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女子サッカーの市場価値「男子並み」へ 配信ビジネスがひらく女子スポーツの未来

World Now 更新日: 公開日:
女子サッカーのワールドカップで初優勝し、トロフィーを掲げる「なでしこジャパン」の選手ら
女子サッカーのワールドカップで初優勝し、トロフィーを掲げる「なでしこジャパン」の選手ら=2011年8月、ドイツ・フランクフルト、上田潤撮影

スポーツ中継での配信サービスの成長は、女子スポーツも変える。最近では、人気の面で男子スポーツに匹敵するケースも出てきた。さらに、市場価値でも「男子並み」となる未来へ、サッカーがその道を切り開こうとしている。

スポーツ動画の配信サービスをする「DAZN」。日本や欧州など200カ国・地域以上で展開するなか、2021年に女子欧州チャンピオンズリーグ(CL)と4年契約を結んだ。

さらに、英国、スペイン、日本など、世界の女子サッカーリーグの権利を買い集めている。

DAZNジャパンの松岡けい本部長は「当初は収益化ができるか、難しいところもあった」と振り返る。

事前に女子スポーツの市場調査をすると、回答の8割は「興味がある」。一方で「見る場所が分からない」という答えが多かった。

女子サッカーW杯の日本―オランダ戦で 前半、同点ゴールを決める長谷川唯
女子サッカーW杯の日本―オランダ戦で 前半、同点ゴールを決める長谷川唯(左)=2019年6月、伊藤進之介撮影

そこで「まず、見られる機会を増やした」と松岡。21-22年は女子欧州CLの全61試合をDAZNと並行してユーチューブで無料配信し、認知度拡大に努めた。

すると、22年5月、バルセロナ対リヨンの決勝は累積視聴者数が前年度比56%増の計360万を記録した。

スタジアムの風景も変わった。

準決勝第1戦のバルセロナ対ヴォルフスブルクの観客数は9万1648人、準々決勝第2戦のバルセロナ対レアル・マドリードは9万1553人。男子も含む22年の欧州サッカーの試合の1位、2位だ。

全米女子サッカー(NWSL)は昨年、総観客数が100万人を超えた。

CBSスポーツが流した10月のチャンピオンシップファイナルは、平均視聴者数が前年比71%増の91万5000人を記録した。

これらは男子のメジャーリーグサッカー(MLS)に匹敵する。MLSは昨年、米アップルと10年で25億ドル(約3250億円)の配信権契約を結んだ。

NWSLのCBSとの3年契約は23年で切れる。新たな契約は「男子並み」を軸に交渉が進むとみられる。

「アメリカでは、女子スポーツならサッカーというくらい人気。スポーツを見るのが文化にもなっている」と語るのは、11年W杯の優勝メンバーで、NWSLでプレーする川澄奈穂美選手(37)だ。

川澄奈穂美選手
川澄奈穂美選手。2023年も米国のNWSLでプレーする=インフィニティ提供

米国では365日24時間、サッカーに加え、テニス、バスケットボールなどの女子スポーツを配信するビジネスも立ち上がっている。

米調査会社ナショナルリサーチグループによると、米国での女子スポーツの中継などをめぐる権利は21年の3690万ドル(約48億円)から22年は4770万ドル(約62億円)に達した。

インドでは、女子のクリケットリーグが地元企業と5年間で95億1000万ルピー(約148億円)の放映・配信権の契約で合意。配信業者の争奪戦が、「適正価格」に近づける圧力にもなっている。