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スポーツ配信の「宇宙戦争」の中で生き抜くには 日本の柔道界が始めたファンの開拓策

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新たなファンを開拓するため、全柔連の動画で対談した東京五輪金メダリストの阿部詩(右)と声優の伊藤彩沙さん
新たなファンを開拓するため、全日本柔道連盟の動画で対談した東京五輪金メダリストの阿部詩(右)と声優の伊藤彩沙さん=全柔連提供

Jリーグの独占配信権などを持つDAZNは1月、2年連続となる月額料金の値上げを発表した。

一昨年には1925円だったが、2月14日から3700円になる。Jリーグを見たい人は、ほかに選択肢はない。

DAZNジャパンの山田学副社長は「投資フェーズから収益フェーズに入った」と説明した。

昨年3月、サッカー日本代表がW杯出場を決めたアジア最終予選オーストラリア戦も、DAZNが独占配信。地上波の放送はなかった。

サッカーW杯のアジア最終予選、豪州―日本の後半、三笘は低いクロスに右足で合わせ先制ゴールを決める
サッカーW杯のアジア最終予選、豪州―日本の後半、三笘は低いクロスに右足で合わせ先制ゴールを決める=2022年3月24日、シドニー、伊藤進之介撮影


従来、スポーツが地上波でテレビ中継されることは、放映権料による金銭的な恩恵だけでなく、競技の認知度を広げて普及につなげるという意味があった。

これに対して有料配信の拡大は、視聴者層を「狭める」恐れもある。英国では国民的スポーツ行事は無料放送をすることが法律で決められている。

このバランスをどう取るかは、日本でも、政府や競技団体に課せられた大きな課題だろう。

その点、NFLはしたたかだ。

NFLはグーグルやアマゾンと契約を結ぶ一方、地上波のNBC、CBS、FOX、ABCやケーブル局のESPNとの契約も継続している。

盛り上がるNFLのスタジアム
盛り上がるNFLのスタジアム=2022年12月、米ボルチモア、塩谷耕吾撮影

全米で最も視聴者の多い「スーパーボウル」は、地上波局が持ち回りで放送する。

巨額の権利金を受け取りながらも、どこかに囲い込まれることなく、「広げる」機能を残す。圧倒的な人気、コンテンツ力を背景にした交渉力は、驚異的だ。

マイナースポーツはどうか。

日本の地上波局は今、スポーツ予算を絞っており、シビアな競技の選別が行われている。

費用対効果に厳しいネット配信業者も、マイナースポーツの受け皿にはなりづらい。ならば、と自前でメディアを立ち上げる動きがある。

全日本柔道連盟はユーチューブと連携し、選手のドキュメンタリーや大会のプロモーション動画を独自に配信。2022年は985万回の視聴数を記録した。

柔道男子73キロ級五輪連覇の大野将平
柔道男子73キロ級五輪連覇の大野将平。全日本柔道連盟はドキュメンタリーなども制作し、配信した=2021年7月、日本武道館、加藤諒撮影

日本クリケット協会は、日本代表の国際試合などを配信。インドなどに、数十万円で配信権を販売することもある。同協会は「大会が赤字にならないくらいの収益になる。拡大していきたい」。

こんな形の配信なら、放送に比べて「桁違い」に低コストで、自立のチャンスにもなる。コアなファンの期待にも応えるだろう。