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「飲み会は男女差別の問題を象徴」日本の飲酒文化を研究したアメリカの学者が指摘

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ローズ・ハルマン工科大学のポール・クリステンセン准教授=秋山訓子撮影
ローズ・ハルマン工科大学のポール・クリステンセン准教授=秋山訓子撮影

シアトル生まれの彼が初めて来日したのは17歳の時。長崎県佐世保市であった英語のサマーキャンプでスタッフとして働いた。最終日の「打ち上げ」が居酒屋であった。みんなビールを注文し、クリステンセンさんも一緒に飲んだ。「それが僕のアルコール初体験です。米国ではIDを見せないと注文できませんから。店員は誰も僕の年齢を聞かず、日本の規制の緩さに驚いた。自販機でも簡単に買える」

以来、日本の飲酒文化に関心を持ち、大学院で日本社会と飲酒を研究。2007年から2008年にかけて東京に留学して居酒屋で9カ月ほど働き、アルコール依存症の人が集まる断酒会にも通った。

改めて感じたのは、日本は飲酒に寛容な国ということだ。「駅に吐いたもの用の掃除機があった。飲酒に対するインフラが整備されている」。酔ってホームから落ちないよう注意するポスターが貼ってあったのにも驚いた。「そこまでお酒を飲むな、ではなくて、ホームから落ちるな、と。いわば酔っ払うことが容認されている」。日本の治安の良さが、そういう「容認」が生まれる理由の一つかもしれない。

居酒屋で働いている時には、酒を飲んで酔うことが一種の「お作法」のようになっていると感じた。「まじめな顔をして飲み会にきた人たちが、乾杯してちょっと飲むとスイッチが入ったみたいにすぐ酔っ払ったようになる。でも、お会計になるとスイッチが切れてとたんにまじめに戻るんです」

米国は車社会のため、飲酒をしづらいという面もある。「春学期の終了パーティーにもビールが出ていたが、多くの人は車で来ているためほとんど飲んでいなかった」。さらに、若い世代は自分たちよりも飲酒する人の割合が少ないという。「彼らは上の世代にいろいろ不満を持っているが、飲酒やそれに伴うトラブルも、上の世代の問題の一つと考えているようだ」

また、米国には「hold your liquor」(酒にのまれるな)という言葉があり、お酒を飲んでも酔っている様子を見せるのは恥ずかしいことであり、酔っていないふりをするのが良いとされるのだという。「とりわけ男性にそれが求められます」

飲酒やアルコールは「男らしさ」と深く関係しているとクリステンセンさんはみる。男同士の飲み会は「オールドボーイズクラブ」という、男だけの暗黙のルールに満ちた「閉じた世界」だという。「日本では高度経済成長期のサラリーマンは飲み会で親睦を深め、そこで物事を決めていた。その場に女性はおらず、家事や子育てを担っていた。少なくなってきたとはいえ、今でも続いている。そういう男女差別の構造的な問題が、飲み会にも象徴されているのではないでしょうか」