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名字を変えました 国連の職場から女性の結婚後の姓について考えた

世界どこでも住めば都、国連職員ニョコボク日記 更新日: 公開日:
私は混合姓、夫のお姉さん(大学教授)夫婦は別姓。夫の両親は、夫の名字を選択。姑「その時代は普通は夫の名字になったのだけれど、私も今の時代みたいに別姓にできたらしたかったわ」とのこと。

2020年、新しい年が始まりました。実は昨年、夫の名字と私の名字を合わせた混合姓にしました。約一年の裁判所とのやり取りを経て、戸籍の名字は変わったのですが、結局去年は仕事上の名前もクレジットカードも書類も全部「野副」姓のままで通してしまいました。新しい年なので、心機一転新しい名前で行ってみようと思っています。今日はそんな「名前」についてお話してみたいと思います。

私の周りの働く外国人女性で結婚後に名字を変えている人は少数派です。10数年国連で仕事をして、途中で「結婚したので名前が変わりました」というケースはほとんどみていません。

私もそうなのですが、戸籍上は変えていても仕事上は結婚前の名前をずっと使い続けている人も結構いますし、メール後の署名に結婚後に夫の名字がポンと加わっているということはあります。日本人の場合は夫の名字を自分の名前のあとにカッコに入れて書いているケースをよく見ます。国によっては女性が結婚しても、もともと名前を変えないケースも多々あり、夫婦で別姓の場合、子どもが複数いて上はお父さんの名字、下はお母さんの名字という場合や、子どもは父側の名字をつけて妻だけ元の名前のまま、などいろんなケースがあります。

夫(同僚)はドイツ系スイス人、世界銀行で働く妻(育休中)はロシア人。夫の名字を選択。

日本の場合、日本人同士が結婚した場合は夫か妻のどちらかの名字に統一しないといけませんが、相手が外国人の場合、別姓選択が認められていますので結婚した時はあまり深く考えず、「あれ、夫が外国人だったら私の名字維持できるんだ」と思い、別姓選択をしました。そして子どもが生まれ、名字が一人だけ違う夫の「せっかく家族なのだから名字を統一しよう!」という提案もあり結婚3年後に改名することにしたのです。

日本の戸籍は外国人が配偶者の場合、私の配偶者区分は「妻」ですが、「夫」の記載に名前は入らず、身分事項の備考欄にどこどこ国籍の何某と婚姻と記載されます。外国人は日本の戸籍に入らないから、という理由ですが、夫は「僕は同等の扱いじゃなくて、なぜ備考欄扱いなの?」と不満なようでした(笑)。日本で子どもを産んで戸籍に加えたので子どもは私と同じ名字です(夫の名字にすることもできましたがそうすると娘を戸籍筆頭者にした別戸籍になってしまうのです)。

私の周りは国際結婚がすごく多く、日本人以外で複合姓にしている人は何人か知っていますが、私の周りで最近結婚した働いている女性はほぼみんな自分の名字のままです。名前を変更するにあたって、私は子どもには別に「野副姓を継がせなければ」という強い信念がありませんでしたので、できれば「ノゾエ」を私のミドルネームにして、夫の名字で統一できればと思っていました。

ただし、日本ではミドルネームは認められませんので、最初担当してくれた行政書士さんが提案してきたのは「名前そのものをノゾエミオさんにしたらどうでしょう」というウルトラC案でした。つまり、「パーソンズ(夫の名字)・ノゾエミオ(名前)」ということです。そうすると名字を家族で統一できて、私も自分の名字を捨てなくて済む、というので、「そんな斬新な手もあるんだ」とちょっとワクワクして提出しましたが、裁判所から「野副美緒という名前は常識的に考えにくい」というすごくもっともな理由で却下されました。

名前の変更判断はその時の裁判官の裁量によるところが多く、大丈夫な場合もあるし、だめな場合もあるというお話だったので、私としても特にがっかりはしませんでした。むしろ、名前がまるっとノゾエミオになるなんて変だよなぁと実は私も思っていたのでほっとした、というか。そして第二志望の複合姓「野副パーソンズ」(私の名字+夫の名字)で改名案を提出しました。これも、なぜ「野副だけではだめなのか」「なぜ夫の名字だけではだめなのか」「なぜ複合姓でなければだめなのか」と昔の論文やら新聞のインタビューやら議事録やらを添付して説得する文章を考えなければなりません。「野副が消えることで積みかねてきたキャリアが著しく不都合をきたす」とか「夫と妻が別の国で仕事をしているため、名字が統一していないことで子どもと旅行する際等に実害が及ぶ可能性がある」とか、とにかくいろいろ理由を書いて提出し、結果一年かかって新姓「野副パーソンズ」が登場したわけです。

ちなみに夫はただのパーソンズで私と娘だけが野副パーソンズなので、やっぱり微妙に名字が違うのですが、娘のパスポートの名前にカッコつけでない自分の名字が入ることになるので夫は嬉しそうです。そういうところを喜ぶ夫をみて私も嬉しかったりします。

ジブチ人の夫、ブルンジ人の妻、二人ともWFPのスタッフ。ジブチは名字がなく、自分の名前、父の名前、祖父の名前を並べるんだそうです。 ジブチもブルンジも結婚しても女性は名前を変えません。「名前が違うから家族の絆が弱まるって?そんなことあるわけないでしょう」

外国人と結婚した周りの日本人に聞くと「複合姓はなかなか日本では認めてもらえないからラッキーだね」とのことでした。旦那さんがセネガル人の私の日本人の友人も、お子さんだけ夫の名字にするために戸籍を別にして、彼女もあとから別姓から夫の名字になったのですが、お子さんと同じ戸籍に戻すことができず同じ名字なのに「家族みんなの戸籍がバラバラ」というケースがあったり、「前に離婚したときに名字変えるの超大変だったから今回は事実婚!」と日本人の旦那さんとあえて別姓を選択したりする友人もいます(子どもは妻側の姓を選択)。

先進国で夫婦同姓が義務なのは日本だけと聞きますが、国際結婚やLGBT婚などパートナーシップも生き方も仕事も多様化していく中で、日本もユーザーと各家族側の都合と意志で選択できるといいなと思います。ポルトガル人の友人に日本は結婚するとどっちかが名字を変えないといけないんだという話をしたら「ポルトガルなんて70%離婚するんだよ?名前そのたび変えてたら超大変なんだけど」と言われましたが、女性も男性と同じように仕事をする社会になってきていますから、結婚しても名前を変える必要がないというのはとても現実的なオプションだと思います。

もちろん結婚して家族みんなで同じ名字がいいね!というもありですが、日本で別姓選択の話が出るときに出てくる「名字が一緒の方が家族の一体感が高まる」ということもないのではないか、と私は思っています。事実、名前が変わったから家族の意識が高まったということもないですしね。「野副パーソンズ、響きがかっこいい!」と言われましたが、使ってないのでまだ気恥ずかしさしかないです。結婚して名前を変えた人はみな通る道なんでしょうか。余談ですが、昔学生時代に「ジル」さんという名字のイギリス人とデートしたことがありますが「私はこの人と結婚するとジル・みおになるのか…嫌だな…」と思ったのが懐かしいです(一回で終わってしまいましたので全くの杞憂でした)。

ということで一年近くかけて裁判所行き来して(私はセネガルにいましたので物理的なことではなくて行政書士事務所とのメールのやり取りですが)苦労して改名した新名前ですが、特にお披露目する機会もなく一年がすぎてしまいましたので新しい年からは“新生”本名でやってみることにします。パスポートの変更もクレジットカードの変更もこれからですが、新しい名前でも、引き続きよろしくお願いします。