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身近にいる「自分とは違う」人に目を向けること。その想像力と勇気が遅すぎることはない

私と世界のつながり 更新日: 公開日:
女子大生のイメージ写真
写真はイメージです=gettyimages

「外れている」「合っていない」という思いをずっと抱えていた。小学校から高校までずっと。

地方の公立学校に通い、楽しい思い出はたくさんあるし、友達にも恵まれ、満ち満ちた毎日で幸せだった。だが、どこかズレを感じていた。自分と他のみんな、自分と取り囲む環境。

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それは、自分にとって最初の学校が、中国のインターナショナルスクールという環境だったことに起因するだろう。「私」と「世界」は、地元の子どもたちと比べて、ずっと早くにつながってしまったのだ。それゆえ、私が認知する世界の広さも、私が世界や異文化、他国の人に向き合う態度も、周囲と隔たりがあった。

でも、それを深く気にしたことはなかった。自分の心にどれだけ疑問や違和感があろうと、他者からは気づかれないように「同じ」に見えるように振る舞っていたら、気を遣って行動することが当たり前になっていた。

小さな違和感や、自分の中だけの想いは、簡単に無視できるのが私たちだ。無視したほうが、生きやすいのがこの社会だ。

当時「中国人」だとからかった同級生、「普通じゃない」と陰口を言い続けた女の子たち。彼らが、一人の子どもの心に重い石を投げ込んでいたことを知っているだろうか。自分の過去を恥じ、人と違うことを恥じ、小さなコミュニティに溶け込もうと頑張っていたことに気づいていただろうか。

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今になって気づいたことだが、そんな中でもずっと、私は多様性のある世界に憧れを抱いていた。色んな文化、人々に触れたくて、受験期なんてずっと海外旅行のYoutubeを観ながら、勉強のモチベーションにしていた。自分の地元が好きなのと同じくらい、ここではないどこかに行きたかったのだ。

そして大学進学。地方を出て、都会に行き、「国際」がテーマの大学を選んだ。様々なバックグラウンド、ルーツをもつ人たちに囲まれる生活にがらっと変化した。初めて、気を遣わなくていい環境に身を置いた。人と違うことを恥じずに、当たり前だと堂々と思えるようになった。自分が11年間感じていた違和感と窮屈さに真っ直ぐ向き合ってあげることができた。

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最近父に言われて、ハッとした。「きょんちゃんらしくなったね」。

そのたった15字以内の言葉に、救われた気がした、うれしかった。ずっと、無視してきたことだから。ずっと直視できなかったことだから。ずっと周りに合わせなきゃって概念にとらわれてきたから。

生まれて初めて「自分らしい」自分に胸を張って生きている。

「世界とつながる」とは、海外に行くこと、外国の人と直接会うことだけではない。

世界とつながるというと、「意識高い系」とか「特権」とかって考え、自分には関係がないと思う人もいるだろう。

海外に興味をもっている=日本に価値がないと思っている、と怪訝そうな顔を向ける人もいる。だが、それは違う。

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たしかに、窮屈だった。だけど、地元も当時の友達も私にとってはとても大切な存在だ。

家からだって世界とつながれる。Youtubeを通して旅行して、海外映画を鑑賞して、異国の料理に挑戦して、海外の友達と連絡をとって……。

そんなちょっとしたつながりが、世界とつながる小さな通気口が、取り囲まれた環境を打開して、私を救ったし、私を支えている。

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だから、ズレを感じている人に対して、「海外」や「世界」っていう言葉に対して、即座に反感を抱く前に、少し立ち止まってみてほしい。

人と違うことは必ずしも悪いことじゃないし、世界はあなたにとってもそんなに遠い存在ではないかもしれない。

世界が君を救ってくれることがあるかもしれない。世界とのつながりが君を支える一つの綱になるかもしれない。

だから、目を向けてほしい。君自身がもつ人とは違う「自分らしさ」に。世界で起こっていることに。身近にいる「自分とは違う」と思っていた人たちに。

その想像力と勇気が遅すぎることはきっとない。どんな形でも世界とつながっている人が一人でも増えますように……。

【プロフィール】
ペンネーム:かすみ草
知らない世界を見るのが大好きな女子大学生。いろいろな架け橋になること。
noteでも執筆中

半生が凝縮された文章

【講評】中国にもルーツがある筆者は幼い頃にインターナショナルスクールに通った経験から、周りの同世代の人より早く「世界」とつながることになりますが、その後通った公立学校では同級生のからかいなどに遭い、自らを「恥じる」ようにすらなってしまいます。再び自信を取り戻すきっかけになったのが、進学先の国際系の大学だったそうです。「世界とつながる」とは、「生まれて初めて『自分らしい』自分に胸を張って生きている」ことだと筆者が悟るまでの経緯は、筆者自身の半生がぎゅっと凝縮されているようで、とても読ませる内容でした。(GLOBE+編集長・関根和弘)