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コロナで国連の活動現場も変化 新たな価値観を取り入れた新しい時代の予感

世界どこでも住めば都、国連職員ニョコボク日記
道端でみかけたフラフープのようなものをもってソーシャルディスタンスをとっていたセネガル人

リモートワーク(自宅勤務)生活が10週目に突入しました。国連世界食糧計画(WFP)は3月18日から、事務所のスタッフ全員、看護師と医師を除く全員が自宅勤務、事務所に行く必要がある時は上司の特別許可を得なくてはならないようになりました。全ての出張、外部のワークショップは中止、ミーティングは全てオンラインベースですので、私も自宅勤務期間が始まってから事務所から衛生用品(マスクと消毒ジェル)が支給された時と必要書類のプリントアウトをしに行った二回以外事務所には足を踏み入れていません。

先週月曜日に全事務所のスタッフを対象にしたミーティングがありましたが、「リモートワークでよかったことは?」の問いかけに「交通渋滞にまきこまれることがない」(首都であるダカールの交通渋滞は近年悪化する一方で、自宅から20キロにある事務所に行くのに1時間半以上かかることがあったり、帰りのラッシュでも同じく毎日のように渋滞に巻き込まれることが多い)や、「仕事の生産性や効率があがった」といった自宅勤務の副産物を指摘するポジティブな声も多く上がりました。

農作業の前後もちゃんと手を洗いましょう。(WFPチャド提供)

ミーティングの司会をした事務局長が「この一か月でExpertになったことを教えて下さい」のお題を投げかけた時は、てっきりみんな仕事的な面のスキルを答えるのかと思ったら、「料理の腕があがった」、「子どもとの時間の使い方」「ガーデニング」など家事の腕を上げたと報告するスタッフが多く思わず笑ってしまいました。コロナの“せいで”変更が余儀なくされた生活の中で、今までやってなかったり、やっても十分できなかったことができて仕事面だけでなくプライベートも大きく影響があったということですね。

もちろんいいことばかりではありませんし、問題点も共有されましたが、スタッフ会議の基本的な姿勢として、問題点に焦点をあてるのではなく、よい点を話し合った後に、問題解決の糸口を一緒に探っていく、というアプローチはグループワークでとても有効だなと思いました。

作業前にベロニカバケツで手を洗う(WFPチャド提供)

あと確かに、自粛生活がそこまで大変に感じないのは、アフリカの生活ではよくある「広いアパート」や「お手伝いさんの存在」のほか、「アフリカならではのお互いを助け合える生活環境」もあると思います。電話やネット、Zoomで人とのコミュニケーションは問題なくとれていますし、数カ月前の引っ越しと同時に光ファイバーにして、インターネットが格段に速くなったのが幸いしました。

生活空間と仕事場が同じだとどうしても時間管理が難しくなってしまうので、私はバルコニー前のスペースに「ミニ職場」を作って、子どもはオンライン幼稚園(これもZoomで)以外の時は立ち入り禁止のルールにしました。ミーティング等がなければ早めに切り上げて娘の勉強をみたり、ピアノの練習をしたり、家事をしたりします。

娘の幼稚園は週3でオンラインで実施。算数、フランス語、英語をやっています

食事の担当は夫、片付けは私です。普段ソマリアで2か月ごとに仕事で留守にする夫と普段は週5で幼稚園に一日いる娘と、休暇以外で今までこんなに長く丸一日家族で時間を過ごすことがなかったので、最初どうなるかと心配(!)しましたが、役割分担とか自分の時間の配分や使い方に一か月もするとだいぶ慣れてきました。娘は同じマンションに住むちびっこと週3くらいで遊びますし、週3でオンラインで幼稚園があります。先ほどのスタッフ会議でも「コロナのあとにやりたいことは?」に「そのままリモートワークを週数回でもいいので続けたい」と答えていた人が何人もいましたが、私も自宅勤務のよさをつくづく実感しています(渋滞がないのは最高)。

セネガルでは3月24日に非常事態宣言が発出され(4月3日付で30日間,5月3日付で更に30日間延長),5月12日以降は夜間21時から早朝5時までは外出禁止となっているほか,州と州との間の移動は原則禁止となっていて、空港や国境も閉鎖されています。外に出るときはマスク着用義務があり、スーパーの入り口で手の消毒をするスタッフが立っています。

ヨーロッパで感染爆発があった3月中旬にはアフリカが次では、と危惧されたのですが、西アフリカはエボラの経験もあり、感染者数がまだ多くなかった3月中旬からセネガルのケースを見ている限りかなり先手を打った対策をしているように思えました。そのせいもあってか、感染爆発をする局面に至っていませんが、5月15日現在感染者数は2310人、死亡者は25人と増加し続ける現状があります。スーパーは普通に営業していますが(週一で消毒することを義務付けられています)、人通りも少なく、毎日渋滞していた道路がうそのようにすいています。レストランは営業しているところは少なく、宅配サービスが充実してきました。

今は出張にいけないので、仕事の形態も大きく変化しました。私の担当する国でもスタッフは現場まで行けず、政府のスタッフや現地の若者グループを遠隔でサポートして仕事をしています。WFPの援助を受ける層には貯蓄がない農民も多く、コロナの心配があるからといって家にいられる人はほとんどいません。ですので、畑作業や支給現場は衛生状況を整えて、例えばベロニカバケツ(水を入れたバケツに蛇口がついていて、畑仕事や支給の場所で手を洗える)を配布したり、食糧や現金を支給する際に十分ソーシャルディスタンスをとるようにして、事業を継続しています。シエラレオネでは現地での作業をモニタリングするためにスマートフォンを貸与して村の若者グループに携わってもらっていますし、チャドでの現金支給や農作業はコロナ対策がとられているという報告を受けています。

現金支給の現場もコロナ対策をしっかりして対応しています(WFPチャド提供)

ヨーロッパやアメリカも少しずつ日常生活が戻ってきている様子が見られますし、日本も緊急事態宣言が解除されました。セネガルも感染者数は増えていますが、爆発することはなく、数日前の大統領の宣言で禁止だったモスクが解禁されたり、夜の外出禁止時間が短くなったりし、学校の再開も視野に入ってきました。

少しずつまた「普通」の生活になっていくのだと思いますが、コロナがここまで広がったことで衛生概念や仕事の仕方、家族や周りの人とのかかわり方を大きく再考する機会となり、社会も大きく変わっていくのではないか、という実感があります。コロナが終息してもビフォーコロナの日常に「戻る」ことはなく、気がついた価値観を組み入れた新しい時代に向かっていくことになるのではないかと思います。