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スニーカー大好き芸人アントニー、譲れないポリシーは「売らない」

World Now 更新日: 公開日:
アントニーさん
アントニーさん=川村直子撮影

ふだん、だれもが気軽に履いているスニーカーに注目が集まっています。実物がないバーチャルのスニーカーが高値で売り買いされたり、サステイナビリティー(持続可能性)の流れで環境保護に配慮したスニーカーが売れるようになったり……。ときには、転売サイトで投機商品のように扱われることもあります。 スニーカー人気が過熱する中、お笑い芸人として活躍するアントニーさんは、いつも純粋な「スニーカー愛」を各メディアで語っていることで知られます。スニーカーとの出会いは? なぜスニーカー沼にはまったのか? スニーカー大好き芸人に、たっぷり話を聞きました。(中川竜児)

――スニーカーとの出会いはいつですか?

原点は3歳のときです。アメリカ人の父親が、ナイキの「エアフォース1」を買ってきてくれたんですが、サイズが24か25で、さすがにブカブカだよ、っていうことになったんです。
ただ、それがやがて「イケてる」靴だったんだと、中学くらいの時にわかって、「格好良いのをくれたんだな」と感謝しました。

――中学のころは、ファッションとして注目したのですか?

最初はファッションとしてですね。はやってた音楽、ヒップホップとか、ロックとか、ミュージシャンの服装に目がいって。おっ、ナイキとかアディダスのスニーカーも格好良いなと。
彼らの着てる服は、結構高いものが多いけれど、スニーカーだったら、似たようなものを何とか買えるなと思いました。それで、どんどんどんどん好きになりました。

――今日は、個人的なエピソード、思い入れがある、お気に入りの3足をお持ちいただきました。

1足目は、中学の時に最初に自分で買ったエアフォース1のバレンタインモデルです。毎年ではないですが、2月にナイキが発売するモデルです。1万何千円かだったと思いますが、お年玉とお小遣いをためて買いました。

でも、学校に履いていったら盗まれてしまったんですよ。親にも怒られて、トラウマになったんですけど、その思い出があったから、昨年復刻したときに懐かしいなと久しぶりに買いました。

アントニーさん

いま僕は300足くらい持っていて、その中から選ぶのは悩みましたが、2足目はジョーダン5とストリートブランドのシュプリームのコラボです。

シュプリームが好きなのと、5が出た年は、僕の生まれ年(1990年)と同じなんです。見た目も好きで、プレミア価格で買いました。芸人になって、お金ももらえるようになって、買ったスニーカーです。

実は以前、テレビ番組のドッキリ企画で、体を銀に塗られるというのがあって、銀の塗料がこのスニーカーにもめちゃくちゃかかったんです。いまは、「もしかして今日はドッキリがあるかも」と思う日は、大事なスニーカーは履かないようにしています。

――ドッキリ番組の時、アントニーさんが何を履いているか見れば、「あ、もしかして予想してたかな」と分かるかも知れませんね。

分かる人にはわかるかも知れません。あれ、「普段いろいろ言っているのに、ローテクのスニーカーだ。今日、こいつ予想してたんじゃないか」と。

最後の1足は、ジョーダン1とラッパーのトラビス・スコットのコラボです。トラビス・スコットは音楽もファッションも格好いいので好きです。それがナイキとコラボして、しかもスウッシュ(ナイキのロゴマーク)を反転させているんですよね。

「GQ JAPAN」でやらせてもらっているスニーカー紹介のYouTube番組で、初めてロサンゼルスに行った時、色んなショップが並んでて、僕の履いている28センチのサイズで17万円だったんです。日本だと二十何万くらいするので、ちょっと手が出なかったんです。せっかくのロサンゼルスの思い出にもなるし、と。人生で一番、スニーカーにお金をつかった一足です。

――3足ともナイキですね。

今日はたまたまそうですけど、アディダスとかも、めちゃめちゃ履きますよ。アシックスも履き心地いいなあと思いますし。

――最近はコラボスニーカーがとても多いですね。

スニーカー好きの中では、アパレルブランド、ハイブランドとのコラボが注目されていますね。ディオールとナイキのとか、アディダスとプラダとか。

ハイブランドがスニーカーとコラボしているというのは、スニーカーカルチャーがメインストリームになってきました。

あまりにもスニーカーカルチャーが浸透して、スニーカーを履くことがステータスになってきて、ハイブランド側が歩み寄っている感じがあるように思います。

――ストリートカルチャーやストリートファッションは、メインストリームとは違うんだ、という主張もありますね。

ストリートカルチャーが認められたというのは僕はうれしいですね。でも、ストリートの良さがなくなると言う人もいると思います。ミュージシャンとかもそうじゃないですか。売れたら応援しなくなる人がいるじゃないですか。「インディーズのころがよかった」と言ったり。

でもやっぱ、世間のいろんな人たちに刺さっているのが正義だと思います。芸人という職業にも通じていて、確かに目の前の50人を笑わせるのもすごいですけど、日本中の人に知ってもらって、日本中の人に面白いよね、って言ってもらうのが一番だと僕は思います。

僕が20代前半くらいまでは、「スニーカー好きなんです」と言ったら、「ああ、スニーカー好きなんだ」という反応だったですけど、いまは「あっ、スニーカー、俺も好き!」とか「私も最近スニーカー好きなんです!」という人が増えてきてうれしいです。

アントニーさん

――いまは300足くらいお持ちということですが、自宅に置いているのですか?

