北欧と言えばジェンダー平等が進んだ国として有名だ。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2021」では日本は156カ国中120位。1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェー、5位スウェーデンなど、北欧諸国がトップで目立つ。
北欧の若い人たちは、性差別のない社会をめざす「フェミニズム」の考えをどのように学んでいるのか。
ノルウェーでジェンダー平等政策を推し進めてきた政党「左派社会党」の青年部(以下SU)のフェミニズム勉強会にお邪魔した。
首都オスロのトイエン地区の公園に集まった14~22歳の中学生・高校生・大学生たち。
党員歴が数年の人もいれば、まだ入党したばかりの人もいるため、まずは自己紹介が始まった。
■ジェンダー代名詞で自己紹介
「私はhun/henneの代名詞を使っています」(英語でいうshe/her)
「私はhan/hamの代名詞を使っています」(英語でいうhe/him)
という表現を全員が名前や学校名と一緒にノルウェー語で言っていた。
自分を呼ぶときに使ってほしい代名詞を周囲の人に告げる自己紹介は、ノルウェーの若者の間でも使われるようになってきた。
「フェミニンな格好をしていても、he/himで呼んでということもあるよ。誰もがここでは歓迎されていますよということを意思表示するため。この自己紹介の仕方はSUで浸透しています」と横に座っていた党員たちが教えてくれた。
「では順番に、フェミニズムから連想する言葉をどうぞ!」という質問で挙がったのは
「シスターフッド」「女性解放」「安心」「平等」「誤解されている」「正義」……。
「家父長制とはなにか」というおさらいをした後は、「あなたたちはなぜフェミニストなの?」という意見交換が始まる。
「誰もが同じ権利を受けるにふさわしいから」
「私は平等派だから」
「みんなが同じチャンスに恵まれているべきだから」
「平等は自然と達成されるものではないから」
■教室でみえてくるジェンダーロール
「ジェンダーロールの例を考えてみましょう」という時間ではグループで話し合い、さまざまな意見がでた。ジェンダーロールとは、性別で固定される役割のことだ。
「今でも女性ばかりが掃除や料理をしている」
「リーダーは男性ばかり」
「女性が怒ると非難されやすいのに、怒る男性は受け入れられている」
「教室では男子が子どもっぽいのはよしとする空気が変」
「教室で男子が片付けを手伝わないことが、なんとなく許されている雰囲気がおかしい」
「グループワークをしたときに、女子は影のまとめ役で、男子は発表して目立つ。『賢い!』と先生に褒められるのは男子」
「女子がするのは可視化されない課題ばかり」
「男子は褒められがちで、女子は『それくらいはできると思っていた』という評価を受ける」
「例え男女の割合が半々でも、先生は授業の3分の2の時間を男子に使う」
話はカミソリの話にもなった。
「女性用のカミソリは男性用のものより値段が高いのに、質が悪くてすぐに買い換えないといけない!」という複数の声には、驚いた男子から「どういうこと?」と質問がでる。女性向けの製品は男性向けのものより割高だという「Pink tax」(ピンク税金)の話にもうつった。
体験談は次々と出てきて、ジェンダー平等の先進国と言われているノルウェーでも、まだまだ課題が残っていることが伝わってきた。
「ノルウェーは平等先進国というけれど、おもちゃはまだピンク色・青色ばかり。女性は小さくて、背が低くて、毛が無いほうがいいと期待されるよね。それってまるで『子ども』を求めているような……。ペドフィリア(児童性愛者)みたい」という声もあった。
「全ての人が自由でない限りは、まだ誰も自由ではない」「法を変える以上のことをしなければいけないね」「国会の中からだけの行動で、家父長制は終わらせることはできない」と、若い党員たちは左派社会党の政策を実現していこうと決意を新たにしていた。
■最近の北欧ニュースの感想を聞いてみた
スウェーデンではロベーン首相が11月に辞任すると発表したばかりだ。実は北欧諸国の中で女性首相が唯一誕生していないのがスウェーデン。「ちょうどいいと思う。もう女性の首相が出ていい頃合い」とサラさん(21)は話す。
ビーチハンドボール欧州選手権の試合ではノルウェー女子代表が肌の露出が多いビキニの着用を拒否。米国ポップ歌手のピンクさんが罰金を肩代わりすると名乗りでて、女性が肌の露出が多いユニフォームの着用を強いられることが国際的に議論されるきっかけとなった。
「彼女たちが声をあげてくれて、よかった」「声をあげれば、変えることはできるという良い例だと思います」と評価したのは15歳のヤェンネールさん、リーアさん、リーナさん。
ノルウェーでは外見を修正・加工した写真を広告として使う場合は、企業やインフルエンサーは加工したことを示す表示が義務付けられる法が成立した。「法に賛成。SNSの勢いを考えてもインフルエンサーがこの動きに同乗することは必須」「私や周囲の友人で自分の写真を加工している人はいません。メンタルヘルスに悪いとわかっているから」「加工しないほうがいいロールモデルにもなると思う。どんな体をしていたって、素晴らしいんだから」とマーリさん(20)とテオドリーベッツさん(21)は話した。