世界最大規模のスーパーマーケットチェーンであるアメリカのウォルマートは、従業員の研修にVR技術を導入している。
商品を店内に配置する方法などを事前に仮想空間で実践することで、それまでの研修よ
り業務に関する知識の定着率が高まった。
混雑する店内でどう商品を陳列し、客と触れ合うかを従業員が体感することもできるという。
この技術を開発したのは、2015年にアメリカで設立されたスタートアップ企業、ストライバー社。創業者のデレク・ベルチさんは、スタンフォード大のアメリカンフットボール部のコーチをしている時、VR技術を使ったトレーニング方法を開発した。
ヘッドセットをつけた選手が、映像の中の敵味方の陣形を把握し、状況に応じて適切な動きが何かを判断する意思決定のスキルを学んでいく。
実際のフィールドと近い体験ができ、効率的に戦術眼を磨くことができる技術は、アメフトだけでなくバスケットボール、スキーなど様々なスポーツの支持を得た。
これが、ウォルマートの目に留まったのだ。
ストライバー社によると、2018年にはウォルマートの全米4700店舗で採用され、100万人以上の従業員がVRによるトレーニングを受講したという。
進化するスポーツ選手のデータ分析やAI(人工知能)の技術は、ほかにも大切な活用の道がある。
例えば、プールの自動監視システム「ポセイドン」はカメラの映像データを解析し、プールの中の人が一定時間、動かない場合、おぼれている可能性があるとサイレンで警告し、救助をうながす。
五輪選手らの活動をサポートする独立行政法人日本スポーツ振興センターのハイパフォーマンススポーツセンターでは、トップアスリートたちのデータから得た知見を、市民の健康な体作りに生かせないかと模索する。
スポーツという分かりやすい「ショーケース」を入り口にした新技術。一般社会へ転用されるケースは、もっと増えていくかもしれない。