという。成都では、名物の火鍋をつつきながら舞台の川劇を楽しめるレストランが充実しており、夜になると、店内からは歓声と拍手が聞こえてくる。

四川料理に欠かせない「花椒(ホアジャオ)」がたっぷりかけられた陳麻婆豆腐。しびれる辛さがやみつきになる

成都を旅する人たちの楽しみと言えば、四川料理だ。「川菜」と呼ばれる中国4大料理の一つで、唐辛子や「花椒(ホアジャオ)」などの香辛料をたっぷりと使い、うまみあふれる辛さと舌がしびれるような「麻辣(マーラー)」味がやみつきになる。「成都はどんな店で食べても外れはない」と言われるが、観光客に絶大な人気を誇るのが「陳麻婆豆腐店」。麻婆豆腐の元祖とも呼ばれる老舗店で、市内各地に支店がある。

「担々麺」や「辣子鶏」「水煮魚」など、四川料理の定番が並ぶ中、一番人気はやはり麻婆豆腐。あつあつの石鍋でぐつぐつ音を立てながら運ばれてくる一皿は、花椒が多めで、においだけで食欲がそそられる。白飯にのせてかき込めば、いくらでも食べられそうな気持ちになる。食べ進めると、じんわり汗ばんでくる。梅ジュース「酸梅湯」のさわやかな酸味と甘みで口を潤せば、また一口、と、止まらないおいしさだ。(宮嶋加菜子、写真も)