大賞と入賞の計四つのエッセイには共通点があります。それは「私と世界のつながり」をつづる上で、筆者自身が行動したり、感じ考えたりしたことがベースになっているところです。
駆け出しの頃、先輩の記者からこう言われました。「文章力とは取材力。いい文章とはたくさん取材したかどうかだ」と。小手先の修辞に逃げるのではなく、事実を伝える記者の文とはこういうものだ、という姿勢がにじんでいました。
それ以来、この言葉を肝に銘じ、ねちっこい取材を心がけてきましたが、ネットやSNSなどを通じて誰もが情報発信できるようになった今、私が改めて思うのは「文章力とは自らの体験力」だということです。
語るべき何か、つづるべき何かを持っている人の文章ほど読ませるものはありません。その「何か」とは、その人自身の行動や、その過程における思考によって裏打ちされるものです。
私たち新聞記者は情報を過不足なく伝えるのは得意です。でもそのような文章は何だかトリセツのようであり、「体験力」に基づいた、「私」を主語とし、時に自らをさらけ出していくような文章の力強さには及びません。
また、募集時のコメントでも書きましたが、海外暮らしの経験や語学力を駆使して海外の人と上手にコミュニケーションすることだけが世界とつながっているわけではありません。たとえ「半径5メートル」の出来事であっても、そこから筆者自身が感じたこと、考えたこと、行動したこと、将来にどうつながっていくのかなどに、私は興味を持ちました。
グローバル化という言葉はやや手垢にまみれた言葉になっていますが、皆さんのエッセイを読むにつけ、グローバル化とは身近なところで起きているのだと改めて思いました。受賞者を含め、応募してくれたすべての方が、今後も「世界とのつながり」を楽しみ、貴重な出会いや発見の機会に恵まれるよう、祈っています。(GLOBE+編集長・関根和弘)