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世界を転勤しながら結婚して家庭を持つということ

世界どこでも住めば都、国連職員ニョコボク日記 更新日: 公開日:
スーダン(2004年12月)UNHCRとWFPが隣接している住居兼事務所でした。当時の仲間は今は世界中に散らばっています。

以前南スーダン(当時)のサブ・オフィスで仕事をしていた時、ザンビア人の女上司(既婚・子ども二人)に「ミオ、あなたが35歳になっても結婚したい!という男性が現れなかったら、とりあえず自分の男友達の中でベストな人に頼んで子どもを産んじゃいなさい。結婚はいつでもできるけど、子どもはタイムリミットがあるからね」と言われたことがあります。

「なんて斬新なアドバイスなんだ!」と思った私は当時30歳でしたが、私の周りも似たような世代の独身(もしくは既婚者でも単身)ばかりで、仕事は面白いし、結婚も出産も「今すぐしなくては」という焦りはありませんでした。危険地や僻地での職場は、仕事ができて、頼りになって、女性へのアプローチをまめにする肉食な男性がたくさんいる上、女性の絶対数が少ないため、必然的にちやほやされることが多く、独身女性はいわゆる婚期を逃しやすい環境ですし、そもそも結婚向きではない人がたくさんいたので、結婚に憧れを感じることが少なかったのもあるかもしれません。フィールドでうまく運命の相手に会えて結婚したカップルももちろんいましたが、それを大きく上回る割合で「現地ではラブラブだったけど、片方の任務が終了と同時に関係も終了」という事例や、また、モラルの基準が危険地仕様だと、一般のそれとだいぶ違って、ホリデー先の空港に彼女と到着したところ、どこかで情報を得てスタンバイしていた本妻と鉢合わせてあわや!という話や、赴任地(兼住まい)事務所に妻の浮気を疑った夫が斧をもって乱入という事件もありました。

どこからひっぱってきた数字かはわかりませんが、WFPのフィールドにいるスタッフの離婚率は8割になると聞いたこともあります。家族が一緒に住めない環境で仕事をしていて、24時間他人と一緒で、危険やら刺激やらが多い仕事をする環境は「良き家庭人」向きではない、と言えるかもしれません。

ソマリア(2008年)ブアレ事務所。25人のセキュリティーガードに囲まれた住居兼事務所でした。テント住まいで仕事が終わってからも一緒にバレーボールしたり、料理したり。野生動物もいて、楽しい生活でした

ただ年と経験を重ねてくると人生の優先順位や価値観が少しずつ変わってくるもので、当時一緒に仕事した仲間が立て続けに数年前に結婚&出産して、今は多くが「家族赴任地」(家族も連れて行ける住みやすい国)勤務になり、いいパパ、ワーキングママになりました。子どもの年が近い元同僚と「私たちいいタイミングで人生シフトできたね」と笑いましたが、世界を転々としながら家族をもつには、理解のあるパートナーと歩み寄りが不可欠です。

私は結局、スーダンの次の赴任地ソマリアで知り合った、当時は付き合う気はなかったカナダ人の同僚と遠距離で付き合いだし、7年後に家族になり39歳で結婚、40歳で出産して今に至ります。自分のキャリアと出会いのタイミングで人生を構築していると世間一般の「適齢期」と若干ずれますが、私の周りには同世代のママ友(30代後半・40代で子どもがまだ小さい)も多く、男性は一度目の結婚で成人した息子がいて、二度目の結婚で私と子どもが同世代というパターンもあり、年の差、国際結婚(むしろ同国籍のカップルの方が少ない)、同性婚、幸せも家族の形も本当にいろいろです。

娘が一歳の時に仕事に復帰し、初の出張を終えた後の一枚

今もソマリアで仕事をする夫とは1か月一緒に住み、2か月別居する「一部別居婚」ですが、優秀なベビーシッターさんがいて、理解のある職場のおかげでうまくまわっています。「仕事か家庭か」という二択ではなく、仕事も家庭も両立するためにお互いが人生の時間割とタイミングをこまめに調節しないといけないですが、キャリア的には遠回りになっても子どもをもってみて、前線から離れて仕事だけではわからなかった人生の機微とか意味を考えることも多い日々です。また子どもが大きくなったら、前線に戻って仕事するのもいいかなと思いながら、今は目の前の仕事と、ほぼ思い通りにならない子育てに奔走する毎日です。次回はセネガルでの子育て事情についてお話してみたいと思います。