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おかあさんは「血の日」です 8歳の息子にいかに生理について伝えるか

子連れで特派員@ベトナム
休日の朝ご飯用にハムを焼くことになったわが家のポコ

在宅勤務にもよしあしがあるが、一番いいのは、帰宅時間を気にしないでいいところだ。当たり前ながら。出社して仕事をしていると、「おかあさんどこ?」というポコからの電話にはっとし、気づけばもう午後6時、ということがよくある。電車で家に帰り、ミカンを山のように食べておなかを満たしていたポコと、簡単なお鍋とか鉄板焼きなどで晩ご飯を食べる。お鍋は素晴らしい。豚肉や余った野菜があればすぐ作れるから。うどんも冷凍ぎょうざも素晴らしい。

母の帰宅を待ってポコが食い散らかしたみかんの皮たち

料理が得意なおとっつあんがいる日は手の込んだおいしい料理を作ってくれるが、私はここ数年なぜか料理をする気がまったく起きない。厚切りハムを買ってあったなと思い出し、「今日はハムステーキだよ」と言ったら、ポコに「おかあさんは料理が上手じゃないからでしょ」と言われた。頭にきたのでポコに自分でハムを焼かせた。料理はできる人がすればよい。料理が嫌いなおかあさんでもよい。

こういう日常からジェンダーを考えたとか、性教育をしようと思ったというわけではないのだけれど、ポコに、お風呂で女性の生理について話したことがある。私とお風呂に入るときに、びっくりしたり怖がったりしないようにしたほうがいいと思ったからだ。

「おかあさんはきょう血の日です」と切り出した。経血は血ではないともいうが、わかりやすく。そしてこう説明した。女の人はおなかの中で赤ちゃんができる人もいるよね。そのために、おなかの中に赤ちゃんを育てるためのベッドができます。赤ちゃんがこない時は、「じゃあ今回はベッドをかたづけるねー」って、用意したベッドがおなかからはがれてなくなります。それが血の日です。

「赤ちゃんのベッドが流れる日」という説明はとっさに頭に浮かんだものだったけど、後で、生理用品を販売するユニ・チャームのサイトをみたら、そこでは「子宮の中の赤ちゃんのおふとん」という解説をしていたので、大きく外れてはいなかったみたいだ。ポコはといえば「ふーん」と、いつものように聞いていない体だった。けがや、何か怖い血ではないのだとわかればそれでいい。

一定量の経血を吸収するというパンツ。フェムテックの一つとして注目されている商品だ

この出来事からほんの数週間後に、外出先のホテルでちょっと衝撃的な経験をした。トイレに置かれたクラシカルなゴミ箱に、「汚物入れ」と書いてあったのだ。ただそれだけ。でも、この文字を久しぶりに目にしたからか、単純にびっくりした。そうか汚物入れだ、学校のトイレにもあった。しかし、8歳のポコに説明した「赤ちゃんのベッド」のもつ温かさと、あまりにかけ離れた「汚物」という言葉。生理は汚らわしいものではない、と訴える運動が世界中で起きているのは知っているけれど、初めて胸に迫るものがあった。違和感。なぜ、こんなにも汚らしい感じのする単語がついてしまったのか。

なんとなく、仮面文化の取材をしたときに、大阪の国立民族学博物館館長の吉田憲司さんが話してくれたことを思い出した。ザンビアのチェワ族では、男性だけが「仮面結社」に入る。男たちは「女たちが出産を秘密にするから、俺たちは死を秘密にするんだ」という言い方をして、死者の葬送にかかわる仮面を作るのだという。ザンビアに限らず、女性のもつ出産の能力に対する、とてつもない恐怖というものを、世の男性は持ってきたのだろうか。だから「汚らしいもの」にした方が、都合がよい人もいたのかも……などと考えてしまう。

最近では、生理の困難を技術で乗り切る「フェムテック」が広がっている。最近私も、生理の周期や体調を記録しておくアプリを使い始めた。何年も生理と付き合ってきても、どうしても生理がいつ始まるか記憶できない私だが、47歳になってこのアプリを使い始めたのは、またちょっと別の理由だ。生理前や生理中はいらいらしやすかったり、落ち込んだり、疲れやすくなったりする。PMS(月経前症候群)ともいうが、更年期にさしかかったためか、症状が重くなってきた気がしていた。小さなことでポコを怒ってしまい、自己嫌悪におちいることも。「おかあさん、まだいらいらの日なの?」と、ポコに一昔前のおっさんのようなことを言われて、これはまずい、自分の体のリズムをきちんと把握しなければと思い立った。いつごろいらいらし、頭痛がし、だるくなるのか。心構えをしておかないと。

鈴木が使っているアプリで登録した生理中のある日の体調。この時期はふらふら、いらいら、甘い物が欲しかったことを記録した

昔のドラマや漫画では、何かに怒っている女性を見た男性が、「いらいらしてるね、アレの日かい?」とかいうジョーク(と思ってるやつ)を繰り出すシーンがよくあった。「いらいら=生理」というステレオタイプ、女性が怒っている理由を直視しない気持ち悪さ、つまらないワンパターンの大嫌いなせりふだった。「血の日」にぐでぐでの母親を見るポコ。将来もしも、友だちや彼女が、なんだか調子が悪そうだなと思ったらせめて、ああ、おかあさんのあの感じか、大変だねと思い出してよ。