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国連職員は何か国語できますか?

世界どこでも住めば都、国連職員ニョコボク日記
オフィスランチの写真:9人いますが、8つの国籍にまたがっています
オフィスランチの写真:9人いますが、8つの国籍にまたがっています

海外生活が10年を超え、9か国仕事で転々としていますから「何か国語しゃべれるの?」と興味津々に聞かれますが、残念ながら私がちゃんと仕事レベルで使えるのは英語(と日本語)だけです。

セネガルは西アフリカの仏語圏なので、当然フランス語がしゃべる人材が集まりますし、ミーティングや日常生活はフランス語が大半ですが、本部や拠出金を出して頂いている外国政府に提出するレポートや連絡は英語のことが多いです。私の今やっている仕事のように例外的に日本語の能力が必要だったりすると、私のように英語しかできなくても必要とされるスキルセットをもった人材として雇われることもあります。

事務所の人はナショナルスタッフも含め、ほとんど英語がしゃべれるので一応どうにかなっていますが、外部のミーティングや出張でそこの国のメイン言語ができないというのは、想像以上に精神がやられます。ただ、英語しかできない、英語の方が得意というスタッフも私以外にもいるため、フランス語で始まったミーテイングが途中から誰かが英語で発言してそのまま英語で流れていく、ということは多くあって、さすが国際機関、英語もフランス語もチャンネルをピッピッと替えるように使いこなせる人がたくさんいるのです。

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シエラレオネの出張:プログラム準備の聞き取りのため、森を2時間歩いて村に行った時の写真。(普段仏語で苦労している分)英語でしゃべれると本当に楽です。

私の課はセネガル人スタッフ以外にブラジルに長く住んでいたスイス人男性、母親がトルコ人で父親がオーストリア人で、夫がアルゼンチン人の女性、父親がイタリア人で母親がドイツ人の上司、ニジェール人男性という構成なので、誰と話すかによって、ドイツ語、英語、フランス語が日常的に話される環境です。この前は話の流れで「おー、なんだ、お前スペイン語も話せるのか!」と3人が全然母国語ではないスペイン語で会話が流れて行って、私はその場にいましたが、もう勝負する気にもならないというか、フランス語だけでふぅふぅ言ってる私にはまぶしかったです。ラテン系は似てるから勉強も楽だし、と言われますが、英語しゃべれるからといってフランス語が楽に習得できるかと言ったらそんなことはないですね。

考えてみれば私が英語を習い始めたのは中学校1年。途中、高校で一年間交換留学する機会を得ましたが、その後は大学院に行くまでは日本で勉強してきたのでいわゆる「バイリンガル」ではなく、英語にもたくさん苦労してきました。バックパッカーを含め海外には休みのたびに出て大学院はイギリスに行きましたので、英語でコミュニケーションする機会は積極的にもっていましたが、今まで英語に費やしてきた月日とエネルギーと涙の量を考慮して、それと同じレベルに未知の言語を40過ぎてから2年間でどうにかしようというのは控えめに言ってもかなり無理難題なことです。

それでも弱音を吐いてぼーっとしているわけにはいきませんから、最初はこちらに来てからフランス語の学校に通い、今はセネガル人の先生が週2回、インターネットのスカイプレッスンを週1回で続けています。セネガルの最初の一年は家やら電気の契約やら、家のトイレが壊れたとか、インターネットの登録するとか、車がぶつけられるとかいちいちフランス語で対応しなければならず本当に苦労しましたが、さすがに日常生活は、ばりばり日本語なまりのフランス語で、だいぶどうにかなるようになりました。

「しゃべれたらかっこいい!」とか、聞いてるだけでマスターできる!とか楽な方法では語学習得はできないなと改めて思うのです。しゃべれないと生き残れない、とか、お金が戻ってこないとか、精神的につらすぎるという現実の負荷と、いやでも頑張らないと自分が辛いという環境に身を置くことで少しずつ上達していきます。今はネットの翻訳の精度もだいぶあがって、将来的には外国語がしゃべれなくても平気になるかも?という期待はありますが、やっぱりコミュニケーションは「なまもの」のところがあって、翻訳されたり、他人を通すとどうしても自分の伝えたい意味とかニュアンスが歪んでしまったり、伝えたい熱のタイミングがずれることがあります。伝えたい内容がしっかりあることは大前提ですが、やはり言葉も自分でつかいこなせるようになるのが理想です。

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日本人補習校の遠足で:娘はまだ対象年齢ではありませんが、私が補習校のお手伝いをしているので遠足に混ぜてもらいました。大きなお姉さんに相手にしてもらえて楽しそうです。

毎日そんなわけでフランス語漬けですが、休暇や出張で英語圏に行くとすぐフランス語がぬけます。考えみれば、今まで仕事をしてきた国の言語は多言語だった南スーダンと短期だったパキスタンを除いてスリランカ、ラオス、ソマリア、エジプトやイエメンでそれぞれ先生をつけたり学校に通ったりして現地語も勉強してきましたが、離れてしまうと本当に自分でも笑ってしまうくらいほとんど残らないものです。長く国連で働く人の中では、(どうせ忘れてしまうし時間の無駄だからと)現地の言葉を勉強しない人もたくさんいますが、私はその辺は割り切って、忘れてしまうんだけれど、いる間はやっぱり現地の言葉で現地の人たちと一緒に過ごす時間を過ごしたいなと思っています。

快適な生活をしながら自分のわかる言語でオフィスで仕事をしていても、現場の問題の裏側がなかなかみえてきません。飢餓なり栄養失調がただの数字や統計でなくて、生きた人達の顔とつながるためには流暢でなくてもその国の言葉でその国の水(沸かしてお茶にしたもの)を飲みながら場と時間を共有することが大事だと思うからです。本当はセネガルのウォルフ語にも手を出したいところですが、家庭と仕事を両立しながらフランス語というだけですでに手一杯ですので、DELF(フランス語共通試験)のB2が取れるまではフランス語に集中しようと思っています。

私の母親は30を越えてから夫(私の父親)の仕事の関係で韓国に住み、韓国語をテレビやラジオ講座、大学に通学して習得しました。夜な夜な夕食の片付けが終わってからテープを何回も聞いて書き取りをしている母親の姿をみていますので、私も頑張らねばなーと思っています。私の努力も3歳の娘にいい影響を及ぼすかも?と甘い期待をしてみるものの、日本生まれ、セネガル育ち、カナダ人の父親をもつ彼女は、すでにまるで呼吸をするようにフランス語と英語と日本語を使いわけ、最近は私のフランス語の発音を直してくれるまでに……。どこまでいけるかわかりませんが、せっかく仏語圏にいる間に自分のフランス語を少しでも使えるレベルにあげていこうと思っています。