スポーツ動画の配信サービスをする「DAZN」。日本や欧州など200カ国・地域以上で展開するなか、2021年に女子欧州チャンピオンズリーグ(CL)と4年契約を結んだ。
さらに、英国、スペイン、日本など、世界の女子サッカーリーグの権利を買い集めている。
DAZNジャパンの松岡けい本部長は「当初は収益化ができるか、難しいところもあった」と振り返る。
事前に女子スポーツの市場調査をすると、回答の8割は「興味がある」。一方で「見る場所が分からない」という答えが多かった。
そこで「まず、見られる機会を増やした」と松岡。21-22年は女子欧州CLの全61試合をDAZNと並行してユーチューブで無料配信し、認知度拡大に努めた。
すると、22年5月、バルセロナ対リヨンの決勝は累積視聴者数が前年度比56%増の計360万を記録した。
スタジアムの風景も変わった。
準決勝第1戦のバルセロナ対ヴォルフスブルクの観客数は9万1648人、準々決勝第2戦のバルセロナ対レアル・マドリードは9万1553人。男子も含む22年の欧州サッカーの試合の1位、2位だ。
全米女子サッカー(NWSL)は昨年、総観客数が100万人を超えた。
CBSスポーツが流した10月のチャンピオンシップファイナルは、平均視聴者数が前年比71%増の91万5000人を記録した。
これらは男子のメジャーリーグサッカー(MLS)に匹敵する。MLSは昨年、米アップルと10年で25億ドル(約3250億円)の配信権契約を結んだ。
NWSLのCBSとの3年契約は23年で切れる。新たな契約は「男子並み」を軸に交渉が進むとみられる。
「アメリカでは、女子スポーツならサッカーというくらい人気。スポーツを見るのが文化にもなっている」と語るのは、11年W杯の優勝メンバーで、NWSLでプレーする川澄奈穂美選手(37)だ。
米国では365日24時間、サッカーに加え、テニス、バスケットボールなどの女子スポーツを配信するビジネスも立ち上がっている。
米調査会社ナショナルリサーチグループによると、米国での女子スポーツの中継などをめぐる権利は21年の3690万ドル(約48億円)から22年は4770万ドル(約62億円)に達した。
インドでは、女子のクリケットリーグが地元企業と5年間で95億1000万ルピー(約148億円)の放映・配信権の契約で合意。配信業者の争奪戦が、「適正価格」に近づける圧力にもなっている。