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この服を着て何が悪い? 服装で批判される北欧の女性政治家(後編)

ノルウェー通信
雑誌『TRENDI』より許可を得てインタビュー記事全面掲載、撮影Jonas Lundqvist

素肌にジャケットを羽織ったフィンランド首相の写真が世界中でニュースとなった。

フィンランドのファッション雑誌『TRENDI』(トレンディ)10月号で表紙を飾ったサンナ・マリン首相(社会民主党)。世界最年少34歳の女性首相ということで、201912月に就任した当時は国際的にも大きなニュースとなった。

彼女が今回また注目を集めている理由は、胸元が大きく開いたジャケット姿の写真。雑誌の表紙写真ではないが、インタビュー特集のページで掲載されているこの写真が物議を醸すことになった。

「コロナ禍に首相としてふさわしい行動ではない」「セクシー過ぎていかがなものか」「首相がノーブラで」というような批判が巻き起こったが、彼女を支援する動きも発生する。

「#imwithsanna」(サンナとともに)というハッシュタグが付いた写真は111日時点で2674件投稿されている。投稿者の多くが首相と同じ格好をして、素肌に黒いジャケットを羽織り、胸元にはアクセサリーをつけている。

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Antakaa palaa 🔥🔥🔥 #imwithsanna #trendimag⠀ ⠀ Me Trendissä olemme seuranneet kuvianne ja lukeneet viestejänne ja kommenttejanne ilosta ymmyrkäisinä, ylpeydestä halkeilleina ja älyttömän voimaantuneina – kiitos 🖤. Päätoimittaja Mari Karsikkaan sanoin:⠀ ⠀ "Pian Trendin ilmestymisen ja kohun alkamisen jälkeen naiset alkoivat jakaa rintavaon paljastavia kuvia #imwithsanna-tunnisteella somessa. En ole varma, kuka ehti ensin, mutta ei ainakaan Trendi. Someilmiön synnyttivät yksittäiset naiset, joille Sanna Marinin parjaus riitti. Olen heille hyvin kiitollinen."⠀ ⠀ 👉🏼 Lue biossa olevan linkin kautta päätoimittajan koko kirjoitus siitä, mitä #imwithsanna-kohu on opettanut.

Trendi & Lily(@trendimag)がシェアした投稿 -

雑誌『TRENDI』の公式インスタグラム 首相を支持する人々の写真

雑誌『TRENDI』(トレンディ)のマリ・カルシカス(Mari Karsikas)編集長に、この写真のアイデアは誰がなぜ出したのかを聞いた。

「写真は編集部が出したアイデアです。仕事着としてではなく、ファッション撮影のシーンとして。他の女性雑誌と同じように、以前にも似たような写真の撮影はしたことがあります。ですのでこの写真自体は流行の流れの一環で、ファッション写真としては新しいものではありません」

「フィンランドの女性政治家には写真撮影のためだからといって、このような恰好をする人はいません。しかし、マリン首相は30代の1人の女性でもあり、30代の女性らしい恰好ができる人だと私たち編集部は信じました。マリン首相が年上の他の政治家と同じような恰好をする必要はないと」

「それにこれはファッション撮影であり、通常よりもファッショナブルなスタイリングになるのは当然のこと」ともカルシカス編集長は答える。

雑誌『TRENDI』より、撮影Jonas Lundqvist

 ――このような注目が集まることは予想していましたか?一連の議論をどう受け止めていますか?

1枚の写真にこれほどの注目が集まるとは、思っていませんでした。もし何かしらの意見がくるとしたら、不平等に関することだと思っていました。『なぜ1人の政治家のことだけを記事にして、全政党の他の女性政治家を特集しないのか』というような。ご存知だと思いますが、フィンランド議会にはたくさんの若い女性閣僚がいるので。でもこういう意見は結局きませんでしたね」

「編集部にきた意見は主に2種類ありました。写真を素晴らしいと評価するのは女性で、間違った服装だと評価するのは男性という傾向です」

「特定の女性雑誌に首相が時間を費やすのは間違いであり、取材に答えるのだとしても全メディアに同じように対応するべきだという意見もありました。でも、私はこの批判にはこう感じます。『女性政治家は女性雑誌に費やす時間はない』という考えをする人は、『女性は重要ではない』と考えているのかな、と。このような批判が巻き起こること自体が、女性の関心事は男性の関心事よりも価値が低いと思っている人が未だにいることの証明だと思います」

「もちろん、最も大きな疑問はこれでしょう。『首相がこのような恰好をしてもいいのか?』。私が思うに、服装で相手がどれほどプロらしいかが決まると思い込んでいる人がいるから、こういう疑問が出てくるのではないでしょうか。私はそうであるべきとは思いません。だから、世界中でマリン首相を応援したいと感じる人が出てくるのでしょう。外見で審査され、どのような言動をするべきかを他人に言われることに、もういい加減にしてと感じている女性たちがいることの証拠です」

「このような騒ぎになっていることは、同時に重要だとも思います。女性に対してダブルスタンダードが存在していることの現れですから」

――フィンランドではフェミニズムやジェンダー平等でまだまだやることがあると感じますか?

「他国と比べると、フィンランドでは多くのことが良い状態にあるとは思いますが、まだやるべき課題も多く残っていますね。いくつか挙げるなら、平等な賃金、育児休暇のシェア、より平等な育児休暇手当、それに家庭内暴力。フィンランドは、EU諸国内では女性にとって最も危険な国2なんですよ」

雑誌『TRENDI』より、撮影Jonas Lundqvist

人々が気にするのは、マリン首相の言葉ではなく外見だ

 「フィンランドでは女性政治家が歩む道はまだまだ狭いと感じています。インタビューでマリン首相はこう答えました。人々が気にするのは彼女が発信するメッセージよりも、彼女の外見だと。だから、いつも同じような服装や髪形にしているのだと。今回の写真の騒動で、彼女の言っていることが本当だと証明されてしまいましたね。男性の政治家も服装で批判を受けることはありますが、女性のほうがより批判されていると私は思います」

ここでふと考えてみたい。日本でマリン首相がニュースになる時、彼女の年齢や性別ではなく、政策に着目したものはどれほどあるだろうか? 

――フィンランドの男性政治家がマリン首相のような恰好をしたら同じような批判を受けると思いますか。

「男性でも女性でも、政治家がいつもとは違う恰好をしたら、フィードバックがくるでしょうね。多くのフィンランド人が今でも覚えているエピソードがあります。2014年に当時のアレクサンデル・ストゥブ首相が夏にショートパンツ姿で登場した時です。その時もたくさんの怒りのフィードバックがきていたので、男性政治家でも同じような状況に陥ることはありませすね」

このフィンランド首相たちの「首相らしくない身なり」をして「一部の市民を怒らせた」エピソードは海外メディアでも紹介されている。これまでの常識と伝統に「型どおりにはまりきれない」北欧の首相たちという見方もできるのだろう。

――今回の写真をきっかけに国際的に議論が巻き起こったことをどう感じていますか。

「この騒動は今でも人々が『プロとして職業には決まった格好がある』と信じ込んでいることの証明になりました。私たちは当然ながらこれについて話し合う必要があります。女性に対しても、男性に対しても、世界中でダブルスタンダードが存在していることの証明でもあります。そして同時に、もう沈黙しないぞという人たちがいることもわかりましたね」