「愛の不時着」の「耳野郎」キム・ヨンミン　出演映画が大好評

日本をはじめ世界で大ヒット中の韓国ドラマ「愛の不時着」で「耳野郎」チョン・マンボク役を演じたキム・ヨンミンが出演する映画「チャンシルさんには福が多いね」が9月、あいち国際女性映画祭で上映される。

「耳野郎」は、北朝鮮の盗聴係を指す。韓国の財閥令嬢ユン・セリ（ソン・イェジン）と北朝鮮の軍人リ・ジョンヒョク（ヒョンビン）のラブストーリー「愛の不時着」では、ジョンヒョク（ヒョンビン）の盗聴を命じられるが、盗聴するうちにジョンヒョクとセリの愛に気付き、葛藤する。いつも自信なく背中を丸め、おどおどしたマンボクが、殻を破る瞬間は爽快だった。ドラマのカギを握る存在でもあり、注目を浴びた。

演じたキム・ヨンミンは、「韓国のゴールデングローブ賞」と呼ばれる「百想芸術大賞」のテレビ部門と映画部門の両部門で助演男優賞にノミネートされたが、テレビ部門は「愛の不時着」ではなく、その後に出演した「夫婦の世界」のソン・ジェヒョク役、映画部門は「チャンシルさんには福が多いね」のレスリー・チャンと言い張る男役でのノミネートだった。

惜しくも受賞は逃したが、二つの部門で同時にノミネートされること自体が快挙と言える。

「夫婦の世界」のジェヒョクはふてぶてしい浮気男の役で、マンボクとは正反対のキャラクターだった。韓国では「愛の不時着」の最終回が2月、続いて3月から「夫婦の世界」の放送が始まり、二つの全然違う役をそれぞれ好演したキム・ヨンミンへの関心がますます高まった。ジェヒョクは会計士として裕福な生活をしていて、視聴者の間では「耳野郎、出世したね」などとSNSで話題になった。

さらに3月に韓国の劇場で公開されたのが「チャンシルさんには福が多いね」。新型コロナウイルス感染症が広まり、劇場にほとんど観客がいなかった時期だが、2万7千人を超える観客を動員し、独立映画としてはまずまずの興行成績だった。

「百想芸術大賞」では、キム・ヨンミンが助演男優賞にノミネートされたほか、主演したカン・マルグムが新人女優賞を受賞、キム・チョヒ監督が新人監督賞にノミネートされるなど、興行以上に評価の高さがうかがえた。

「チャンシルさんには福が多いね」は、映画プロデューサーの主人公チャンシル（カン・マルグム）が、突然監督が死亡したことにより失業するところから始まる。キム・チョヒ監督はホン・サンス監督作のプロデューサーを務めた経験があり、自身の経験を土台に脚本を書いた。

キム・ヨンミンは、チャンシルの前に現れる「幽霊」を演じた。幽霊と言っても全然怖い幽霊ではない。白いランニング姿で、自分はレスリー・チャンだと言い張る。「欲望の翼」に出てくるレスリー・チャンの格好だ。

観客としてもおかしくて吹き出したが、俳優陣も現場で笑いをこらえるのに必死だったそうだ。キムは「低予算の映画なので撮影に時間をかけられない。がんばって笑いをこらえたけど、やっぱり吹き出しました」と話す。

キムは「見た目が中華圏や日本の俳優っぽいと、よく言われる」と言う。レスリー・チャンにも似ていると言えば、ちょっと似ているような気もする。キムは「欲望の翼」を見直して、「レスリー・チャンがどういう動きをしていたのか研究した」と言う。

親しい俳優の家で家政婦をしたり、その俳優のフランス語の家庭教師に恋心を抱いたり。悩めるチャンシル。レスリー・チャンもどきの幽霊はチャンシルの前に現れては励ましたり、慰めたり。何より、チャンシルに映画愛を思い出させる役割を果たす。キムは「監督の情熱がつまった作品。チャンシルというキャラクターも本当によく考えたと思う」と話す。

あいち国際女性映画祭は9月3～6日。「チャンシルさんには福が多いね」の日本での劇場公開は来年1月の予定。キムは「日本での公開時にはコロナがある程度おさまって、日本の観客の皆さんに会えればうれしい」と話す。