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「これは半端ない…」W杯「全試合無料中継」の衝撃 ABEMA責任者が語る戦略

World Now 更新日: 公開日:
サッカーW杯カタール大会の日本対スペイン戦後半、逆転のゴールにつながるクロスをあげる日本の三笘薫
サッカーW杯カタール大会の日本対スペイン戦後半、逆転のゴールにつながるクロスをあげる日本の三笘薫(左)=2022年12月1日、ハリファ国際競技場、金居達朗撮影

昨年のサッカーワールドカップ(W杯)では、ネットテレビ「ABEMA」での本田圭佑選手(36)の解説がSNSで話題を呼んだ。一方、配信ビジネスの世界では、ABEMAの「全64試合無料生中継」という決断が注目を集めた。その狙いと衝撃を、責任者が語る。(木村健一)

歴史的な勝利に沸いた日本-ドイツ戦。運営会社「AbemaTV」の塚本泰隆・スポーツエンタメ局長(35)は、視聴者がリアルタイムで書き込めるコメントを見ようとスマホを開いた。そして、驚いた。

「ダーダーダーとコメントのスピードが半端なくて。追いつけないほどだった。これは、ものすごい反響だと」

ABEMAでサッカーW杯中継の責任者を務めたスポーツエンタメ局の塚本泰隆局長
ABEMAでサッカーW杯中継の責任者を務めたスポーツエンタメ局の塚本泰隆局長=木村健一撮影

日本の1、2戦目があった11月21〜27日は、1週間の局全体の視聴者数が3000万人を突破。日本がスペインを破った12月2日には、1日の視聴者数が1700万人を超えた。ともに2016年の開局以来、史上最高だった。

「W杯という驚異的なコンテンツと世の中の期待値にテレビ朝日との連携。たくさんのげたをはいて、この数字になった」

AbemaTVは、サイバーエージェントとテレビ朝日が共同で設立。W杯中継では、テレ朝との連携が大きかった。

「アベマはサッカー中継のノウハウがなく、技術的な仕組みもない。テレビ局のノウハウは積み上げられ、すごさを感じた」

サッカーW杯でスペインに勝利して決勝トーナメント進出を決め、喜ぶ吉田麻也ら日本代表の選手たち
サッカーW杯でスペインに勝利して決勝トーナメント進出を決め、喜ぶ吉田麻也ら日本代表の選手たち=2022年12月1日、ハリファ国際競技場、伊藤進之介撮影

開局当初、社長の藤田晋が掲げた目標は、1週間の視聴者数1000万人。魅力的なコンテンツを買って一時的に視聴者を増やす「飛び道具」は使わず、バラエティーやドラマ、アニメにスポーツ、音楽、マージャン、将棋と番組を充実させ、4年目の19年に目標を達成した。

そして今回、さらに見てもらう呼び水にと、飛び道具のW杯中継を決めた。

W杯が視聴されたデバイスはスマホが43%、テレビ24%、パソコン24%、タブレット9%。視聴の種類別では生中継が56%、見逃し映像やハイライトを含めたオンデマンドが44%だった。試合の多くは日本の深夜帯で、視聴者は熱心なファンからライト層まで幅広い。

「いつでもどこでも何度でも見られる配信サービスには可能性がある」

サッカーW杯の日本ースペイン戦。日本が決勝トーナメント進出を決め喜ぶサポーターら
サッカーW杯の日本ースペイン戦。日本が決勝トーナメント進出を決め喜ぶサポーターら=2022年12月1日、ハリファ国際競技場、金居達朗撮影

今年1月1週目の視聴者数は昨年同期比で1.4倍とW杯後も底上げされている。

ここから月額960円の有料会員を増やしていけるか。

「新規や戻って来た方が見てくださっているのがW杯の価値。手応えはある」