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「全米初」の男3人親が認められた家族 裁判所で審問、卵子提供者や代理母と協定 

World Now 更新日: 公開日:
(後列左から)イアンさんとジェレミーさん、アランさん。抱かれているのは(左から)娘のパイパーさんと息子のパーカーさん
(後列左から)イアンさんとジェレミーさん、アランさん。抱かれているのは(左から)娘のパイパーさんと息子のパーカーさん=家族提供

アメリカ・カリフォルニア州に、「男3人親」の先駆けとなった家族がいる。2017年に3人全員に親権が認められた当時、「全米で初めて」と言われた。いくつもの法的な手続きをへて、代理出産で授かった子どもの親になるという念願をかなえた経験を、本人たちが語った。

今年8月の夕暮れ時、サンディエゴの自宅を訪ねると、ふたりの子どもが電車のおもちゃやぬいぐるみを使って遊んでいた。

イアン・ジェンキンスさん(48)
アラン・メイフィールドさん(46)
ジェレミー・アレン・ホッジスさん(41)
パイパー・メイフィールドさん(6)
パーカー・メイフィールドさん(2)

イアンさんとアランさんが恋愛関係になったのは2003年。2012年に、ジェレミーさんが加わり「スラプル(3人カップルの意味)」になった。子ども好きで年下のジェレミーさんに背中を押され、3人は現実的に親になることを考えるようになった。

アランさんは「子どもは欲しかったけれど、難しいことだと思っていた。でもいろんな人に励ましてもらううちに、私たちは十分成熟しているから、もし自分たちの関係がうまくいかなくなっても、献身的に子どもを育てることはできると思うようになった。3人親が認められる自信はなかったけれど、動き出そうと思えた」という。

娘のパイパーさん(下)と息子のパーカーさん
娘のパイパーさん(下)と息子のパーカーさん=家族提供

イアンさんは「空手を子どもに教えていたとき、自分にも子どもがいたらなと思っていた。でも親になるにはハードルが高すぎて、膨大なお金をかけてまで努力しようと思えなかった。私たちの関係にジェレミーが加わったことで、心から親になりたいと思うようになった」と話した。

3人の思いに共感し、アランさんの幼なじみが卵子提供を申し出てくれたり、友人が代理出産を引き受けてくれたりしたのも後押しした。

裁判所で3人が親になる必要性を訴え

婚姻関係にない3人は、卵子提供、代理出産など、それぞれの過程でそれぞれが弁護士を立て、協定を結ぶ必要があった。

代理母出産の場合、子どもが生まれる前に誰が法律上の親かを定める裁判所の決定が必要になる。弁護士が裁判所に書面を提出し、裁判官が決定するという日常的な手続きなため、ほとんどの場合、両親は行かない。だが、3人の場合は前例がなかったため、弁護士の助言を受けて裁判所に行った。

手続きの際、3人が「出生証明書に全員の名前を書きたい」と伝えると、裁判官は消極的だったという。3人は泣きながら、親になる必要性を訴えた。3人が合法的に親になることで、子どもたちにとってどんな利益があるのか、具体例を挙げて説明した。カリフォルニア州法を読み込み、州法では親の数が定められていないことも指摘した。

イアンさんの代理出産の手続きに関わった弁護士のステファニー・カバレロさん(61)は、「裁判官はより多くの情報を必要としていたので、通常の代理出産ではあまり行われない審問を要求した。それは、3人それぞれが親になるべき理由を裁判官に伝えられる機会を設けるためだった。3人の訴えを聞いた裁判官は、法律上認めない理由はないと判断した」と当時の状況を話した。

(左から)イアンさん、アランさん、ジェレミーさんと第二子のパイパーさん
(左から)イアンさん、アランさん、ジェレミーさんと第一子のパイパーさん=家族提供

「大事なのは子どもにとって何がベストかということ。3人親を認めないことで、子どもに悪影響を及ぼすかどうかという議論に基づいている。3人が長い間、純粋な気持ちで親になりたがっていることは誰の目にも明白だった」と加えた。

イアンさんは「多大な労力と費用がかかったけれど、みんな平等に権利と責任をもちたかった。子どもたちが最高の人生を送るために正しいことだと思ったから」と話した。

全てをオープンに 愛していると言い続ける

4年後には、パーカーさんを代理出産で授かった。きょうだいで分かち合ったり、協力したりすることを学んで欲しかったからだ。3人は両方の出産に立ち会い、へその緒を切ったという。

パイパーさんとパーカーさんには、幼い頃からどのようにして生まれてきたかを説明している。「母親が誰か、どこから来たのかを知って欲しかったから、卵子の提供を友人にお願いした」(アランさん)

テネシー州に暮らす卵子提供者とは、定期的にビデオチャットで話す。年に数回、2週間以上ともに過ごす。今年6月は、みんなでアラスカにクルーズに行った。

子どもたちはイアンさんをパパ、アランさんをダダ、ジェレミーさんをダディー、卵子提供者をママと呼ぶ。

自宅のベランダからは、サンディエゴの町並みが一望できる。(左から)イアンさん、アランさん、ジェレミーさん
自宅のベランダからは、サンディエゴの町並みが一望できる。(左から)イアンさん、アランさん、ジェレミーさん=2023年8月17日、アメリカ・サンディエゴ、本間沙織撮影

アランさんは「代理母、卵子提供者、両親や友人……。幸せなことに私たちにはたくさんの協力者がいる。だから、子育てが大変だと思ったことはないんだ。3人分の収入があり、家事や育児の担い手が増えるという利点もある」と話した。ジェレミーさんは「家の中で男女の固定観念がないところが気に入っている。子どもたちには私たちの姿を通してどんな生き方だって出来ると伝えたい」と話した。

イアンさんは一度だけ、パイパーさんが友だちの母親に、親について聞かれているのを見たことがある。パイパーさんは、「私には父親が3人いて、母親は一緒に住んでいないの」と話していたという。

イアンさんは「私たちは全てをオープンにしている。カリフォルニアという進歩的な地域のおかげなのか、職場や子どもの学校で直接、否定的なことを言われたことがない。でもこれは『バブル』だと思っていて、いずれ批判にさらされるときもあると思う。私たちはこれからも全てをさらけ出し、何があってもふたりに愛していると言い続ける」と話す。

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