――上坂さんはZ世代とは、少ししか離れていませんが、ご自身の世代と比べて違いはありますか。
まず身の回りで感じることで言えば、Z世代にはドライな印象があります。少し前に、彼らの世代のなかで、「チル」という言葉が海外でも日本でも流行しました。ゆったり、リラックスしているような状態を指しますが、それに象徴されるように「ガツガツ頑張るってダサいよね」というのが全体的にあるかなと。
私はミレニアル世代に属するんですが、私が会社員になった頃には体育会系の文化がまだ一部残っていたんです。ガツガツ働こうとか、身を粉にして働くとか。でも、そういう文化や価値観はZ世代にはもうないと思いますね。
――海外では「woke」と呼ばれるなど「意識高い」と見られています。各種調査でも、人種差別や環境問題に対して関心が高い結果が出ているようです。
私たちの調査でも、世界的に見ると、Z世代は人権意識、社会意識、環境意識が高いという結果になっています。
ただ、日本はちょっと違っていて、環境問題とか人種問題はそれほど高くないんです。身近に感じづらいからでしょうね。環境問題であれば、発展途上国の方が意識が高くなっています。改善しないと生死に関わるという意識だってあるでしょうから、それと比べると、全然低い。
日本の場合、ジェンダーや平等の意識は高いですね。普段の生活で疑問を持ちやすいことがあるんだと思います。
やっぱり日常で問題を感じないと目覚めるわけもないので。海外だとブラック・ライブズ・マターとかの動きがあって、影響も受けるだろうし、SNSで情報として受け取り、共感することは大いにあると思います。日本の場合、例えば海外に何らかのバックグラウンドがあれば、そういった情報に触れたり、実際に活動している友達がいたりして、「目覚める」という流れになるんじゃないでしょうか。
――普通に日本に暮らす人は、情報に触れるのにワンクッションあると。
言葉の壁もありますから。ただ、平等意識は高い世代ですから、人種が混在するような社会になれば、すっとなじんでいくのかなと思います。そういうポテンシャルや素地はあると。
――日本のZ世代を特徴づけた出来事は何でしょう。
東日本大震災は、寄付をしたりボランティアをしたりといった行動の引き金になった体験だったと思います。他の世代よりも投げ銭やクラウドファンディングといったネットを利用した寄付・支援行為にアクセスするハードルも低いということもありますし。
――調査では、行動の面でも大きな違いが出ていました。
「抗議活動に参加したことがある」と回答したZ世代は世界全体では19%ですが、日本では1%でした。
――違いはどこから。
まずは国民性というか、日本特有の「他者の目を強く意識する」「はみ出さない」ということが強く影響していると思います。もう一つは、他国に比べると、日本のZ世代の人口は少ないんです。政治や社会のルールは上の世代、人口の多い世代にあわせて作られてしまっているので、自分たちの力や発信、あるいは選挙の投票でも、そういったルールや枠組みを変えられたという経験がないんですよね。
「どうせ変えられない」「変わらない」というあきらめにつながっている部分があると思います。
――意識高いZ世代と聞くと期待したくなりますが、あきらめですか……。
上の世代は都合良く、「Z世代が変えてくれるんじゃないか」と考えますけど、そう楽観するのは違うと思います。
やっぱり今ある社会的な課題というのは先行世代が残したものなんですよね。そのつけを背負わされたら嫌ですよね。Z世代は「なんで上の世代のつけを自分たちが払わなきゃいけないんだよ」と思っているかも知れませんよ。
――上の世代としてはどうすれば良いんでしょう。
どんな大人を理想としているかインタビューで聞きましたが、偉そうぶらずに等身大の本音を言う人、というのが共通でした。彼らの意識の高さをうまく行動につなげるには、まずよく話を聞き、発信しやすい環境作りをすることじゃないでしょうか。私もひとりの人間として、意見を受け止めるということを心がけたいと思っています。
うえさか・あゆみ マッキャンエリクソンシニアプランナー。世代分析レポート「TRUTH ABOUT GENZ」の日本版作成に携わる。歌人でもあり、2月に第一歌集「老人ホームで死ぬほどモテたい」を出版。