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韓国ドラマ『ウ・ヨンウ』が覆す固定観念 彼女と社会、「おかしい」のはどちら 

現地発 韓国エンタメ事情
法廷に立つウ・ヨンウ弁護士
法廷に立つウ・ヨンウ弁護士(Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」独占配信中)

『ウ・ヨンウ』(全16話)は韓国ではマイナーなチャンネルENAで放送され、放送開始時の注目度は低かった。1%に満たない低視聴率でスタートしたが、回を追うごとに視聴率が伸び、第9話で15%を突破した。

人気の理由の筆頭は、主人公ウ・ヨンウのキャラクターの魅力だ。自閉スペクトラム症で人と目を合わせるのが苦手だったり、回転扉にうまく入れなかったり。食事は家でも外でもキンパプ(のり巻き)しか食べず、大好きなクジラの話を始めると止まらない。

挙動不審なかわいさを見せつつ、毎回斬新な発想で裁判の流れを変える「天才肌」だ。法令も判例も一度見たら覚えるという能力の持ち主で、ソウル大学ロースクールを首席で卒業した。

ある意味ファンタジーなのだが、ウ・ヨンウ演じるパク・ウンビンの演技力に惹きつけられる。1992年生まれのパク・ウンビンは現在29歳だが、1996年に子役としてデビューし、演技歴は長い「ベテラン俳優」だ。近年も『ストーブリーグ』『ブラームスは好きですか?』『恋慕』などのドラマで多彩なキャラクターを演じてきた。

ウ・ヨンウ周辺の人物たちも人気だ。特にウ・ヨンウを優しくサポートする法律事務所スタッフのジュノ(カン・テオ)と、ウ・ヨンウの能力を認め、変わった言動にも理解を示す先輩弁護士ミョンソク(カン・ギヨン)だ。ウ・ヨンウを無視したり、「特別扱いされている」と嫉妬したりする弁護士もいるが、おおむね周りの人たちは優しい。

ウ・ヨンウ弁護士(右)と法律事務所スタッフのジュノ
ウ・ヨンウ弁護士(右)と法律事務所スタッフのジュノ(Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」独占配信中)

ウ・ヨンウは毎話新たな事件を担当するが、それぞれ今の韓国社会で実際に起こっている問題だ。例えば第9話は「行き過ぎた教育」がテーマだった。ウ・ヨンウが弁護を担当するのは自称「子ども解放軍総司令官」、20代男性パン・グポン(ク・ギョファン)だ。塾へ向かうバスを乗っ取り、12人の小学生を山へ連れて行って遊ばせた。

弁護人としては被告の反省の態度を見せて減刑を求めたいところだが、パン・グポン本人は減刑を望まず、「子どもたちは今すぐ遊ぶべきだ」という主張を変えない。その主張にパン・グポンの母も、「被害者」である小学生の保護者も耳を貸さないが、ウ・ヨンウだけは真剣に受け止める。

ウ・ヨンウは「被害者」の小学生に直接会いに行き、「夜10時まで塾から一歩も出られず、何も食べられない」「塾ではトイレに行くにも許可がいる」という実態を聞く。夜10時過ぎ、コンビニでインスタント食品やおにぎりをせわしなく食べる小学生たちを目にし、パン・グポンが子どもたちを遊ばせたことに共感する。

一方、保護者は「塾での勉強は子どもの将来のため」と信じて疑わない。これが超競争社会の韓国の現実だ。小学生の頃から毎日夜遅くまで塾通いというのは、ドラマの誇張でも何でもない。

法廷に立つウ・ヨンウ弁護士(右)と先輩弁護士のミョンソク
法廷に立つウ・ヨンウ弁護士(右)と先輩弁護士のミョンソク(Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」独占配信中)

『ウ・ヨンウ』ではこの他にも、親に異性との結婚を強要される同性愛者、開発でコミュニティーを破壊される村人など、今の韓国社会が抱える問題をウ・ヨンウの曇りない目を通して指摘している。固定観念にとらわれ、現実が見えていない、あるいは見ようとしないのはウ・ヨンウ以外の健常者の方だ。

『ウ・ヨンウ』の脚本を手がけたムン・ジウォンは、映画『無垢なる証人』(2019)の脚本家でもある。『無垢なる証人』で事件の目撃者として証言台に立つ少女ジウ(キム・ヒャンギ)もウ・ヨンウと同じ自閉スペクトラム症を抱えていた。主人公の弁護士(チョン・ウソン)は当初ジウの証言は信ぴょう性に欠けると決めてかかるが、ジウと対話するうちにジウが特殊な能力を持っていることに気づく。

裁判のため、結婚式場で話を聞くウ・ヨンウ弁護士(右)とジュノ
裁判のため、結婚式場で話を聞くウ・ヨンウ弁護士(右)とジュノ(Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」独占配信中)

『ウ・ヨンウ』の韓国の原題は、直訳すれば『おかしな弁護士ウ・ヨンウ』だ。ムン・ジウォンは「おかしな人は多数の人を緊張させ、怖がらせ、問題を起こしもするが、私たちの暮らす社会を変化させ、豊かにして、よりおもしろい場所にしてくれる面もある」と述べている。

ウ・ヨンウ弁護士がどんな斬新な発想で韓国社会に変化をもたらすのか、最終回(8月18日放送予定)まで見届けたい。