Jリーグの独占配信権などを持つDAZNは1月、2年連続となる月額料金の値上げを発表した。
一昨年には1925円だったが、2月14日から3700円になる。Jリーグを見たい人は、ほかに選択肢はない。
DAZNジャパンの山田学副社長は「投資フェーズから収益フェーズに入った」と説明した。
昨年3月、サッカー日本代表がW杯出場を決めたアジア最終予選オーストラリア戦も、DAZNが独占配信。地上波の放送はなかった。
従来、スポーツが地上波でテレビ中継されることは、放映権料による金銭的な恩恵だけでなく、競技の認知度を広げて普及につなげるという意味があった。
これに対して有料配信の拡大は、視聴者層を「狭める」恐れもある。英国では国民的スポーツ行事は無料放送をすることが法律で決められている。
このバランスをどう取るかは、日本でも、政府や競技団体に課せられた大きな課題だろう。
その点、NFLはしたたかだ。
NFLはグーグルやアマゾンと契約を結ぶ一方、地上波のNBC、CBS、FOX、ABCやケーブル局のESPNとの契約も継続している。
全米で最も視聴者の多い「スーパーボウル」は、地上波局が持ち回りで放送する。
巨額の権利金を受け取りながらも、どこかに囲い込まれることなく、「広げる」機能を残す。圧倒的な人気、コンテンツ力を背景にした交渉力は、驚異的だ。
マイナースポーツはどうか。
日本の地上波局は今、スポーツ予算を絞っており、シビアな競技の選別が行われている。
費用対効果に厳しいネット配信業者も、マイナースポーツの受け皿にはなりづらい。ならば、と自前でメディアを立ち上げる動きがある。
全日本柔道連盟はユーチューブと連携し、選手のドキュメンタリーや大会のプロモーション動画を独自に配信。2022年は985万回の視聴数を記録した。
日本クリケット協会は、日本代表の国際試合などを配信。インドなどに、数十万円で配信権を販売することもある。同協会は「大会が赤字にならないくらいの収益になる。拡大していきたい」。
こんな形の配信なら、放送に比べて「桁違い」に低コストで、自立のチャンスにもなる。コアなファンの期待にも応えるだろう。