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飲めるけど、飲まない 私が「ソバーキュリアス」を選んで得た時間

LifeStyle
店の名前を冠したオリジナルのノンアルコールカクテルを差し出す高橋弘晃さん=中川竜児撮影

1月半ばの午後2時、東京都千代田区の神田川沿いで、赤れんがの外観が目を引く「LOW-NON-BAR」が営業を始めた。ジャズが流れる店内には、重厚なカウンターと椅子が並ぶ。

売りは、ノンアルコールとローアルコールのカクテル。バーテンダーで店主の高橋弘晃さん(35)は「それで昼から営業してるんです。開店後すぐ満席になることもありますよ」。

きっかけは数年前、欧州の見本市で、店の経営者が、ノンアルのスピリッツのブースのにぎわいを見たことだった。「日本にも流行が来る」と2020年3月にオープン。コロナ禍に見舞われたが、21年夏に現在の場所に移り、営業を続ける。

客層は20~50代、中でも多いのが20~30代前半という。普通のカクテルも出すが、ほとんどはノンアルを注文。会話をゆっくり楽しむ。「大声を出す人もいないし、バーらしい、大人の社交場として理想の空間ができる。お酒を売ってきたバーテンダーとしては皮肉な面がありますが」と笑う。専門店はまだ少数だが、ノン・ローをメニューに採り入れる店は増えているという。

ノンアルコールカクテルのひとつ「ミセス・ネグローニ」。飲み応えのある味だった=中川竜児撮影

店を訪れた大学生の國井龍樹さん(21)は「飲まない生活」を送る。居酒屋でワイワイ飲むのは好きだが、コロナ禍でその機会もなくなった。酔っ払うと、その後何もできなくなる時1間がもったいないと、自分を磨く時間に充てようと考えた。週末は専門学校でデザインを勉強する。店ではノンアルのフルーツマティーニを注文。「雰囲気で酔える。当たり前ですけど頭はスッキリ、後に響かない」

横浜市の男子大学生(23)は飲めない体質。でも、「バーへのあこがれがあった」と、ネットで探して店を訪れた。「自分たちの世代は、酔っ払った姿をインスタなどにあげられると恥ずかしいと感じる」とも言う。

厚生労働省は週3日以上で1日1合以上飲む人を「飲酒習慣がある」とし、調べている。Z世代の最年長の人たちが生まれた1996年、20~29歳の男性だと36.2%だったが、2019年は12.7%。「ほとんど飲まない」「飲まない(飲めない)」は合わせて5割近い。

アサヒビールが売り出したアルコール度数0.5%のビアリー。若い世代に好評という=同社提供

メーカーも対応を迫られる。「お酒から離れていく世代にどうフォーカスしていくかが課題」とアサヒビールの新価値創造推進部の副課長、京谷めいさん。「若い人ほど職場の飲み会がストレス」「『自分時間』の質の向上を求めている」といった調査結果が得られているという。

20~30代は「少しの酔い」を求めるとのデータもあり、21年3月に発売したのが、度数0.5%のビアリー。100%ビール由来の原料を使い、味や香りに満足感を得られるよう試行錯誤した。売れ行きは好調で、同社は25年までに度数3.5%以下の商品構成比を20%にするという。