「桁違いの金額だった」
日本バレーボールリーグ機構(Vリーグ機構)の高田一慶事業企画部長は、2年前まで大手スポーツ専門配信サービス「DAZN(ダゾーン)」から得ていた配信権料を振り返る。
機構の損益計算書から推測すると、年間約4億円。収益事業の半分を占めていた。
Vリーグのネット配信は、2011〜12年シーズンにさかのぼる。
「当時はテレビ放映が最優先。配信権を収益化しようという認識はなかった」
動画配信サービス「ニコニコ動画」を運営するドワンゴに無償で配信権を譲り、徐々に配信する試合を増やした。全試合の配信を始めた14〜15年シーズンから、わずかな配信権料を得ていた。
潮目が変わったのは、15〜16年シーズン途中だ。DAZNからオファーがあった。
「配信権に大きな価値があることを認識した」。16〜17年シーズンからDAZNで全試合配信。下部リーグの試合も配信された。
だが、リーグ改革で試合数が増えた18〜19年シーズン以降、DAZNが配信する試合数が減り始める。
DAZNは配信や制作のコストを全て負担していた。視聴者数が伸び悩み、見合った収益を得られなかったのだ。20〜21年シーズンで、DAZNとの契約は終了した。
Vリーグはやむなく、21〜22年シーズンは自前に開設していた配信サービス「V.TV」で全試合を配信した。
当時の会員数は無料会員も含めて約6万人で、有料会員は2割ほど。開幕当初から、配信トラブルが起きた。会費を月額1400円(税別)と約1.7倍にしたが、苦戦は続いた。
「全試合配信には数億円の制作費がかかる。シーズンが終わると、途端に会員が減る。事業として成り立たなかった。自前でやっていくのは時期尚早だった」
そこで、今季はスポーツ中継・映像制作会社の「イージープロダクション」と契約を結んで配信権料を獲得。スポーツ専門配信サービス「V.TV イージースポーツ」として全試合を配信する。
イージープロダクションは、撮影や編集をリモート化、クラウド化することで、低価格の映像制作システムを実現。ほかにプロ野球の2軍、アメフトの関東大学リーグなど、規模の小さい団体の配信を担う。
日置貴之取締役は「格安でスポーツを映像化する。プラットフォーマーにのみ込まれるのではなく、各団体の自律的な運営の一助になればいい」と話す。
Vリーグは、海外のトップ選手も集う「世界最高峰のリーグ」を目標に掲げる
日本のバレーは国際試合での代表選手の活躍やSNSの発達、漫画やアニメの「ハイキュー!!」のヒットで、タイやフィリピンといった東南アジアでも人気を集める。
そうした状況をビジネスチャンスととらえ、展開する将来像を描く。「リーグの価値を上げれば、配信権を高く買ってもらえる」。生き残りをかけた模索は続く。