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批判覚悟で交際するノルウェーのプリンセス

ノルウェー通信
ノルウェーのルイーセ王女のインスタグラムより

どこの国でも王室というのはホットなネタだ。ノルウェーは平等を大事にするからこそ、生まれながらにして恵まれた環境にいる者には厳しいのだ。ノルウェー王室といえば、ホーコン皇太子と結婚したメッテ=マリット皇太子妃が「波乱万丈なプリンセス」として日本を始め世界のメディアでよく取り上げられる。シングルマザーだった結婚前に皇太子と同棲していたり、麻薬パーティーに参加した過去があったり。しかし、涙ながらに国民に謝罪する姿が中継されたことなどを経て、今では人気がある存在だ。

一方、現国王ハーラル5世とソニヤ王妃の第一子として生まれ、王位継承順位が第四位のルイーセ王女が、現王室メンバーの中で今では最も「タブロイド」的で、王室で最も物議を醸す存在といえる。「王家の称号をはく奪すべき」という議論が出ては消えている。

詳細は以前の記事に書いたが、彼女はスピリチュアルな世界を信じており、死者と交流ができ、天使が見えるという発言もしている。インスタグラムでリンクされている交流サイトLinkzterに飛ぶと、自身のことを「ゲーム・チェンジャー」(これまで当たり前だった流れを一気に変える人のこと)とも表記している。ノルウェーでは日本以上に、霊界やスピリチュアルな存在を信じていると発言すると、変な目でみられる傾向がある。「霊感がある」というような発言は相手を選び、ノルウェーでは気軽に口にしない方がいいというのが私個人のアドバイスだ。

スピリチュアル発言で世間を騒がせていた王女だが、それがさらにエスカレートしたのが、当時の夫と離婚後に公表した新しい恋人の出現だ。しかもそれが、米国在住の霊媒師(シャーマン)だったので、ノルウェー国民は度肝を抜かした。

結婚の可能性が浮上?

2人はノルウェーで批判的に報道されやすいことから、他国のメディアや自分たちのSNSでよりオープンに話す傾向がある。11月になり、米国の雑誌ヴァニティ・フェアでのインタビューで、ベレット氏がすでに王女に結婚の申し込みを考えており、ノルウェー国王からも祝福されたと発言。ノルウェー中がびっくり仰天した。

しかし、王女はその後自身のインスタグラムで説明。インタビューはコロナが起きる前の2019年夏にされたものが今になって掲載されたもので、今なら言わないであろう発言も記事には含まれているとした。

だが、これにノルウェーのメディアがおとなしくしているはずはなく、王室の公式コメントを求める動きが起きた。王室の広報はコメントせざるをえず、「ルイーセ王女が誰と結婚するかを国王夫妻は決めない。それは王女自身の選択だ」とノルウェー公共局NRKに回答した

子どもの人生に口出ししない

日本と比較して、ノルウェーはもともと両親が子どもの人生の決定に関わることが少ない。「親が大人になった子どもの人生に口出しするのはおかしい」という考え方がもともとあること、また国王夫妻も、ソニア王妃が一般市民の出身で、結婚を反対されていた過去が有名なことから、優しい国王夫妻が娘の再婚に反対しなさそうなのは驚きではない。

自分らしく生きようとする王女を応援する声も

ルイーセ王女の交際を批判する声や、王室メンバーという恵まれた特権に対する自覚が薄いのではという指摘は常にあるが、彼女を応援しようという声もある。どれだけ恵まれた家庭で育っても、その家に生まれることは個人の選択ではないことから、世論の冷たい目を自覚しながらも、好きなものは好きなのだと素直に生きようとする姿勢が評価されている。この国では、本当は公にしたくないであろう個人の問題を社会問題としてオープンにする人を「勇気がある」「言ってくれてありがとう」と感謝する風潮があるからだ。

例えば、王位継承にまつわるジェンダーの問題がある。

「私は生まれた瞬間から『問題』だった。『あぁ、女の子だ。どうしよう』という雰囲気があった」。ルイーセ王女はそうINSIDERの取材で答えている。当時、ノルウェーの女性首相が男性だけが王となる伝統を問題視し、女王誕生の可能性を模索。しかし、女王になりたいかを問われた時、当時15歳だったルイーセ王女は当惑気味に「わからない」と答えた。弟のホーコン皇太子が次期国王になると決まった時は心の底から安心したと、ルイーセ王女は語っている。

北欧はジェンダー平等が進んだ国々として国際的にも評価されており、政界ではその動きが顕著だ。しかし、母のソニヤ王妃が結婚に際してバッシングを受けた歴史を知っているルイーセ王女は、最初の女性君主という責任ある立場を離れることで、自分は安心できたのだと隠さずに複数のメディアに答えている。

彼女が人生で受ける逆風は、ジェンダー平等を進めようとしながらも伝統や世間の目を気にするノルウェー社会の一部を反映したものでもある。ルイーセ王女は、それを壊そうとガラスの天井に向かうひとりの女性だ。批判されるばかりでなく、彼女が女性の活躍を応援するイベントにしばしば招待されるのはその証拠だろう。

コロナ時代に突入し、遠距離恋愛となったルイーセ王女と恋人が一緒にいる姿をニュースで見ることは少なくなった。だが、彼女を巡るスキャンダルはこれからも続くだろう。そしてその騒動はノルウェーという社会の変化にも否応なく影響を与えているのだ。