ホワイトハウスに新たな住人がやってきてはや数週間。みなさんはいかがお感じだろうか。どうも、何をしでかすかわからないお方である。今現在から、この原稿が読まれるまでの間にも、ルクセンブルク侵略やら北朝鮮との貿易協定締結やら、ひょっとするとやりかねない。
衝動的で過度に神経質、思い込みが激しく、激情の気があり、自制心は欠落、狭量で好戦的……に映るこのトランプ大統領、はたして、見るからに太りすぎである。大統領職としては建国以来初の症例だろう。日本の首相には太った人物が存在しただろうか?
人間は食べたものでできている。上記の諸症状の原因は彼の食習慣にこそ潜んでいるかもしれない。ここは一つ、ドクター・ブース※に徹底解剖させてほしい。
報道によれば、トランプはファストフードをこよなく愛している。ハンバーガーにフライドチキンにピザ。肉は赤身、特に「トランプステーキ」なる自社ブランド肉(純米国産、よって非オーガニック)をよく食べ、よく焼くらしい(発がん性物質に黄信号!)。
かつてマクドナルドのテレビCMに出演したこともある。デザートには特盛りのチェリーバニラ味のアイスクリームがお決まりだ(大統領専用機の手荷物制限にひっかからないといいのだが)。太りすぎが健康にもたらす悪影響はさておき、この手の食生活は血糖値を乱高下させる。ハッピーで分別ある人間のそれではない。
あの人物も下戸だった
では古今東西世界の指導者たちはどうだったのか? 国の指導者には、ガンジーのようなベジタリアンが理想かもしれない。米国の歴代大統領をみれば、ニクソンの好物だった「カッテージチーズとパイナップルのケチャップがけ」は彼の人柄や評判を物語るし、ジョージ・W・ブッシュが窒息死の危機に見舞われたプレッツェルもまた、彼の「知性」を明らかにする。オバマは食事にも自制心を発揮、昼食はたいていサンドイッチで、ブロッコリーさえ好んだ(パパ・ブッシュは嫌悪していた)。クリントンはヴィーガン(卵も肉も食べない菜食主義者)だが、それもここ6年ほど。任期中はビッグマックの投与で生きながらえた。大統領の嗜好は実にさまざまだ。
トランプが酒を飲まないという事実を、せめて喜ぶべきだろう。「トランプがドランク」では、いよいよお先真っ暗だったはず。一滴も飲まない現大統領が愛飲するのはもっぱらダイエットコークである(通常のコーラよりいいのかはわからない)。しかし、飲まない指導者こそ望ましいとも限らなそうだ。
英国元首相のチャーチルはスティルトンチーズと牡蠣、ローストディナー(肉やイモ、プディングなどの伝統的フルコース)にアイスクリームを愛する美食家として名高いが、今でいう「高機能アルコール依存症」でもあった。シャンパンを一日1本、それも朝から飲んでいたが、そう致命的なことでもない。ロシアの元大統領エリツィンに流れる血の半分はウォッカだったが、彼こそがソ連の自由で開かれた一時代を築き上げたのだし、一方でフランス前大統領サルコジは、ワインすら飲まないまま、もっとも国民に愛されなかった大統領として任期を終えた。
そしてトランプ同様、飲まない指導者がまだいることにお気づきだろうか……。名を、ヒトラーという。
(訳 菴原みなと)
※私、オンライン不動産セミナー「トランプ大学」で博士号を取得。非常に良心的なことに150ドルでとれた。