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チキンが食べたくなる「愛の不時着」

現地発 韓国エンタメ事情
「メロが体質」で嫌がる俳優にPPLのチキンの食べさせようとするハンジュ(左)

「チキン食べに韓国行きたい!」

そんな声を最近よく聞くのは、日本でも大人気の韓国ドラマ「愛の不時着」の影響らしい。韓国では昨年12月から今年2月にかけてtvNで放送され、その後ネットフリックスの配信を通して米国や日本をはじめ世界で人気を集めている。

チキンといえば、韓国ではフライドチキンか、フライドチキンに味付けしたものを指す。国民食とも言われるほど、本当によく食べる。特に新型コロナウイルス感染症が広がるなかで、宅配の代表メニューとして普段以上に注文が増えているという。

bb.qの黄金オリーブチキンとクリームチーズボール=成川彩撮影

「愛の不時着」に出てくるのは、「bb.q」という韓国最大手のチキンチェーンだ。東京の渋谷区笹塚にもオープンし、「そこでチキンを食べながら『愛の不時着』について語るのが人気」という話も聞いた。

ところで、ドラマの中でこれでもか、というほどbb.qチキンが出てくるのは、PPL(間接広告)だ。PPLは、Product placementの略だが、韓国ドラマを見ていると、特定の商品が分かるように食べたり飲んだり、使ったりというのがよく出てくる。

「愛の不時着」では、北朝鮮から韓国へやってきたリ・ジョンヒョク(ヒョンビン)がユン・セリ(ソン・イェジン)の家で宅配チキンを一緒に食べたり、リ・ジョンヒョクを追って来た北朝鮮の軍人がチキンの宅配アルバイトをしたりと、いろんな形で登場した。実際、ドラマ放送期間中にbb.qの売り上げが70%急上昇したというニュースを見ると、効果はあるらしい。

「愛の不時着」で韓国のチキン屋でアルバイトをする北朝鮮の軍人=画面キャプチャー

私も日本のドラマファンに刺激され、自宅近くのbb.q一山湖公園店に行って、ドラマにも出てきた「黄金オリーブチキン」と「クリームチーズボール」を買って、公園で缶ビールと共にいただいた。後で気付いたが、一山湖公園店は、「愛の不時着」の撮影が行われた店舗の一つだった。自宅近くで撮影していたとは。

「愛の不時着」の撮影が行われたbb.q一山湖公園店=成川彩撮影

チキンのPPLで最も印象的だったドラマは、チョン・ジヒョン、キム・スヒョン主演の大ヒットドラマ「星から来たあなた」だ。韓国語でビールは「メクチュ」だが、チキンとビールの組み合わせを「チメク」と言う。主人公たちがたびたびチメクを楽しむ姿が登場し、チメクブームを巻き起こした。そういえば「星から来たあなた」に出てくるチキンもbb.qだった。「星から来たあなた」と「愛の不時着」のシナリオは、同じパク・ジウン作家による。

「愛の不時着」ポスター

PPLは、ドラマを見る側としては、「また広告か」とうんざりすることもあるが、作る側としては貴重な収入源であり、いかに話の腰を折らずに商品をPRするか、というのは悩ましい部分だと思う。PPLをめぐるドラマを作る側の葛藤がそのまま出てくるドラマもある。昨年8~9月に放送されたJTBCドラマ「メロが体質」だ。このドラマ、脚本・演出をイ・ビョンホン監督が手がけた。イ・ビョンホン監督といえば、昨年映画「エクストリーム・ジョブ」で観客数1600万人を超える大ヒットを記録して注目を浴びたが、「メロが体質」は意外に視聴率は伸び悩んだ。コメディーとしても秀逸だが、ドラマ作りそのものがドラマになっているのが、個人的には興味深かった。

「メロが体質」の主人公イム・ジンジュ(チョン・ウヒ)は新人のドラマ作家で、スター演出家ソン・ボムス(アン・ジェホン)と共にドラマを作る過程が描かれている。さらにジンジュの親友ファン・ハンジュ(ハン・ジウン)はドラママーケティング会社に勤めており、PPLを売り込む側の立場だ。演出家に邪魔者扱いされるのは日常茶飯事。ドラマの中でPPLのチキンを俳優に食べてもらうはずが、「太るから嫌」と泣き出されるなど、苦労が尽きない。チキン=太るという露出の仕方でPPLとして大丈夫なのか?とも思ったが、「おいしい、おいしい」と連発されるよりは好感が持てた。

PPLをどう演出するのかは、作り手の力量だ。「愛の不時着」はそういう意味でも、成功したドラマだったようだ。世界では韓国ドラマ人気の影響でチキン屋が増えているというが、ますます拍車がかかりそうだ。