自宅は200くらいだと思います。実家にもちょろっと置いていて、レンタルスペースにもちょっと。

6畳一間くらいのところに、僕は服も多いんで、アパレル、スニーカー、キャップとか、おもちゃとかポスターとかを置いています。自宅はリビングが10~11畳くらいなんですけど、スニーカーに侵食されて、生活スペースが4~5畳しかないんです。

――購入ペースはどのくらいですか?

まちまちですが、最低でも月2~3は増えていますね。2足にしておこうと思っているんですが、それでも1年で24足かあ。最近はスニーカーに関係するイベントなどの仕事もさせてもらっていて、いただくこともあって増えています。

――履きつぶすのですか?

いやあ、なかなか、ローテーションして履いていると。でも、300足持っているのに、なんで俺このスニーカー2日連続で履いているんだろうと思うこともあります。

――朝起きて、何を履くか迷いませんか。

迷いますね、めちゃくちゃ。その時間が楽しいという人もいますが、僕はああ、どうしよう、ああ時間ない、やだなと。前の日に決めておけば良いんですが、天気によって変わることもあるんで。

今日(このインタビューの取材日)も雨なんで、「これ(お気に入り)履くのやめようかな」と思ったりしましたけど、いや取材だからやっぱりなあ、と思ったり。

――スニーカー以外の靴はどれくらいお持ちですか。スーツ着なきゃいけない時はどうしていますか?

ブーツっぽいのと革靴で、7~8足くらいですかね。スニーカーに比べたら少ないです。スーツ着なきゃいけないときはちょこちょこあるんですけど、ドレッシーな格好するときにも、フォーマルにもあうスニーカーを選ぶようにしています。結婚式にはスーツにあうスニーカーを履いていきます。

この職業ですから、ちょっと枠をはみ出しても大丈夫かな、というのもあって。先日、相方の結婚式があって、ルイ・ヴィトンと(有名デザイナーの)ヴァージル・アブローがやった、ラグジュアリーな感じのスニーカーがあるんですが、それでいきましたね。

――革靴を履く機会はないですか?

生涯履かないでいければと。お葬式のときはちょっと難しいですが。スニーカーと同じように、芸人としても、メインの場にどんどん出ていきたいですね。

――ご自分でスニーカーを売ることはありますか?

ないですね。一回もないです。履くのが前提です。とは言っても、300足あれば、履いたことないスニーカーもあります。今後履いてくつもりですよ。

買うとすぐ履こうかと思うんですけど、周りに履いている人が多いとミーハーな感じがでるし、「今じゃないな、3年後、5年後とかにしよう」とか、そういうのも何足かありますね。
逆にそれやっていると、ちょうど復刻のタイミングが来たりして、「あ、これ買ってたわ」とか。

――ご自宅での管理に気を使っていますか?

どこまで関係あるかなと思う部分はあるんですが、冬も一応、リビングでは加湿器はたかないようにしています。だから、芸人という職業でのどと声が大事なのに、仕事でガラガラという時もあります。

でもやっぱ、「こいつらを守らなきゃいけない」という本末転倒なルールでして。革やゴムは湿度に弱いので乾燥させた方が良いらしいんです。本当は適度に履くのが一番と言いますけどね。

――タワーボックス(スニーカーを見せる収納ボックス)で保管していらっしゃると聞きました。先日の地震は大丈夫でしたか?

タワーボックスが天井までついているんで、つっかえ棒みたいに。逆に大丈夫という感じです。

――スニーカー好きとして、「ここだけは譲れない」というポリシーはありますか。

売らないということかも知れないですね。僕は買う側で、ビジネスをしたいとかいうことはないです。

――転売サイトの「StockX」などは過熱していて、投機目的で買って売ってという人もいるようですが。

やめてくれー、と言いたいです。普通に買いたいと思いますけど、ただ、スニーカーがそれだけ価値のあるものになって欲しいという人もいるから、何とも言えないですけどね。

ナイキさん、アディダスさん、数をもっと増やしてください、転売する人とかいなくなるんで、というのもありますね。戦略もあって、出し過ぎより、手に入らないようにというのもあると思うんですけど、メーカーさんがもっと出してくれたらなあ、と。

でもそうなると2次流通のところがなくなるし、いまが一番(経済的に)回っているのかも知れないし。難しいですね。

――いずれはスニーカーのデザインを手がけてみたいと思いますか?

スニーカーをつくるのはおこがましいんで、ソックスとかスニーカーの周りのものをデザインしてみたいです。スニーカーはハードルが高いし、楽しむ側でいたいんです。


■アントニー
 1990年生まれ。大トニーとのお笑いコンビ「マテンロウ」で活動している。アメリカ人の父親と、日本人の母親をもつ。ファッション好きとしても知られ、スニーカーを愛する著名人らを訪ねる「GQ JAPAN」のYouTube番組に出演している。