導電性と熱伝導性が高く、容易に加工できる銅は、産業に欠かせない。
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によれば、2000年の世界の銅消費量は1500万トンで最大の消費国はアメリカだった。その後、中国の消費量が桁違いに増えていき、2020年の消費量2500万トンのうち半分以上を中国が占めている。一方、アメリカや日本、韓国など、かつての主要消費国では緩やかに減少している。産業構造が第3次産業へとシフトしたことなどが背景にあるという。
埋蔵量は2022年で8.9億トン。2000年は3.4億トンだった。埋蔵量は開発投資が進み、新たな鉱山が発見されると増える。埋蔵量を年間の消費量で割って得られる「可採年数」は、35~40年。この数字は近年横ばいという。
新たな鉱山がどんどん見つかるなら心配ないかと言えば、そうではない。
一つには、銅鉱石の品位(含有率)の問題だ。鉱石には、銅以外の金属や不純物も含まれている。そこから銅だけを取り出し、濃縮して純度を高める必要がある。世界の銅鉱石の品位は低下しており、0.5~1%ほど。つまり、1トン掘っても、最終的には5~10キロの銅しか手元に残らない計算だ。
さらに近年、産出国で高まっているのが、「資源ナショナリズム」だ。自国の資源から得る利益を最大化しようとするのは自然な動きである一方、JOGMECの西海真理さんは「極端な政策や急な方針変更は供給懸念を招き、価格に影響する可能性もある」と指摘する。
最大の生産国チリでは今年、鉱山会社の税負担率を引き上げる法律が成立し、2024年1月から適用されることが決まった。当初案では会社の法人所得税などに対し、70~80%もの税率が検討されていたが、鉱業界の反対もあり、最高46.5%に落ち着いた。
日本の主要な鉱石輸入先でもあるインドネシアは、国内で一定水準まで製精錬処理し、高い付加価値をつけて輸出する政策を進めている。2024年春には国内に新たな製錬所が完成予定で、見込み通りに稼働すれば、国内で採掘した銅鉱石をほぼ100%処理できるようになるという。日本側は鉱石の輸入先を変えるといった対応を迫られることになる。
高品位の鉱山を抱えるコンゴ民主共和国やザンビアでも、税制や政権の不安定さを要因とする投資リスクが指摘されているという。