カタール政府は「歴代でもっともコンパクトなW杯」と掲げ、8会場はほぼすべてが首都ドーハ近郊に集中している。最も遠い会場でも70km(おおむね東京~小田原)の範囲内にあるという。
ルサイル・スタジアム
12月18日の決勝の舞台となるルサイル・スタジアム(Lusail Stadium)は、首都ドーハの北約15kmの砂漠地帯にある計画都市ルサイルに建てられた8万人収容の大規模スタジアムだ。八つの中で最大規模を誇る。
建築設計は、イギリスの建築家ノーマン・フォスター卿が率いる「フォスター・アンド・パートナーズ(Foster+Partners)」が手がけた。
フォスター卿は、ロンドンの大英博物館のガラス屋根のグレート・コート(中庭)や、ドイツ国会議事堂のガラスドーム、アメリカのアップル新社屋「Apple Park」など、ガラスや曲線を使った未来的なデザインで知られる世界的巨匠だ。
同事務所の公式サイトで、スタジアムは「太陽の光を反射して輝く黄金の器」と表現されている。
アラブ・イスラム世界の文化とカタール伝統のランタンが織りなす光と影に着想を得たという。ファサードは三角形の開口が連なり、天井部は直径307mのスポークホイール型のケーブルネット式屋根が採用されている。
また、屋根などに最先端の素材を使うことにより、エネルギー消費が少なく、また砂ぼこりなどを寄せ付けない工夫が施されているという。
過酷な気候に対応、スタジアムに冷房システム
スタジアムのうち、大会閉幕後に解体予定の一つ(974スタジアム)を除いた七つのスタジアムには、ピッチや観客席の温度を下げる冷房システムを備えている。冷やす場所をスポットで設定できるため、環境負荷を可能な限り軽くでき、冬でも気温30度を上回ることがあるカタールの過酷な気候でも快適な環境を提供できるという。
また、W杯閉幕後、スタジアムの解体や規模縮小の改修にともなって出た座席の部品などは途上国のスポーツ施設などに寄贈される予定という。
ハリファ国際スタジアム
元々1976年に建てられたものをカタール大会に向けて改修。大会で唯一、新設ではないスタジアム。日本代表が初戦のドイツ戦と、第3戦のスペイン戦を戦う。収容人数4万人。
アハマド・ビン・アリ・スタジアム
同じ場所にあったアルライヤーン・スタジアムの建築資材の多くを再利用して建築された。日本代表が第2戦のコスタリカ戦を戦う。収容人数4万人。
974スタジアム
974個のコンテナを再利用して建築されたスタジアム。「974」は国際電話をかける際に使うカタールの「国番号」でもある。カタール大会後は解体される。収容人数4万人。
アルベイト・スタジアム
アラビア語で「家」を意味し、遊牧民が暮らした伝統的なテントがモチーフ。収容人数6万人。
アルジャヌーブ・スタジアム
外観の曲線は、カタールの経済を支えた木造の交易用帆船の帆をイメージしているという。収容人数4万人。
エデュケーションシティー・スタジアム
4万の座席の半分は、大会後に途上国のスポーツ施設に寄付される予定。
アルスママ・スタジアム
アラブの男性がかぶる伝統的な帽子ガフィヤ(gahfiya)がモチーフ。収容人数4万人。